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カラシニコフ [読書日記]

松本仁一著『カラシニコフ』                                             朝日新聞社、2004年7月


出版社/著者からの内容紹介
世界に2億丁ある非合法の銃の半数を占めるというカラシニコフ(AK47)。開発者カラシニコフや、シエラレオネの11歳の少女兵などへの取材を通し、崩壊する国家の現状や、そこに暮らす人びとを描く。朝日新聞好評連載、待望の書籍化。

仕事でテンパっていても通勤時間では意外と読書しているオヤジである。最近、わけあって『カラシニコフ』という本のことを知り、たまたまコミセンの図書室でその本を見かけたので、さっそく借りてみることにした。

少し前に三鷹国際交流協会のイベントでアフリカ理解講座というのの企画に参加したことがある。今後この企画を続けていくにはどのようなテーマでどのような人をお呼びしたらいいかと考えた時、朝日新聞のナイロビ支局長、中東アフリカ総局長等を歴任されている松本仁一さんなどは適任なのかもと思った。但し、『カラシニコフ』に書かれているような内容は受けないだろうなと思う。

途中まで読んでいると、アフリカという大陸にある国々は手がつけられないほどの銃社会と化しているという実態が切々と語られており、かなり陰鬱な気持ちにさせられた。少年兵や女性兵、民兵がAK47(通称カラシニコフ)で武装して、気に入らない出来事があれば躊躇なく実弾発射するという怖さがひしひし伝わってくる。今のアフリカでは援助資金を受け取ってちゃんと使っている国には援助はするが、箸にも棒にもかからない国には援助資金は行かせないという傾向が強まってきているが、こういう本で市井の実態のルポルタージュを読んでしまうと、そうした傾向はとても賢明であるように思えてくる。

本書の中で、日赤九州国際看護大学の喜多悦子教授が述べている「破綻国家(Failed States)」の明解な見分け方というのがいい。1つは「警官・兵士の給料がちゃんと払われているか」、もう1つは「教師の給料をきちんと払っているか」だという。これらはとても納得がいくものである。

「警官と兵士は、国民の安全な暮らしを守るという、国家の最低限の義務の直接の担当者である。その給料を遅配・欠配して平気な政府は、国家を統治する意思も能力もないと見るべきだろう。」(p.177)

「教育は国家の将来の基礎となる重要な事業だ。しかし投資したからといってすぐ成果があがるわけではないし、明確な数字であらわされるような利益や利潤が生まれるわけでもない。だからこそ当面の採算を度外視し、国が直接に責任を持たなければならない事業なのである。(中略)教師は教育のかなめである。その給料を払っていないというのは、政府指導者に国をつくる意思がないということだ。国の将来などを考えてもいないということである。」(pp.179-180)

喜多教授はさらに1つおまけを付け加えたという。閣僚の半数以上が子弟を欧米の学校に行かせたり、家族を国外で生活させている国は破綻国家である。政府幹部が自国の行政を信じておらず、自分の子供や家族だけは外国に預けている。そんな国は破綻国家だという。

そう考えると、かなりの数のアフリカの国は「破綻国家」ということになりそうだ。だから、本書も最終章を読むまでは、アフリカは手がつけられないという印象をとても強く持った。でも、最終章でソマリア西北部のソマリランド自治共和国が民間に出回っている銃を回収し、効率的な政策運営を行っている事例が紹介されている。これでもかこれでもかと暗い現実を見せ付けておいて、最後の最後で希望の光を取り上げるという、いかにもという章立てで、アフリカもやればできるのではないかという印象を受けた。

お薦めの本です。但し、アフリカ理解講座のようなところで扱うには少し重いなぁという気はする。


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コメント 1

abusana

こんにちは
先日、初めてダイヤの原石を見せてもらいました。12カラットちょっとで30000ドルだそうです。1cm程の大きさのダイヤ原石でカラシニコフが300挺も買えるんです。びっくりしました。
by abusana (2006-09-09 06:58) 

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