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『世界を動かす-ケネディが求めた平和への道』 [仕事の小ネタ]

世界を動かす-ケネディが求めた平和への道‐

世界を動かす-ケネディが求めた平和への道‐

  • 作者: ジェフリー サックス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/05/09
  • メディア: 単行本
内容紹介
丹羽宇一郎氏(前中国大使)「現在の世界の指導者と学識者に欠ける国際平和への「知と勇気と行動力」。混迷の時代の今だからこそ、我々はこの本から学ぶ必要がある。」
御厨貴氏(東京大学名誉教授)「ケネディは「言葉の剣」で世界の平和を紡ぎ出した。喫緊の課題である「持続可能な開発」にも、この教訓がきっと生かせる。」
ベストセラー『貧困の終焉』のサックス教授がJFKの珠玉のメッセージに託して私たちの目指すべき道を熱く語る。巻末にケネディ大統領による演説4篇を日英対訳で収録。


昨日の報道で、先月27日から続いていたニューヨーク国連本部の核不拡散条約(NPT)再検討会議が、1ヵ月近くに及んだ議論をまとめた成果文書を採択できないまま22日に閉幕したと報じられた。中東を「非核地帯」とする構想をめぐる加盟国の対立が解消せず、全会一致での文書採択に失敗したのだという。会議の決裂は、停滞気味の核軍縮に悪影響を及ぼすおそれがある。

この手の国際会議が不調に終わって成果文書を採択できないで終わるケースってどれくらいあるのだろうか。僕らと意外に身近なところでいえば、今週、ニューヨークでは、2016年から30年までの世界の開発課題を達成すべき目標の形で示す「持続可能な開発目標(SDGs)」に関して今年9月の国連サミットで採択を目指す成果文書の中身について、加盟国政府間の交渉が行われていた。この交渉もなかなか難航しているみたいだ。これが不採択で終わり、各国がこの課題にバラバラに取り組んだりすると、その取組みの総計が地球全体を維持していくのに必要な水準に至らないことだって考えられる。9月のSDGsだけでなく、12月のCOP(気候変動枠組み条約締約国会議)でまとめなければいけない地球温暖化対策についてもいえる。

各国が自国の事情ばかりを主張してこうした国際枠組みに合意できなかった場合、地球や人類の存続自体が危うくなってしまう―――そんな問題意識があったからなのだろう。元々経済学者である著者は毎年何度か日本を訪れているが、昨年10月に来日した際に青山の国連大学で行った講演で、さかんに故ケネディ大統領のリーダーシップを盛んに持ち上げていた。多分その頃に発刊された本書のプロモーションの意味もあったのだろう。それでも、これまで世界の貧困問題や地球環境問題、持続可能な開発に関して多くの本を書いて世に問うてきたサックス教授が、ケネディのようなもろ政治学的なテーマを扱う本を書いたというのは意外でもあった。

ケネディ大統領が行った演説からちょっと引用してみよう。僕が生まれる1ヵ月前にワシントンで行われた有名な演説だ。

ケネディ大統領による「平和のための戦略」演説
1963年6月10日、於・アメリカン大学
「世界平和は、地域社会の平和と同じで、一人ひとりが隣人を愛さなくてはならないというものではありません。ただお互いのことを受け入れながらともに暮らし、争いを公平かつ平和的に解決すればよいのです。国家間の確執は、個人間の反目と同じで、永遠に続くものでないことを、歴史は教えています。(中略)どのような政府や社会制度であれ、それがどんなに邪悪だったとしても、そのもとで暮らす国民までが徳に欠けていると見なすべきではありません。(中略)つきつめれば、私たちを結びつけている、何よりも基本的な共通のつながりは、誰もがこの小さな惑星に暮らしているということなのです。誰もが同じ空気を吸って生きています。誰もが子どもたちの将来を気にかけています。そして誰もが死すべき運命にあるのです」

ケネディが大統領に就任した当時、米ソの核軍拡は既に20年近くに及んでおり、相互不信感からエスカレートにエスカレートを重ね、地球人類全体が滅亡の危機に瀕していた。誰かが機器の操作を誤っただけで、全面核戦争に突入してしまうようなリスクが相当に高く、実際この手の、後で聞かされても全然笑えないような出来事はけっこうよくあったらしい。

だから、講演でケネディの念頭にあったのは「世界の平和」だ。でも、この「平和」を著者が提唱する「持続可能な開発」に置き換えると、ケネディが言わんとすることのほとんどは今の状況にももろに当てはまる。米ソ二強で演説による問いかけの相手がはっきりとしていた当時と、中国、ブラジル、インド、アフリカ、小島嶼国グループ等、多くの国が自国の経済発展や、小国だったら域内の他の国々と連携することで発言力をつけた今とでは状況は違う。それでも、各国が自国のエゴを捨てて地球と全人類の維持という公共益のために立ち上がろうというメッセージは確かに今にも通じる。

問題は、それを稀代のコミュニケーターであるケネディと、それを支えたスピーチライターのソレンセンのコンビのように、言葉にできるリーダーが今の地球人類の置かれた状況の中で現れるかどうかだろう。世界の政治家が「持続可能な開発」を口にしているところを聞いたことはほとんどない。それはスピーチの上手さでいったらケネディの再来だと言われていたオバマ現大統領であってもあまり変わりない。ましてや、日本人の政治家でこうした地球益を訴えられそうな人など思いつく筈もない。そんなものを訴えても選挙で票にならないし。

地球の未来、僕たちの子ども達の未来がかかる国連サミットは9月、COPは12月だ。

さて、本書は本文が全体の2/3ぐらいで、残りの付録ではケネディが実際に行った演説の全文が英語で掲載されている。有名な大統領就任演説ではなく、ダラスで暗殺されてしまうまでの最後の1年間の間に行われた演説ばかりであるが、実際に口に出して読んでみるにはとても良い英文スピーチのサンプルになっている。文庫化されたら手元に置いて、英文朗読の練習に使ってみたいと思う。

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