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初のプログラム円借款 [ブータン]

日本、経済回復に向け借款供与を決定
Japan approves billions in loan for economic recovery
YK Poudel記者、Kuensel、2023年5月31日(水)
https://kuenselonline.com/japan-approves-billions-in-loan-for-economic-recovery/
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【ほとんど抄訳【抄訳(www.DeepL.com/Translator(無料版)翻訳を筆者編集)】】
経済の回復と成長を支援するため、ブータンは、日本政府からの譲許的融資としては最大級の、65億5,000万円(38億ニュルタム)規模の「経済復興・強靭性向上のための開発政策借款」を要請した。JICAと財務省は昨日、円借款貸付契約に調印した。

この円借款により、財政政策の強化、再生可能な天然資源を中心としたグリーン成長の促進、自立性の強化、同国のマクロ経済状況の安定化を図ることが期待される。

ナムゲイ・ツェリン財務大臣は、契約調印に際し、この支援は長年にわたる二国間関係の構成項目の一つであると述べた。「JICAは、長年にわたり、技術的および財政的な支援により、同国の社会経済発展のための重要なパートナーであった。今回の円借款は、パンデミック後のブータン経済の回復を支援するものです。今後何年にもわたり、ブータンはその経済成長を活用し、日本との貿易パートナーになる可能性を秘めています」と述べた。

JICAブータン事務所の山田智之所長は、ブータンへの譲許的融資は今回で4件目となることを明らかにした。「JICAと政府は、融資が利用される計画や政策について事前に話し合い、プロジェクトは期間終了後にモニタリングされることになります。この融資は円建てで行われ、ブータンにとって日本円の通貨を維持するのに役立ちます。この署名の後、融資の利用分野とその効果について、一定の手続きが行われます」と述べた。

この融資は、金利1.6%で10年間の猶予期間がある一回限りの支援だという。しかし、その実施に際して技術的、人的な介入は行われない。財務省の担当者によると、マクロ財政・開発金融省が実施機関となる。同省のプレスリリースによると、この融資はSDGs8、10、13の達成に貢献するという。

ブータンの最貧国(LDC)卒業が間近に迫り、これまでのような贈与(無償資金協力、技術協力)の実施余地がかなり限定されることが予想される中、借款の活用拡大は日本にとって長年の課題だったと思う。ブータン側のメディアの報道ではあまり読み取れないだろうが、今回の円借款は、対ブータンODA史上、かなり画期的なことだったと思っている。

過去2回実施された円借款は、いずれも「地方電化」の促進を目的としたもので、ブータンの当時の債務政策とも整合させ、電力セクターで行われたものだった。融資限度額もそれぞれ35.76億円(2007年)と21.87億円(2011年)と、通常インドなどで行われている100億円規模のプロジェクト借款の規模感からすると、比較的小規模なものである。このため、ブータンにおいてはJICAは借款供与機関としてはあまり重視されておらず、IMFが毎年行う「4条協議」(国別サーベイランス)でも、世界銀行やアジア開発銀行には声がかかるが、JICAがIMFから呼ばれることはこれまで一度もなかった。

これに対して、今回の円借款は、融資限度額は65.5億円と規模が大きい。それだけでなく、使途を特定セクターに絞らないプログラム借款となっている。これは一種の財政支援で、あらかじめ主要なKPIについて取り決めて、定期的にその履行状況を確認するという、モニタリングの重要性が増す。また、さすがに今後は借款供与国として一目置かれ、IMFの4条協議でも、意見聴取が行われるようになっていくことだろう。

財務大臣のコメントは日本語に訳してもちょっと迫力に欠ける気がするけれど、これは、ブータン向けODAが新たなフェーズに入った象徴的な出来事だと思う。だから、JICAもトップページでこの円借款契約調印を報じている。

「ブータン向け円借款貸付契約の調印:新型コロナウイルスで甚大な影響を受けたブータンの経済復興に貢献」(2023年5月31日)
https://www.jica.go.jp/press/2023/20230531_30.html

ただ、若干ながら気になることを書いておく。

この円借款の実施機関は財務省で、KPIの項目の履行責任も財務省にある。でも、前回の記事「人的資本投資の再定義を」で取り上げたBBSの報で、今年に入ってから公務員の辞職が相次いでいる政府機関のトップ3に、確か財務省も入っていた。何が起きているのかはわからない。日本人的感覚で言ったらエリート中のエリートだと思う財務省で職員の辞職が相次いでいるというのは、「オーストラリアの方が高収入が得られる」といった単純な理由ではなく、もっと何かあるのかもしれない。

そうすると、結果としてKPI履行努力が鈍る、レスポンスが悪いといった事態が起きる可能性がある。

ちゃんとやってもらうということに加え、KPIの中身に関する定義も、相手との認識のすり合わせは相当入念にやっておく必要があると思う。同じ言葉でも、相手が思っているイメージと、自分が思っているイメージが違うことは往々にあり、同じ方向を見ていると思っていたのに、あとになって全然認識がズレていたことがわかり、相手への不信感につながるという経験は、現場にいて何度も経験している。

そういうリスクは、早め早めに潰していって下さい。
タグ:円借款 JICA ODA
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