『プラチナタウン』 [読書日記]
内容(「BOOK」データベースより)楡周平の作品って、読んでいてビジネスの勉強ができるのでとても有用だと思う。基本ビジネスマンの日常があって、その中である主人公ないしは主人公が所属する会社組織が窮地に陥るが、そこからのブレークスルーがあって、最後はハッピーエンディングで終わるというものだ。『ラスト・ワンマイル』と『介護退職』、そして本書しか読んでいない僕が一般化するのはちょっと早いかもしれないが、まんざら的外れなコメントではない筈だ。
出世街道を外された総合商社部長の山崎鉄郎は、やけ酒を呷り泥酔。気がついた時には厖大な負債を抱えた故郷緑原町の町長を引き受けることに。だが、就任してわかったことは、想像以上にひどい実情だった。私腹を肥やそうとする町議会のドンや、田舎ゆえの非常識。そんな困難に挫けず鉄郎が採った財政再建の道は、老人向けテーマパークタウンの誘致だったのだが…。
著者自身も『プラチナタウン』は『介護退職』と対をなす作品だと認めている。『介護退職』は話がうますぎて嫌悪感もあった。『プラチナタウン』は主人公とその家族だけのストーリーではなく、多くの登場人物が絡み合って話が進行するので、エンディングがうますぎるとはいっても、まああり得るかもしれないと許せる話だった。
ただ、これまで読んできた楡作品を振り返ってみて感じるのだが、ビジネスというものを描かせたら勉強になることが多くてお薦めだが、家族や身近な人々との絡みがあまり多くなくて、物足りなさもある。
例えば、主人公の山崎の妻は今でも臭いぼっとん便所しかない山崎の三陸の実家に里帰りすることも厭い、家庭内別居に近い状態だとして描かれており、山崎が大手商社を辞めて故郷で町長を勤める決心をした時にも反対をしているが、それで、山崎町長が老人向けテーマパークタウン事業で大きな成功をもたらし、町が大きく変貌していったことに関して、夫とその田舎に対する見方を少しでも変えたのだろうか。また、火中の栗を敢えて拾った山崎の町長就任に対してあれだけ強硬に反対したご両親は、その後息子に対する見方を変えたのか。そういう主人公の身近な人々の姿をもうちょっと描いて欲しかったこともあったのだけれど…。
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