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野村ノート [ベースボール]

野村克也著『野村ノート』小学館、2005年10月

「名選手は名監督に非ず」という格言(?)からすると、ノムさんはその例外であろう。現役時代から考えたプレーを心がけておられたから、優れた成績をあげ、その経験を監督としての采配に生かさらた。

ただ、『野村ノート』を読んでみて、一体、この本は誰を読者として想定して書かれたのだろうと不思議に思った。一応プロ野球関係者なのかなとも思う。かなり技術論に入った記述も見られるからだ。ただ、一種のコーチングの本として読んでみると、ちょっとイメージ化が難しいように思った。

先日来、「できる上司」と「できない部下」の関係について論じることが多いが、「できる上司」が「できる部下」を育てられない理由は、その成功体験を上手くイメージ化して部下に示すことができないからだと言われている。言い換えれば、「できる上司」が持つ「暗黙知」を「形式知」化することは難しいということだ。配球の考え方とか読み方とか野球選手には「なるほど」と思えるところがあるのかもしれないが、一般読者にここまで書かなくてもという気もした。

もう1つは、以前故高畠導宏氏の伝記について紹介した際に少し触れたが、『野村ノート』を読んでいると、ノムさんは人の悪い面に触れることがあまりにも多いのが非常に気になった。古田監督が年賀状の1通も書いて寄こさないということをノムさんが不満に思われているのは気持ちとしてわからぬではないが、そんなことを著書に書いても仕方がないのではないかと思うのである。ノムさんは、古田を育てたのは自分だと思っておられるからこうした受け止め方になってしまうのだろう。

丁度、今日配布されていたフリーペーパー「R25」に古田監督のインタビュー記事が載っていたが、プロ野球入りした当初、彼は野村監督の著書を片っ端から読んで考え方を学んだと書かれていた。起用されるため、監督の需要を取り入れたのだという。「プロ野球のルーキーで25歳っていうのは、ファームで2~3年鍛えられる年齢じゃない。逆に言えば、5年くらいでクビになってしまう可能性もあると重々承知していましたから」と古田は答えている。即ち、見方を変えれば、ノムさんの方が古田に踊らされたとも言えるのである。古田にしてみれば、ノムさんに育ててもらったというよりも、自分が上がるためにノムさんを利用したと思っているのだろう。

ものの見方には表もあれば裏もある。ヒマワリもあれば月見草もある。自分がこう思っていても、相手はそうは思っていないかもしれない。従って、あまり特定の個人について、市販される本の中で述べるものではないと思う。


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