SSブログ

オリッサ少数山岳民族の暮らし [インド]

Yokohama1.JPG
一時帰国中は僕が自分の活動報告をやるのに人に集まっていただくことばかりだったような気がするが、21日(土)は立場を逆にして、神奈川にあるNPO法人草の根援助運動が主催した講演会「インド・少数山岳民族の暮らしとNGO活動」に参加してきた。場所はかながわ県民サポートセンター(最寄り駅はJR横浜駅)、時間は18時15分から20時までだった。

このイベントについては、ミクシィのイベント情報で掲載されていたので最初に知ったが、いずれにしても草の根援助運動には僕の大学院修士課程時代の同級生だったペリーさんがいらっしゃるので、遅かれ早かれイベントには気付いていただろう。兼ねてからペリーさんからは僕がインドに行ったらこのオリッサ州のニューホープ(New Hope)というNGOの活動地も一度訪ねてみて欲しいと言われていたが、実現もせずに今日に至っている。今回僕の一時帰国の間に彼らの方から日本に来られるというのも何かの縁だろうと思い、天候は芳しくなかったけれども横浜まで遠征することにした。

以下はミクシィから案内文の転載―――。
==============================
           ★講演会★
    「インド・少数山岳民族の暮らしとNGO活動」
==============================
インドは、経済成長著しい国として、中国と共に 発展事情が多く報道されています。 しかし、その恩恵を受けているのは人口の3%ほどで、 多くの少数民族や不可触民が1日1ドル以下で暮らさざるを 得ない状況にあります。

草の根援助運動では、インド・オリッサ州の少数山岳民族 (ドンゴリア・コンド)の社会開発、生活改善プロジェクトを 現地パートナーNGOであるニューホープと共に1995年からおこなってきました。

日本では、ほとんど知られていないドンゴリア・コンドの生活は、安全な水が無い、安全な出産ができない、栄養が充分に摂取できないために、満2歳までの死亡率が高いなどの状況があります。また、ドンゴリア・コンドの母語である無文字の言語では、市場経済が入りつつある状況に対応できずに、不利益を被っていることもあります。

講演会では、ニューホープのディレクター、ローズ氏とプロジェクト責任者であるシャクンタラ氏を招聘し、最貧困層の人びとの暮らしや人びとの自立を支援するNGO活動について、お話しいただきます。
現地のスタッフから、山岳民族の暮らしや現状について話を聞くことができる貴重な機会です。ぜひご参加ください。

講師:
◎エリアザール・ローズ氏
(ニューホープ(NEW HOPE RURAL LEPROSY TRUST)・ディレクター)
◎ナンドゥルカ・シャクンタラ氏
(ニューホープ・山岳民族プロジェクト責任者。山岳民族出身)

共催:
社団法人 神奈川人権センター
特定非営利活動法人 草の根援助運動
(People to People Aid :P2)
235-0036 横浜市磯子区中原1-1-28 3F
TEL: 045-772-8363 FAX: 045-774-8075
E-mail: office@p2aid.com
URL: http://p2aid.com
=================================
ぎりぎりで会場入りしたが、参加者が100人ぐらいいたのではないかと思う。この日は僕もお手伝いしている市の国際交流協会の方でも午後に総会があったが(僕は所用で出れなかったのだが)、市民対象で行うこの手のイベントで100人動員するというのは非常に困難なことだ思う。しかも1団体の企画で。それだけ、草の根援助運動が神奈川の市民に浸透しているということなのだろう。動員力にいたく感動を覚えた。

Yokohama2.JPG
お話の方は、ローズさんとシャクンタラさんが写真を非常にふんだんに用いて説明をされていたので、普段デリーで見慣れている北インドの人々や出張先で会った人々とは全く異なるオリッサの少数山岳民族の衣装や暮らしぶりが具体的にイメージできたのが非常に良かった。僕が唯一山岳民族を見たのは3月末に知人に誘われて観戦に出かけたホッケーの試合のプレイベントで、チャッティスガル州の女性グループが踊っていたものであるが、この日報告をされたシャクンタラさんの正装もそれに近かった。ただ、写真で見た女性や子供達の衣装は、正装じゃないからかちょっとくすんでいる気がした。

