『カンランシャ』 [読書日記]
内容(「BOOK」データベースより)伊藤たかみの作品って、ページ数がそんなに多くないから、簡単に読み切れるような気がする。但し、『8月の路上に捨てる』の時にも感じたのだが、盛り上がりにはイマイチ欠ける作品ばかりだなという印象。それだけに、フィクションという感じがあまりせず、実際どこででもあるような話かもしれないという気もする。そんなにあって欲しくない話でもあるが(笑)
夫婦でいるとか、恋人でいるとかって、本当はどういうことなんだろうな。不動産会社に勤める瀬尾隆一は、大学時代からの先輩・蛭間直樹の妻・いずみのことが気になっている。いずみから直樹が浮気をしているのではないか、と相談を受けたのがきっかけだった。自身の妻・信子とは2年前から別居中で、すでに愛情は枯れてしまっている。次第に距離を縮めてゆく二人だが、失うには大きいものが多く、なかなか踏み込めない。そんな関係が煮詰まってきたある日、直樹が病院に運ばれた―。
本書は女性雑誌『CLASSY』に連載していたらしいから、想定読者は20代後半の女性なのだろう。そう思って読めば納得できるようなストーリー展開である。多分この世代の女性読者には受ける内容だろう。但し、正直言って、最後まで読んで振り返ってみたら、中盤までの展開からみてこういう終り方になるだろうと思ったそのままの終り方だったので、あまり記憶に残らない作品に終るような気がする。
ただ1つ、読む価値を見いだせるとしたら、主人公3人のうちの2人――蛭間直樹・いずみ夫妻が住んでいたのが三鷹駅南のマンションだったということである。作品中で2人が南口徒歩数分のところにあるタイ料理レストランで食事をするシーンが出てくるが、このレストランは下連雀のエレファント・キッチンのことであろう。また、自宅マンションでの発作で倒れた直樹が送られた病院は三鷹中央病院か、或いは武蔵野日赤病院だろうと想像する。いずれにしてもうちの近所である。一方の瀬尾隆一が調布のマンションに住む妻と別居して移り住んだ場所は荻窪。隆一の勤務先で、蛭間夫妻の元勤務先は飯田橋にあり、これも僕の職場からわりと近い。
そういう意味で、地元を舞台にした小説の1つと見なすことはできるだろう。以上。
CLASSYで時々読んでました。
by duke (2010-12-13 12:35)
dukeさん、コメント&nice!ありがとうございました。
想定読者の嗜好を念頭に小説のあらすじを組み立てなければいけない作家さんも大変ですね。
by Sanchai (2010-12-13 22:44)