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『ジャカルタ炎上』 [読書日記]

ジャカルタ炎上

ジャカルタ炎上

  • 作者: 松村 美香
  • 出版社/メーカー: 文芸社
  • 発売日: 2003/03
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
インドネシアを舞台に、日本人キャリアウーマンが恋に、仕事に悩みながらも前進していく姿を、現地の社会情勢、そしてそこで暮らす人々のバックグラウンドも絡めて、鮮やかに描き出した傑作。女性ならではの感性が光る、エンターテインメント小説。
正直に言うと、評価に悩む小説だった。

少し前にお目にかかった出版社の編集長さんにくどいほどに言われたのは、「この本の想定読者は誰なのか」ということなのである。それを考えたら、本書の著者は40代後半の男性読者(いや、発刊年を考えたら40代前半か)をどの程度想定して書いておられたのか、かなり疑問に思える。内容的には30代の女性の読者なら最も共感を覚えるにではないかという気がする。その割には、『ジャカルタ炎上』というタイトルがかなり仰々しい。やっぱり時事問題に興味のある多くの男性ビジネスマンをターゲットにしたタイトルの付け方ではないだろうか。その辺のギャップがなかなか埋まらない。このタイトルの背表紙で、書店で女性読者が先ず手にとってみてくれるかというところで大きなハードルがあるような気がするのだ。

そのタイトルと中味の違和感の部分を置いておいて、純粋に中味だけのことを言えば、想定読者を30代の女性と考えればこれはこれでいいのだろう。ただ、40代のオジサンにはちょっとしんどいです。「恋に悩む」といっても、それは不倫じゃないかと思う。普通に結婚して家庭を持っているオジサンの倫理観ではついていけないところがある。出張先にも度々電話を入れてくるぐらい独占欲の強い不倫相手と別れられないで悩んでいる主人公を見ていると、そんな野郎でも30代女性には捨てがたい魅力があるのかと思えて悲しくなる。既に家庭を持ち家族を愛するオジサンはこの際置いといて、30代、40代でもモテない男はやっぱりモテないのだろうか。この不倫相手のしつこさを容易に断ち切れない主人公を見ていると相当イラっと来て、ストレスを感じながら読んだ。(それとも僕の方が異常なのだろうか。)

想定読者を30代女性に定めたとして、不倫関係をここまで引きずってしまった主人公のこれまでの生き方を30代女性が受け入れるという期待の下に状況設定がされているとしたら、僕にとってはかなりショックな話だ。いや、未知の世界の話だといってよい。そんな世界で楽しくやってる不倫野郎がいることが口惜しいよ、オジサンは!

著者はこの後『ロロ・ジョングランの歌声』を発表するが、僕的にはそちらの方がずっといい作品だと思う。


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