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『水が世界を支配する』 [仕事の小ネタ]

水が世界を支配する

水が世界を支配する

  • 作者: スティーブン ソロモン
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2011/07/26
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
世界史の謎は、“水”をキーワードにすれば解ける。古代から、水に挑み、水を味方につけたものが時代を制してきた。そして現代でもなお、水の戦いに勝つものが世界を制する。水をめぐる歴史ロマン。水が解明するパワーゲーム。

ただ今、出張先で、空港に向かうまでのホテルでの滞在時間を利用してこの記事を書いている。

2012年現在71億人と言われている世界の総人口は、2030年には83億人にまで増加すると言われている。途上国での人口増加や経済発展、都市部への人口集中により、生活用水、食料生産及び工業等の水需要が今後ますます増大する一方で、利用可能な水資源は限定的であることから、水不足はさらに深刻化するだろう。一方で、水利用は十分な排水処理を伴わない形で進められてきたため、水環境の悪化も深刻で、人々の健康や自然環境への負荷となり、利用可能な水資源にさらに制約を加える。今後ますます深刻化する水不足に的確に応えるためには、旧来の「水資源の配分調整」的考えから一歩踏み込み、セクター毎の水利用の効率化を真剣に考える時期に来ていると思う。

20世紀の戦争は石油という資源を巡って起こったが、21世紀の戦争は「水」を巡っての争いとなるとまで言う論者は多い。

さて、そうした問題意識に立ち、僕はこの大部の本のうち、第4部の「水不足の時代」のところだけを読んだ。水利用の歴史をずっとまとめてある本書の中で、現代から未来にかけては水不足と特徴づけられている。水と食料、エネルギー、気候変動の統合的アプローチが必要だというのは普段から感じていたことで、本書の論点については共感が持てるところが多い。今後水を巡る争いが激化しそうな地域として、ナイル川流域、中東、インド・パキスタン、中国等が挙げられており、それぞれの係争の系譜がわりと詳述されている。ないものねだりになってしまうが、インドについては、インダス川流域に焦点があてられているけれど、それだけではないという点にも注意が必要だろう。州を跨いで流れている川が多く、その水資源の利用を巡り、上流域の州と下流域の州とで係争が起こっている。ナイル川の水を巡って、エジプトとエチオピアが仲が悪いのと同じような状況が、州間でも起こるのだ。

ただ、折角の大書なのに、日本への言及がゼロなのが残念だ。日本の治水・利水、節水の経験、長年培ってきた技術は、他国の参考になるところも多いのではないかと思う。

また、脚注番号は本文中にふられているのに、肝心の文末脚注が掲載されていないというのは、編集上の不適和ではないかと思われる。文末に脚注がないのなら、本文中に脚注番号などふっても意味がない。脚注に載っていたであろう引用文献に当たってみたいと思ったのに、それもままならない。どこから引用したのか、参考文献がわからないのだ。

そうした点で、なんだか中途半端でもったいなさが残るノンフィクションの1冊だ。

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