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『「日本」を捨てよ』 [読書日記]

「日本」を捨てよ (PHP新書)

「日本」を捨てよ (PHP新書)

  • 作者: 苫米地 英人
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2012/03/15
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
消費増税、経済格差、年金問題―目の前に横たわる数々の難問。迷走する政府に対して不信感は募る。世界ではデモや暴動が頻発するかたわらで、なぜか立ち上がらない日本人。なぜこれほどまでに為政者を信じつづけられるのか…。称賛されるモラルの高さは、たんにおとなしすぎるだけ。自由とフェアネスなき社会で、日本人は「他人の目」ばかり気にする従順な奴隷と化した。覚悟なくして幸せはいつまでも実感できない。それでもあなたは、「日本」にこだわりますか?この国を覆う息苦しさの正体と、脱呪縛の思考。
この著者は僕と同じカトリック系私立大学で同じ学科の4年先輩である。意外と多作な人だが、本書を読んでて途中で腹が立ってきた。これってトンデモ本じゃないのか。途中からはそういう仮説を持って読んでいた。とっとと読んでとっとと図書室に返却しようと思った。

第1章で、日本人は権力者に都合よく飼い馴らされた奴隷であることを明らかにしようと試みている。この第1章で僕は既にネガティブモードに入ってしまった。子供の運動会で組み体操で高難易度のフォーメーションを完成させるのを見て感動しちゃいけないのかと。それに、136頁にある「日本国も日本国民も国際的には認められていない」という論拠となっているサンフランシスコ講和条約の原文も、著者が主張するほど強力な論点だとは思わない。これで母校の先輩だというのはちょっと悲しい。

序盤でこれだけ煽り、無政府主義から学べなどと主張して、政府などあてにせずに自分のやりたいことをやれと言っておきながら、その処方箋になると、道州制や政府選択などという、政府の政策がそう変更されることが前提の話を展開する。閉塞感を打破する処方箋に、あてにならない政府への期待など盛り込まれていると、実現可能性が低くて余計に閉塞感を増幅しそうだ。「日本を捨てろ」などと過激なことを言いながら、実際に「日本」という枠組みにいちばん固執しているのは著者本人ではないのか。

本当にキリスト教徒が異教徒は人間じゃないから殺していいと思っているというのなら、この本を英訳して米国人に読ませてみたらどうか。米国で仕事することも多い、僕の学部の先輩だというのなら、これらの論点を米国人にぶつけて、その反応を調べて見てほしいものだ。

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うしこ

苫米地さんが Sanchai さんの先輩だとはびっくりです。
半年くらい前に、 苫米地さんの「君は一万円札を破れるか?」を読んで多才な方だなと思いましたが、言語系の大学も卒業されていたとは・・・。

たくさんの本を出されていらっしゃいますので、当たり外れがあるのかもしれませんね。
by うしこ (2012-09-08 15:43) 

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