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『水戦争』 [仕事の小ネタ]

水戦争―水資源争奪の最終戦争が始まった (角川SSC新書)

水戦争―水資源争奪の最終戦争が始まった (角川SSC新書)

  • 作者: 柴田 明夫
  • 出版社/メーカー: 角川SSコミュニケーションズ
  • 発売日: 2007/12
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
世界は今、危機的な水不足に瀕している。人口増と地球温暖化が加速する中、欧州、アフリカ、アジアでは水不足による紛争が勃発。さらに、水を利権ビジネスと考える巨大企業が、地球の水を支配しようと動き出している。資源、穀物に続いて、最終戦争とも言える水の奪い合いが、世界中で巻き起こっているのだ。水の超大量消費国である日本にも、危機が迫っている。日本人がまもなく直面する水不足の現状と対応策を、総合商社の最前線で活動する「資源」の第一人者が語る。
前回、『休む技術』を紹介する記事の中でもふれたが、僕が書かされている英文ペーパーの編集作業は大詰めを迎えているのだけれど、それと並行で進めておきたいこととして、2025年とか2030年とかをターゲットとして、これからの10~15年のうちに起きる大きな変化や趨勢を、データとして集めておくことがある。僕が確実にその所在を知っているのは人口動態に関する予測データであるが、そこで言われている、世界人口が今後2050年に向けて今よりも30億人ぐらい増えそうだという予測から言っても、今後食料や水、石油や鉱物資源等への需要がさらに増大し、それらを巡る争奪戦がより熾烈になるということは確実だといえる。特に、中国やインドといった人口大国で今後も人口が増え、さらにその経済成長によって資源節約型から資源消費型へと経済の構造が大きく変化していくと、資源の争奪戦はより熾烈になるだろう。

そのあたりまでの指摘している具体的なデータは今僕の手元にはない。でも、そういう予測を影響力のある世界のシンクタンクが行なっているものでもあれば、そのデータをキープしておいて、いざという時に使えたらいいと思う。

本書もそんな期待を込めて読み始めたものである。ただ、発刊されたのが2007年で、既に7年も古い。当時は割とショッキングだったんじゃないかと思うが、飲料用と灌漑用、工業用の水の使用を巡って争いが強まるだろうというのは、今では常識に近いものになりつつある。引用されているデータもちょっと古い。2003年の世界水フォーラムのことが書かれているけれど、いくらなんでもそれから10年以上経過してしまっているわけだし。

これから2025年にかけて水の希少資源化はさらに進み、水を巡る様々なレベルでの争いが世界各地で起こる。日本は水資源が豊富だと言われているし、先週の台風8号のもたらした大雨のようなものを見ていると、あの大雨を溜められたらうまく活用できるのではないかなどと、不届きなことも思ってしまった。それほど水が豊富な日本でも、実のところは安閑とはしていられないと著者は言う。その資源を十分に活用しきれていないというだけの問題ではない。日本は穀物や肉、その他の食糧を海外からの輸入に頼っている。これらの食料の生産には灌漑用の水が必要だし、家畜の場合は、家畜への給水、畜舎の清掃だけでなく、食べさせる餌の生産にも水が使われている。こうした諸々の食料の生産に必要な水(バーチャルウォーター)も含めると、実は日本は海外から大量の水を輸入していることになると著者は言う。

これが示すところは、水を使用しないと生産できない食糧は、水が希少化することで生産量が頭打ちになり、日本も今後安定的に輸入することが難しくなる恐れがある。日本には水が豊富だというような認識は幻想でしかなく、水不足は決して他人事ではないというのが著者の論点だと思う。

以上は説得的なのだが、本のタイトルに「水戦争」と銘打っている割に、途中で延々と鉱物資源や穀物の話が続き、何の本だかわからなくなる瞬間もあった。水がコモディティ化するというのを他の品目で例示したかったのだろうと思うし、またこれらの生産にも水が使われているということを示したかったりもしたのだろうけれど、それならそれで結論を先に述べるなどして、そのセクションの位置づけをはっきりさせて書くなど、編集については工夫の余地が相当ある本だと思う。

本書は図書室で借りて読んだものだが、読み終わってみてこの本に含まれているデータをどう扱うかについては、まあ中古で購入するのが一番安上がりかなと思ってしまった。一瞬電子書籍版を購入して常に手元に置いておくのもいいかと思ったが、500円以上を今払うような気持にはなかなかなれない。もっと安く手元に置いておく方法を考えた方がいい。
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