『ハンカチ王子と老エース』 [読書日記]
内容(「BOOK」データベースより)
昭和6年と平成18年―時空を超えた衝撃の甲子園ノンフィクション。斎藤佑樹独占!ロングインタビュー「僕はあの日から、鬼になった」収録。
昭和6年と平成18年―時空を超えた衝撃の甲子園ノンフィクション。斎藤佑樹独占!ロングインタビュー「僕はあの日から、鬼になった」収録。
タイミング的に「ハンカチ王子」ブームに乗って出てきた泡沫作品かなと思われがちであるが、著者の門田隆将氏といえば、前著『甲子園への遺言』がとても有名な作品で、かなり構想力のあるスポーツライターである。時流に乗って本のタイトルに「ハンカチ王子」が付いているが、門田氏が描きたかったのはむしろ「老エース」の部分だったのだろうと思う。
昭和6年夏の甲子園決勝は、早実対中京商業、早実のエースは島津雅男、結果は4-3で中京商業の勝ち、中京商業はこの優勝をきっかけに夏の甲子園3連覇を達成する。以来、東京の名門・早実の悲願は夏の甲子園での優勝だった。王貞治をエースに擁しても勝てず、荒木大輔を擁しても遂に優勝旗を手にすることはできなかった。荒木後の早実は長い低迷期を迎える。そこに斎藤佑樹君が入学してくるのである。
平成18年夏の甲子園決勝は、早実対駒大苫小牧、駒苫は今年が3連覇に挑む年。結果は4-3で早実の勝ちだった。和泉監督は「88回待ちました。その歴史で勝ちました」と優勝インタビューで述べた。88回とは夏の甲子園大会の開催数である。本書を読むと、この優勝は伝統校の歴史が積み重なってようやく達成されたものであるということが非常によくわかる。勿論、斎藤君の努力も見逃せない。2年夏の西東京大会での日大三高戦惨敗、秋の神宮大会での駒大苫小牧と対戦した際の衝撃、それらを乗り越えて、その度に進化して、斎藤君は3年夏を迎えている。そうした、早実野球部全体としての100年の歴史と、優勝チームとなった平成18年夏の野球部の歩みを絡め、全体として昨年の優勝に収束させていくようなストーリー展開になっている。
早実やWASEDAのファンは一読すべきノンフィクションだと思う。但し、これは個人的な印象であるが、1人の人物を追いかけている『甲子園への遺言』とは異なり、単に読み物としてはいいかもしれないが、何かの学びが得られるノンフィクションだとは思えなかった。パッと読み切れるけれども、あまり後に残らない。理由はなんでだかわからないけど。
カテゴリーが多く、多種多様なことを考えられてますね!
by (2007-02-26 02:02)