写真を見るとこの民族の住む村はジャングルのようなところを切り拓いて狭い農地を確保しているが、主要な収入源は森林資源の採集から得られているようだ。根菜(山芋のようなもの)や木の葉(皿に使うみたい)、果実(マンゴーだが、デリーで食べるものより小さい感じがする)等が写真から確認できた。以前はこうした森林資源を採集して町で売ろうとしても、個人個人でそれをやっていたために仲買人に買い叩かれるケースが多かったが、ニューホープはこうした産品をいったんプールし、市況が最も有利な時と場所に出荷することでより高く売ることができるようになってきたという。

また、デリーのNGOからはあまり聞かれない言葉であるが、インドでNGOをやっているのはいろいろなところから脅迫を受けるとのショッキングな報告もあった。エスニック・マイノリティの権利擁護の活動を行うと、民間業者や高利貸しから脅されるだけではなく、政府からすら脅されるという話を聞くと、政府は何やってるのかと首を傾げざるを得ない。(最近は政府もNGOの役割を評価し始めているとローズさんは仰っていたが…)

こうした地域は都市からも離れていて、教員だけではなく、医者や看護師もなかなか来てくれないという。そうした公共サービスの提供を政府自らの手でできないところを補っているのがNGOの活動である。ニューホープ草の根援助運動や神奈川教職員組合の支援を受けて行っている活動とは、こうした村々の女性を対象とした保健衛生知識の普及による予防の徹底、識字や算数教育といったノンフォーマル教育支援等である。

発表の結びとして、ローズさんはこう仰った。「(インドに来て支援をして欲しいとは言わないが)世界のどこかでは、苦しんでいる人々が住んでいるということを知ってほしい。」―――僕達は、インドの高度経済成長の影で、成長の機会を捉えることができず恩恵も得られない、「取り残された人々」がいることを常に考えておく必要があると改めて思った。

発表やその後の質疑応答でもあまりよくわからなかったが、講演会の後でローズさんに挨拶に行き、少しだけ立ち話をした。村の成人男性は村で生活をしているのか、コルカタやブバネシュワルといった都市に出稼ぎに行っているのではないかという僕の質問に対して、確かに働き手の成人男性が都市に多く出てしまっていて残された人々だけでコミュニティを維持していくのは徐々に難しくなっていると感じているとローズさんは仰った。経済開発は不可避の流れで、村だけで完結した社会を維持していくことは不可能ではあるが、日本では既に起きてしまったコミュニティの崩壊を、インドの少数山岳民族のコミュニティですら目撃することになるのは忍びない。「あなた達の活動の究極の目標は、こうしたコミュニティの維持強化にあるのですね」と申し上げたところ、「その通り!」とローズさんは力強く仰っていた。

ローズさん、シャクンタラさんとは、オリッサで再開することを約束して、僕は会場を後にした。

ペリーさん、逐次通訳のおつとめお疲れ様でした。関係者の皆様、ありがとうございました。とても勉強になりました。

nice!(2)  コメント(2)  トラックバック(2) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 2

コメント 2

ペリー

おいでいただき、しかも詳細な報告と感想まで!ほんとうに、どうもありがとうございました。

出稼ぎの他に、問題が複雑になるのでローズはあまり触れないけれど、ボーキサイト採掘のダメージは相当なものになっています。彼らにとっては見たこともないような大金が稼げて、しかもそれを使うにもたいした知識も、インフラもない。行き着くところは酒です。聞いてはいないけれど、鉱山には「女」もつきもの。そちらの問題も、おきているのでしょう。

このコミュニティがどうなっていくのか、心痛む、心配な問題です。
by ペリー (2008-06-22 20:55) 

Sanchai

ペリーさん、コメントありがとうございます。

おっしゃる通りで、ローズさん、ボーキサイト採掘の話もされていましたね。経済開発が進んで伝統的なコミュニティを破壊していくのは忍びないです。
by Sanchai (2008-06-22 21:49) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 2