『美術手帖 2022年2月号』~ケアの思想とアート [読書日記]
内容紹介【MT市立図書館】
医療や福祉の現場における意思決定のプロセスや、ケア労働とジェンダーの問題などが議論されるなかで、自己責任の限界を提唱する「ケア」の概念が注目されてきた。本特集では、介護や子育てといったケア労働を扱った作品から、 他者との関係性のなかにある自己について考える作品まで、広く「ケア」の思想に通じる活動をする作家やプロジェクトを取り上げる。美術はこれまでも、異なる身体や感覚を持つ人々が他者について想像する契機となってきた。コロナ禍により、かつてなく生命の危うさに向き合わざるをえない今日、私たちはいかにして個人主義的な価値観を脱し、ともに生きることができるのか。アートの視点から考えてみたい。
何の気なしに市立図書館に立ち寄り、最初は借りる気がなかったのに、日本を離れていた2年半の間に『美術手帖』ではどんな特集が組まれたのかとふと気になり、書庫を物色して1冊だけピックアップした。
「ケアとアート」という組み合わせに新鮮さを感じた。インタビューや対談等で構成されているのだが、スミマセン、読了から数日経過しているのと、気になった既述に付箋をふるような作業をしてなかったので、具体的にどこの誰の言葉が気になったのかまではここでは書けない。ただ、なんとなくだけれど今ちょっと注目されている障害当事者の方が描かれた絵やデザインを売るビジネスというのに、なんだか新しい境界線を画定しているような違和感があって、それを言語化してくれている記述があったのだけは記憶に残っている。
本書で登場されているアーティストや研究者の方々が、キュレーションや研究プロジェクトの背景にあった考え方とか日頃感じておられたモヤモヤ感を、どうしてこんなに言語化できるのだろうか―――自分がブログで記事を書いていて、そういう、ニッチなところを的確に突いてくるような文章表現がなかなかできないので、僕はこういう本で登場する人々の言語化能力の高さにちょっと圧倒されたところがある。
今読んでいる別の本の中に、「エクストリームを理解することによって、メインストリームを変革することができる」という表現があった。アート作品というよりも、ここでは実装がある程度前提となっているプロダクトデザインの文脈の中での記述だったと思うが、利用する上でのエクストリームなシナリオこそが新しい製品アイデアや操作方法のイノベーションを圧倒的に生み出してきたという指摘を見ながら、それはケアとアートの接点領域においても言えることなのかもしれないと思った。
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