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『新しいASEAN』 [読書日記]

新しいASEAN―地域共同体とアジアの中心性を目指して (アジアを見る眼)

新しいASEAN―地域共同体とアジアの中心性を目指して (アジアを見る眼)

  • 編者: 山影進
  • 出版社/メーカー: アジア経済研究所
  • 発売日: 2012/01
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
途上国による地域機構として、また、アジア太平洋あるいは東アジアの地域協力の中核として、ますます注目されるようになったASEAN。近年では、ASEAN共同体の構築とアジアの中心性を目指してさまざまな新しい試みが打ち出されている。ASEANとはどのような組織なのか、そしてどのような役割をはたそうとしているのか。本書は、1967年の設立から現在までの歴史を辿るとともに、どこへ向かおうとしているのかを多面的に展望する、“変わりつつあるASEAN”の解説書である。
今週は、こと仕事に関しては思い通りにいかないことばかりだった1週間だったが、1つ収穫があったとすれば、先週末にある程度まで仕上げてあったブリーフィング・ペーパーの最終ドラフトを完成させ、関係者にコメント依頼するところまで持って行けたことである。この仕事とて先週後半は作業が滞り気味で、最後の1頁をどうやってまとめるかで煮詰まってしまい、週末に持ち越してしまったものだ。

その状況の打開に役立ったのが本日紹介する1冊である。実はこの本は一度は図書館で借りて読み始めたのだが、途中で結構有用であることに気付き、急遽アマゾンで注文して購入し、マーカーで線を引きまくったものである。僕が糞詰まったポイントが本書の副題にもある「ASEAN地域共同体」に関するもので、そもそもASEAN地域統合に関するここ20年程の歴史について殆ど勉強していなかったから、知識が全くなかった。それにも関わらずブリーフィング・ペーパーなど書こうとしたことが問題で、煮詰まるのも無理はないところだった。本書はそうした僕の足らない部分を補完してくれたパズルの最後のピースで、先週土曜日にこの本を読み切ったことによって、日曜朝の「早勉」タイムでの結論の持って行き方の整理に繋がったと思う。

多くの箇所に線を引っ張った。本書を1冊読んでおけば、今後ASEAN関連の報道に対する理解の仕方も変わってくるに違いない。1つだけ一般読者に知っていてもらいたい引用をご紹介しておきたい。
結局(註:国家主権重視から人権・民主主義重視への)規範の変容に関してもっとも重要なのは加盟国の民主化であるように思われる。かつてのASEANとは何よりも外相が集まって協議をする場という意味合いが強かった。その意味でASEANとは極めてエリート中心的な機構であるという批判もなされてきたのである。しかし加盟国の民主化はその構図に変化をもたらし始めている。民主化を遂げた国では議会や世論が対外政策に影響を与えるようになる、NGOの活動が活発化しそれらが地域的な連帯を形成してASEANに働きかけを行うようになる、あるいはAIPMCのように議員間のネットワークによる活動も見られるようになる、という変化が生じた。もしくは2003年以降、盛んに民主主義や人権を主張するインドネシア政府の対外政策も、国内へのアピールという面が少なくない。すなわち、原加盟国を中心に民主化にともなって対外政策決定過程が複雑化しはじめ、それがASEANという地域機構の規範を変化させる重要な要因となっているのである。(p.242)
そして、民主化といえば最近はミャンマーの補欠選挙の模様がさかんに報道されている。ミャンマー軍事政権がとってきた国内での人権侵害に対して「内政不干渉」の運営原則から何ら有効な働きかけができなかったASEANも、議長国ミャンマーが内から民主化に向けて動き始めていることは、ASEAN憲章が謳っている「住民中心のASEAN」というビジョンの実現に向けた大きな進展であると思われる。


もう1つの試金石は、本書ではあまり触れられていないが南部タイの治安問題だろう。ここは仏教国タイにおいて唯一イスラム教徒が多数派を占める地域で、民族構成的にはマレーシアに近いらしい。従って、この地域で2004年以降活発化している宗教対立に対して、マレーシアがどういった行動がとれるのかが注目したいポイントだ。


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