人的資本投資の再定義を [ブータン]
100億ドル経済実現には自然資源と人的資源への投資を:ADB
Investment in natural capital and human capital development essential to achieve USD 10bn economy: ADB
Sherub Dorji記者、BBS、2023年5月26日(金)
http://www.bbs.bt/news/?p=186349
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2034年までに100億ドルの経済大国になるという野心的な目標を達成するためには、高い生産性と収益率を持つ分野への投資が必要———アジア開発銀行(ADB)業務担当副総裁である陳志欣氏によると、これには今後数年間の持続的な成長が必要であるという。また、100億ドルの経済規模を達成するためには、第13次5カ年計画の進展が重要であるとも述べた。副総裁は、ブータンにおけるADBの業務を総括し、政府との今後の関わり方について議論するために、ブータンを訪問した。
本日、メディア関係者と面会したADB業務担当副総裁は、100億ドル経済を目指して経済成長を促進するために、水力発電、太陽エネルギー、風力エネルギーといったブータン固有の自然資本を活用する必要があると述べた。「水力発電は経済を支え、活性化させ、農業や都市開発にも貢献するでしょう。」
副総裁はまた、経済成長率を高めるために、人的資本の整備に投資する必要性を強調した。「教育、技能開発、そして医療制度や社会的保護に目を向けることで、包括的な成長を実現することができるのです。そして、そう、私たちは継続する必要があります。つまり、不安定な成長ではなく、持続可能な成長でなければならないのです。ですから、財政支援、人的資本開発、社会的包摂が重要な分野となるでしょう。」
ADBは、ブータンの経済成長率を今年は4.7%、来年は4.6%に若干低下すると予測している。そして、2025年にはさらに4.2%まで下がると予測する。
ブータンが2034年までに100億ドルの経済規模を達成するためには、年平均11.7%の成長率を維持することが必要である。つまり、今後11年間で100億ドル規模の経済を達成するためには、これまでの数字と比較して130パーセント近い経済成長が必要だ。
一時期ほどではないけれど、SSブログの更新頻度が月末になればなるほど下がる傾向が続いていて、今頃5月下旬の報道を取り上げることをご容赦下さい。一見何の変哲もない報道なのだけれど、最近、現在のこの国における「人的資本」への投資の有効性についてちょっと疑問も感じていて、ADBの副総裁が会見でおっしゃったことも、ちょっといじってみたくなった。
言われていることは正論なのだけれど、「人的資本への投資」という言葉をもうちょっとちゃんと定義しないと、なんとでも読めるのではないかと思ってしまう。皮肉なことに、このADBの副総裁が記者会見を行う前の週、オーストラリアの外務副大臣がブータンを訪問していた。BBSの独占インタビューの中で、「職業教育・訓練、清潔な水と衛生、気候変動対策に焦点を当て、協力・連携の新しい機会を模索している」と語っているが、ブータン人のオーストラリアへの大量出国は話題にも上っていない。
さらに、今週はBBSでこんな報道もなされている。
1月から5月にかけ、2,000人以上の公務員が辞職
More than 2,000 civil servants resign between January and May this year
Ugyen Dorji記者、BBS、2023年6月1日(木)
http://www.bbs.bt/news/?p=186614
【ほとんど抄訳【抄訳(www.DeepL.com/Translator(無料版)翻訳を筆者編集)】】
今年に入って5カ月足らずで、2,000人以上の公務員が辞職している。これは、約2,600人の職員が辞めた2022年通年のそれとほぼ同規模である。しかし、王立人事院(RCSC)は、役所の機能に影響が出ないよう、必要な採用を行っているとしている。
RSCSによると、今年最も辞職者が多かったのはティンプー市役所、農業畜産省、財務省である。昨年最も辞職者が多かったのは、教育省であった。総数のうち、1,400人以上の公務員が正規職員で、400人近くが有期雇用職員である。この数字には、契約期間が終了した124人の有期雇用職員、5人の強制退職者、別の5人の解雇者、13人の死亡者も含まれる。
RCSCの職員によると、退職者は正式な理由を述べていないが、退職後に海外に出かけたことが判明している。
現在、公務員の離職率はほぼ7%に達している。昨年は8.6%をわずかに超えていた。
RCSCの最新の年次報告書によると、有期雇用を含む公務員は3万人以上いる。現在、600人が特別休暇中である。
僕が時々連絡を取っていた教育省の職員もオーストラリアに行ってしまった。報じられているのは公務員の離職の話だけだが、うちのカレッジでも5月だけで教職員6人が辞めているし、身近なところでは近々3人辞めると仄聞している。うちのプロジェクトに関わっているスタッフも、この中に5人いる。報道の中で言及されているRSCSの説明の通り、補充の人員の採用は行われているが、それで業務に影響が出ないとはとても言えないと思う。
こういう状況下において、通り一辺倒な「人的資本投資」と言われても、投資したけどオーストラリアに流出しちゃいましたっていう状況では、そもそも投資する意味があるのかと思えてくる。「人的資本投資」というのは簡単だが、それで一体どこに投資するのがいいのか、その中身への踏み込みが必要なのではないだろうか。
前述のオーストラリアの外務副大臣が「職業訓練」に言及しているし、ADBも数年前までの電力開発一辺倒だった貸出対象事業が、今では「保健」の他に、「職業訓練」もカバーされるまでになってきている筈だ。自社の事業の中に、「人的資本投資」の具体的領域が既に存在しているのだから、副総裁もそれを強調されたらいいのにと思う。(というか、会見の場では言及されていたにも関わらず、報じるBBSの記者の側でそこまでのことを聴き洩らしたか、記事をまとめる際に切り捨ててしまった可能性もあるかも。)
僕たちが関わっている国際協力は、人がその場に長く留まることを前提として行われてきた人的資本投資だと位置づけることができるが、自分のカウンターパートが突然いなくなるといった状況が日常茶飯事となりつつある今日、「人がその場に長く留まる」という前提はリセットして、人的資本投資の対象をどこに定めていくのか、再定義が必要なのではないかと思っている。
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