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『ボックス!』 [読書日記]

ボックス!

ボックス!

  • 作者: 百田 尚樹
  • 出版社/メーカー: 太田出版
  • 発売日: 2008/06/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容(「BOOK」データベースより)
高校ボクシング部を舞台に、天才的ボクシングセンスの鏑矢義平、進学コースの秀才・木樽優紀という二人の少年を軸に交錯する友情、闘い、挫折、そして栄光。二人を見守る英語教師・高瀬耀子、立ちはだかるライバルたち…様々な経験を経て二人が掴み取ったものは!?『永遠の0』で全国の読者を感涙の渦に巻き込んだ百田尚樹が移ろいやすい少年たちの心の成長を感動的に描き出す傑作青春小説。
夏休みも後半になると、子供達は慌ててやり残した宿題の仕上げにとりかかる。うちの子供達は3人とも何らかの形で本を読むことが宿題として課せられている。小学校低学年であれば20冊ぐらい読んでリストを作れと言われ、高学年になると10冊程度に絞って「読書日記」を記録し、うち1冊については推薦文を書けという宿題になり、中学生の長男になると、3冊読んで1冊ははがきサイズのPOPを作るというものになる。やり方はどうあれ、本を読むのはとてもいいことである。普段本を読んでいるところをあまり見たことがない長男が『ダ・ヴィンチ・コード』の上下巻2分冊に挑戦しているのには驚きもした。

子供達はそれぞれ何を読むかでそれなりに頭を悩ませていた。そんな時に、「こんなのどう?」と手を差し伸べるぐらい、僕も最近の本は読んできたつもりである。小6の娘には重松清『季節風・夏』に収録されている「虹色めがね」を薦めてみた。中2の長男には、取りあえず森浩美『夏を拾いに』、堂場瞬一『チーム』、津原泰水『ブラバン』あたりを薦めた。実際に素直に読むのは娘の方である。読んだ後「面白かった」と言ってくれるとオヤジなりにちょっとは嬉しい。

別に僕の読書選択の基準が「子供達の一歩前を行く」ということであるわけではない。ただ、時々中高生生活や大学が舞台となっている作品が読みたくなる時期があるのである。例えば、甲子園で高校球児が熱い闘いを繰り広げている今の季節だったら、体育会系高校生の夏が描かれている作品ということになる。そこで本日ご紹介するのが大阪の高校ボクシング部を描いた『ボックス!』、著者は『永遠の0(ゼロ)』を書いた百田尚樹である。

処女作『永遠の0』を発表したのが2006年で、百田が50歳の時だったという。処女作でこれだけの長編を書けるのは凄い。50歳の区切りで新しいことをやってみようということで始めた小説執筆らしいが、もう1つ驚かされるのはテーマ選択の幅の広さでもある。この人、関西のお化け長寿番組『探偵!ナイトスクープ』の構成作家を、番組開始当初から20年以上にわたって続けているらしく、視聴者からの投書を読みながら相当見聞の幅を拡げておられるのではないかという気がする。

音が絡む吹奏楽や軽音楽を題材にした小説を描くのは大変なのではないかと思うが、同様に、スピード感のある格闘技を題材にした作品を描くのも難しいのではないだろうか。リングに立つ当事者のボクサーが、相手との息もつかせぬ打ち合いの中で何か物事を考えたりはできないだろうし、相手もある打ち合い自体を描写するのは非常に難しい。それをやってこれだけの作品に仕上げるのだから、この著者の筆力は凄いと感服してしまう。

ストーリーとしては非常にわかりやすい。600頁近くもあるので一気にはなかなか読めないだろうが、終盤に行けば行くほど展開が加速していくので一気に読みやすくはなるだろう。ボクシングは個人スポーツではあるけれど、木樽の成長に引っ張られて周囲の先輩部員も力をつけていく過程は、ボクシングにもチーム的要素もあるんだなというのを感じさせる。ただ、女子マネはいいとして、24歳の美人教師が顧問という設定はちょっとどうかなという気はした。味気のない拳闘シーンに色気を添えて読者の関心をもたせたいのだろう。それに、ボクシングをよく知らない読者にアマ・ボクシングのルール等を知ってもらうには、素人の顧問というキャストが必要だったということもあったのかもしれない。としても、ちょっと出来過ぎな設定かも。

木樽の成長過程を見ていると、意思さえ持てば人は短期間でこれだけ変われるというのを学べると思う。こういう作品は、これから高校生になる男子中学生には是非読んで欲しい。
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