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『平清盛の闘い』 [読書日記]

平清盛の闘い  幻の中世国家 (角川ソフィア文庫)

平清盛の闘い 幻の中世国家 (角川ソフィア文庫)

  • 作者: 元木 泰雄
  • 出版社/メーカー: 角川学芸出版
  • 発売日: 2011/11/25
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
巨大な権勢をもって驕り、「仏敵」「悪逆非道」の汚名を着せられた平清盛。彼が真に追いもとめたものとは、何だったのか?後白河院政の否定、政敵たちへの仮借なき攻撃と断罪、強引な福原遷都計画、そして南都焼き討ち…。貴族と武士が一体化した中世国家という、新たな政治秩序の確立に邁進した足跡をつぶさに検証。波瀾に富んだ生涯と、先進的政治家としての鮮烈な実像を描きだす。従来の悪人像を覆した画期的な清盛論。
講談社学術文庫で探していた本があり、いちばん文庫の品ぞろえが充実してそうな書店に行って講談者学術文庫の棚を見た時、平積みになっている本書を見つけて、衝動買いしてしまった。『河内源氏』(岩波新書)を読んで以来、元木泰雄氏の著書には信頼を置いている。本書は2001年に角川選書から発刊された同名の1冊を文庫化したもので、コストパフォーマンスが相当に良い1冊だ。

平清盛や後白河法皇を軸にしつつも、この頃の古典文学は群像劇で登場人物が多い。天皇家周りでは藤原摂関家だけではなく傍流の官僚も随分いたし、信西のような学者もいた。武士の側にも、源氏は親兄弟が戦うケースがものすごく多いし、平氏は平氏で「~盛」とつく名前が一門には多いので、たとえ各家の家系図を示してみても、読んでいて理解しづらいのは仕方がないところかもしれない。しかし、九条兼実の日記を中心に現存する史料に基づいて学術的な考察が行なわれており、通説と異なるユニークな解釈も幾つか提示されていて読者を飽きさせないものがある。

平清盛はインフルエンザの流行にやられて急死したが、もし清盛がもう少し長生きしていれば、鎌倉時代とはかなり違った世界になっていたのではないか、源頼朝の開いた鎌倉幕府よりも遥かに先進的な武家政権が、京都に誕生していたのかもしれない、そんな考えるだけでワクワクする歴史解釈が、本書では展開されている。

本書を読むと、何故NHKが大河ドラマで源氏ではなく清盛を取り上げたのか、よくわかった気がするし、それでも視聴率が取れないのは、清盛の功績に対する我々の理解不足が一因なのかもしれない。『平家物語』や『愚管抄』は、勝ち残った勝者によって自己正当化のために描かれた物語で、平氏や平清盛の真実が描かれているわけではないとの指摘がある。残念ながら僕らはそうした勝者の視点から見る歴史認識の影響を強く受けてしまい、「清盛=悪のヒーロー」という先入観を既に抱いている。実はそうじゃなかったらしいという認識の下で大河ドラマを見ていけば、結構面白いかもしれないが、残念ながらそういう先入観を持つ人が多いため、日曜夜8時にNHKにチャンネルを合わせること自体を放棄してしまう視聴者がかなりいるのではないだろうか。

そういう人たちが本書を読んでみたら、大河ドラマの描き方にも興味が湧いてくることだろう。お薦めの一冊だ。

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