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インド人には司会をさせるな [インド]

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8月3日(金)に世界銀行の東京開発ラーニングセンター(TDLC)という施設で、インドと結んで行なわれた「日本及びインドにおけるCSRの経験共有-日印間テレビ会議セミナー」というテレビ会議を傍聴した話は、8月6日(月)付の週報でもご紹介した通りである。

 企業の社会的責任(CSR)活動は、特に発展途上国における開発課題の解決において重要な役割を果たしています。その中でも、インドでは2009-2010年の間におよそ75億米ドルが民間企業によるCSR活動のために支出され、公営企業でも年間およそ7億米ドルが支出されています。
 世界銀行では、現在、インド政府の企業省に対し、企業省傘下のIICA(Indian Institute for Corporate Affairs)を通じてアドボカシー、リサーチ、キャパシティビルディングによる技術支援を行い、インド企業におけるCSR構築を支援しています。また、IICAとの協業により、CSRを活用したミレニアム開発目標達成に向け、インドのCSRのモデル組織となるCSR国立財団の設立を支援しています。これらの活動の一環として、世界銀行は企業省に対し、CSRの制度的枠組み、ガイドライン作成、効果的なモニタリング方法等について世界のベストプラクティスを紹介しています。2011年12月に実施した第1回目のCSRに関する知識共有のビデオ会議では、インドのCSR関係者より、現地のコミュニティ、市民社会団体、現地政府との関わり方、CSRの促進、政策構築、関係者との調整方法やキャパシティビルディングに関して、世界の経験、知識を学びたいという要望が多く聞かれました。(中略)
 これを受け、世界のベストプラクティスの第一弾とし、IICA、国際協力機構(JICA)、世界銀行は、インドと日本をテレビ会議システムで接続し、インドと日本におけるCSRの実践と知識の共有を目的としたセミナーを共催します。セミナーの主な目的は以下のとおりです。
◆インドと日本におけるCSRの発展と課題(特にCSRのアクター、CSR強化のための戦略・施策、NGOとの連携、その他ステークホルダー等)の共有
◆インドと日本におけるCSR活動に関する課題・経験の共有
◆インドと日本におけるBOPビジネス市場の現況の共有
◆企業やNGO等CSRにおけるプレーヤーについての情報共有
《出所》世銀TDLC案内チラシから

最初に断っておくが、テレビ会議というのは衛星回線の使用料がかかるので、安易に時間延長ができない。2時間30分というテレビ会議の時間設定はかなり長めなので、よもや延長はないだろうとたかをくくって僕は傍聴した。

冒頭の世銀インド事務所のマネージャーの挨拶、長めだった。自信のなさが顔に出ていて、ぼつりぼつりと喋る人だった。次のJICAの室長さんの挨拶も少し長めだった。しかし、これに輪をかけたのが、この日の司会進行を務めた世銀インド事務所のタスクチームリーダーのS女史だった。持ち時間4分のところ、セミナーの目的の説明にそれ以上の時間を費やした。この3人の話が済んだ時点で、既に15分のビハインド。さらに基調講演は当初1人だったのに突然2人が話すことになり、これも持ち時間10分で効かなかった。

どんどん時間が押していく。次のスピーカーはCSRアジア東京事務所のA代表。これはスライドの枚数が少なめだったので、持ち時間10分でまとめて下さるだろうと期待していたら、朴訥としたしゃべり方をされる方で、どんどん時間が押し、とうとうS女史に「そろそろまとめを」と促されていた。A代表のお話は、CSRへの取組みはインド企業の方が進んでおり、日本企業は学ぶべきところが多いとの内容だった。でも、あまりにもインド企業のポイントが高いので、このCSRアジアという香港のシンクタンクが開発したという指数に少しばかり疑問を抱いた。企業の従業員雇用にカースト差別を設けていないかという評価基準が、この指数にはどの程度反映されているのだろうか。

この時点で既に1時間以上が経過。次の国際協力NGOセンター(JANIC)のIさんのお話は、JANICが仲介する企業とNGOとの対話プラットフォームの紹介だった。この日のセミナーには企業のCSR担当者の参加がかなりあったと聞くが、それはJANICの呼びかけだったらしい。でも、ここでまた疑問が湧いた。JANICの話に出てくる企業とは、名の知れた大手企業ばかりだ。それはそれで対話から具体的な提携話が生まれてくるのであればいいとは思うが、中小企業には敷居の高いプラットフォームではないだろうか。中小企業にCSRに取り組むほどの余力があるとは思わないけれど、例えば途上国の低所得者市場向けの製品開発のために、どこかの農村でマーケット調査をしてみたいというようなニーズは、中小企業にもあるのではないだろうか。そういうのに、JANICはどこまで応えているのだろうか。具体的に、このプラットフォームから生まれた提携事例でもあったら紹介して欲しかったな。

さて、ここまで、持ち時間10分でほとんどの発表者が時間超過をやってきたが、僕も含めて多くの傍聴者の関心あった企業の取組み事例のプレゼンテーションが、そのわりを喰ってS女史に「6分でしゃべれ」と指示される事態となった。S女史自らが時間超過していたにも関わらず、そのつけを全て後半の5人の発表者に負わせた格好だ。

インド側からはタタ・グループ、バルティ財団、ダルミア・グループ、日本側からはフェリシモとエーザイが発表した。インド側の発表は、どこも良いことをやっているのはわかるけれど、アプローチの仕方が学校教育支援というパターンが目立ち、各社に特徴がないなという印象を受けた。それに対して、フェリシモのKさんは、同社の理念、具体的にインドで行なっている事業の説明を見事に6分でまとめ、CSRではなく本業で社会や環境に貢献することを目指している点、オーガニックコットン栽培移行支援という特徴ある事業内容である点等、セミナー参加社に対して強力なアピールになった。

フェリシモが行なっているような取組みが、世界中のグッドプラクティスの情報が集積している世銀に知ってもらえるのはとても貴重なことだ。Kさんがこの場で発表を行なったという事実自体が、この日の収穫だった。

ここまでやって時刻は16時20分。テレビ会議終了予定時刻まであと10分しかない。当初質疑応答には45分取られていたが、それが10分に短縮だ。そこで挙手して最初に質問したのは日本のどこかのNGOの方だった。竹から石鹸を作る取り組みをラオスで実践しているが、インドの企業はこれを製品化するのに興味あるかという質問内容だった。この日プレゼンをやった企業のラインナップを見ても、竹製の石鹸を製品化するようなことができるところはないし、見たこともない竹石鹸の話を、今までコンタクトが全くなかった日本のNGOからいきなり会議の場で持ち出されて、「興味ありませんか」と聞かれても、すぐポジティブな回答ができる企業などないだろう。いかにもNGOがしそうな質問だ。でも、そういう話こそ、JANICが主宰するNGO-企業の対話の場でもっと早くから話し合われるべきだったのではないのだろうか。

僕は結局2時間30分ジャストで退席したので、結局何分オーバーしたのかはわからない。冒頭の案内文にもあるように、この会議の主催は優先順から言って、IICA⇒JICA⇒世銀となる。世銀なりの深謀遠慮があったのかもしれないが、実質的に会議を取り仕切っていたのは世銀のS女史と彼女と仕事している世銀インド事務所の日本人職員であるのは明白だ。あまり好感を持てないテレビ会議だったと言わざるを得ない。


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