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『さらば愛しき競馬』 [読書日記]

さらば愛しき競馬(小学館新書)

さらば愛しき競馬(小学館新書)

  • 作者: 角居勝彦
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2020/11/26
  • メディア: Kindle版

内容紹介
名伯楽が40年の競馬人生で体得したもの。日本馬として初めてドバイワールドカップを制したヴィクトワールピサ、64年ぶりに牝馬のダービー馬となったウオッカ──調教師として数々の金字塔を打ち建ててきた角居勝彦氏だけに、「厩舎解散」の報せは衝撃を持って伝えられた。
「初めて馬に触れてから40年近く、競馬の世界でお世話になりました。本書では、その間に私が見たたこと感じたこと、そして勝つために努力したこと、勝つことで確信できたことなどを綴っていくつもりです。競馬に使う側の考え方や方法論を知ることで、大いに馬券検討の参考になるはずです。競馬を支えてくださったファンの方への恩返しのつもりで(中略)正直に打ち明けました」(本書「はじめに」より)
【Kindle Unlimited】
本当は、先週末の日本ダービーの直前に読み切りたかったのだけれど、全然間に合わなかった。本書は、ファン目線ではなく、調教師という当事者の目線で書かれていて、ファンが気軽に読むには少し難しさも感じた。馬券選択する際の参考にはなるところもあるかもしれないが、何しろそれほど馬券買ったりもしていない。ファンと言えるほどのファンでもないので、参考にするほどの読み方も正直できなかった。

でも、角居厩舎といったらテレビの競馬中継ではよく解説者が「さすが」と言及していた厩舎で、それだけの好成績を上げていた厩舎であった。だから、数年前に角居調教師が厩舎を解散するという報道があった時、えらい思い切ったことをされるんだなと少し驚いたのを覚えている。

競馬で好成績を上げて「名伯楽」と呼ばれる名声を打ち立て、今の競馬界のあり方に対して一家言もあり、影響力もあるような人物が、あっさりそれを手放して次のキャリアを選択される―――僕が本書に関して興味があるとしたら、その部分だったかもしれない。

著者の角居氏と僕は1歳違いで自分の方が年上。現役時代のキャリアは氏の方が圧倒的に上で比較するのもおこがましい。日本調教師会の定年は70歳ということなので、角居氏はそれを10年以上も前倒しして、競馬界から身を引かれたことになる。僕のように、60歳が定年だから定年で会社を辞めると言っているのとは全然意味あいが違う。

ただ、本書で書かれたことは、調教師としての馬を見る視点や、調教にあたっての力点、厩舎運営のノウハウ等、同じく調教師を今後目指すような人々や、調教師と一緒に働く人々にとって、角居氏のノウハウを知ることができる1冊になっていると言える。通常なら、調教師が引退する時、その厩舎で師の傍らで働いてきた後継者が厩舎全体を継承するというような形で、経験やノウハウの継承が行われていくものだが、角居氏の場合は「厩舎解散」という選択をしたので、師から後継者への継承とはちょっと異なる手法が用いられたのだと思う。角居氏の経験やノウハウは競馬界にとっては一種の共有財産のようなものになり、多くの関係者に参照していもらえるようになったのだと思う。

僕のブログもあと半年ほどで20年の節目を迎えるが、一応匿名でやってきているので、あまり自分の業務上の経験やノウハウなどをこのブログで書いたという記憶はない。

そういうの、残す努力もしておかないとな。

さらに印象的だったのは、角居氏の厩舎解散後の自身のキャリア。一部の例外的活動はあるものの、完全に競馬界からは距離を置いて、石川県での天理教の布教活動に軸足を移しておられる。布教ということ自体には特段どうこうという思いはないけれど、引退後のあり方として、元いた自分の居場所から完全に距離を置き、変に影響力を与えようとか考えず、今いる場所での自分の活動に注力するというというのは、同じく引退を考えている僕も見習わねばと思った。

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