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寸評:日米関係の本(2014年前半) [仕事の小ネタ]

今年は年明けからの一時期、日米関係に関する文献を集中的に読んだことがあったが、実を言うとそのすべてについてこのブログで紹介していたわけではない。それは別にそうした文献に限ったわけではないが、読んだ本の冊数の割に、仕事が忙しくてブログの更新が同じ頻度でできなかったところに大きな原因がある。小説なら後から思い出して感想を書くことは比較的容易だが、専門書の場合はそうそう簡単に思い出して週末にまとめて記事を書くというわけにもいかず、そうこうするうちに1ヵ月、2ヶ月と時間が経過してしまい、ブログで紹介記事を書く意欲が薄れてしまったという本が結構ある。ちょっと数えてみただけで、年明けから僕が読んだ専門書の中で、ブログに紹介記事を書いていない本が少なくとも6冊はある。

夏休みの間に寸評ぐらいはまとめて書いておこうかと思い、本日は日米関係に関する3冊を紹介しておきたい。

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日米同盟vs.中国・北朝鮮 (文春新書)

日米同盟vs.中国・北朝鮮 (文春新書)

  • 作者: リチャード・L・アーミテージ
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/12/15
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
尖閣事件をはじめ、膨張し続ける中国、金正恩新体制を打ち出したものの依然として不穏な北朝鮮、核武装した二つの隣国にどう対峙するか。米共和党・民主党を代表する知日派二大巨頭が岐路に立つ日米同盟の実力と限界を論じ合う。

今年1月下旬、米戦略国際問題研究所(CSIS)から出されている第2次、第3次の「アーミテージ・レポート」を読んだ後で本書を読んでみた。普天間基地移設問題、集団的自衛権、日本版NSC、核攻撃に備えた避難体制の不備(結局攻撃ではなく、原発事故だったが)等、CSISが誇る両巨頭が本書の対談の中で主張していることが実際に今現実になっていっているという怖さを感じた。ビジネスライクであまり親しい友人を作ろうとしないというオバマ大統領の人柄に関する言及は意外だった。

それにしても、アーミテージの発言だけやたらと横柄な言い方で訳されているような気がする。あの風貌だからしょうがないのかもしれないが(笑)。

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日米同盟の静かなる危機

日米同盟の静かなる危機

  • 作者: ケント・E・カルダー
  • 出版社/メーカー: ウェッジ
  • 発売日: 2008/11
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
日米関係は近年目に見えない形で、徐々に深刻に弱体化しつつある。日米同盟にしのびよる危機は、軍事、政治の両面で深まる一方だ。かつて駐日アメリカ大使の特別補佐官を務め、随一の日本通の学者として知られる著者が、日米同盟を再構築する処方箋を示す。

論点が非常にわかりやすい本だった。日米同盟はアジア太平洋地域の平和の安定の礎だというレトリックに頼りすぎると、中・韓に足元をすくわれると主張している。中国も韓国も官民あげてワシントンに食い込んでおり、軍事、経済、文化・社会の3階層での米国との関係構築ができている。民間シンクタンクもワシントンに事務所を設け、シンクタンク間の交流も盛んに行われているという。対照的に、日本は、政治レベル、民間レベルでも対米関係が希薄になりつつあり、日本のロビイングの効果が薄れてきているという。若者の内向き志向が強まる一方で、嫌韓、嫌中がマスコミやネット上で連呼されている現状は相当にまずい。単に中・韓との直接的な交流の希薄化だけではなく、せめて第三国での交流のチャンネルぐらいは保持しておく必要があるように思うが、米国ですら留学しようとする若者が少なくなっているという現状は、そのようなチャンネルすら構築することが難しくなってきているということだろう。

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幻想の平和 1940年から現在までのアメリカの大戦略

幻想の平和 1940年から現在までのアメリカの大戦略

  • 作者: クリストファー・レイン
  • 出版社/メーカー: 五月書房
  • 発売日: 2011/08/26
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
台湾を中国に任せ、日本を自立・核武装させるアメリカの大戦略「オフショア・バランシング」とは?米国政府を動かした“ネオクラシカル・リアリズム”の重要理論、待望の邦訳化。

著者は、まえがきにおいて、2030年代が近づくにつれ、日本は「米国が中国から守ってくれる」という想定の上に大戦略を立てることはできなくなると主張している。日本は「米国が去った後の東アジア」という状況に対応できるよう準備を進めなければならないし、このためには自分たちの力で立ち上がり、国防の責任を背負うことが必要になってくるという。集団的自衛権を巡る論争が喧しいが、推進側が想定しているような、「米国本土をターゲットにした弾道ミサイルが日本上空を通過するのを黙って見過ごすのか」という議論の前に、そもそも日本が攻められたときに米国は自身が攻撃されたものと見なして対抗措置を本当に取るのかという点が僕には疑問だった。オバマ政権のシリアへの対応を見て、さらにオバマ大統領自身のドライな性格も考え合わせると、コストに見合わなければ同盟国であっても簡単にハシゴを外すのではないかという気がしないでもない。

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