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気を吐く労働人材省 [ブータン]

3月、プンツォリンのコンサルティング会社2社が、労働人材省の外注する「ICTとオンラインフリーランシング」の研修業務委託を更新されなかったことを報じたクエンセルの記事を、このブログでも紹介した(「プンツォリンを取り残すな」)。では、この研修業務はプンツォリンでは行われなかったのかというとそうではなかったらしい。4月末に僕がプンツォリン入りして、CSTのキャンパス内を見学していた際、図書館棟の2階の教室を使って、まさにこの研修の修了式が行われているのを見かけた。

労働人材省の研修は、傘下の職業訓練校を会場として行われるだけではなく、「職業訓練(TVET)機関」として登録されている組織が全国各地で研修実施を受注し、各々の自前の研修スペースか、ないしは近隣の別機関の研修スペースを借りて行われている。大学の教室がこうした研修でも使われているというのはちょっと意外だったが、そういうのもあるのだと現場に来てみて初めてわかった。

さて、最近、この労働人材省のFacebookで研修受講者募集のポストが立て続けに挙がる。そうでなくても研修コースの開会式のグループ写真や、逆に修了式での受講生が修了証書をかざしたグループ写真がやたらと掲載されている。


興味本位で4月のポストだけを拾ってみたところ、少なくとも11件の新規募集がかけられていた。

1.組積造建築 2カ月 TTIチュメ校
2.金属加工 期間未表示 TTIクルタン校
3.大工   2ヵ月  TTIチュメ校
4.タイル張り 1ヵ月 ジグミワンチュク電気職業訓練校(JWPTI)
5.デジタルマーケティング 期間未表示 TTIチュメ校
6.飲食料   1カ月 王立観光業研修所(RITH)ティンプー
7.IT及びネットワーキング 期間未表示 TTIランジュン校
8.木製家具デザイン製造  期間未表示 TTIランジュン校
9.家電修理メンテナンス  期間未表示 TTIランジュン校
10.キノコ栽培 1カ月 農村開発研修センター(RDTC)シェムガン
11.企業家基礎研修 2週間 パロ(場所未表示)

期間未表示の研修コースが結構多いが、さすがにそこまで調べる労は割いていないのでご容赦下さい。ついでに補足しておくと、11の「企業家基礎研修」は、それ以外の10コースのそれぞれにも2週間くっついており、単に技能研修だけにフォーカスするだけでなく、どう事業化して採算を取っていくのかという点も、これらの研修ではカバーされるらしい。

チュメ校は元々建築建設技術系の職業訓練校なのだが、そこが「デジタルマーケティング」の研修も募集している。加えて、チュメ校では、以前もご紹介した「3Dプリンティング」も定員20人を確保して始まっているようだし、「クラウドコンピューティング」とか「造園」とか、とかくチュメ校の本来の職業訓練ラインとは異なる研修をガンガン主催している印象だ。(但し、チュメ校の本来のラインじゃない研修は、どうやら外国人インストラクターを1人招聘してきて、そのインストラクターにシラバス作成を総委託している様子だが。)

タシガンにあるランジュン校も、以前JICAの技術協力「職業訓練校の質的強化プロジェクト」が支援していたところで、前回僕が駐在していた頃にも、ITインストラクターとして、タイ人のボランティアが入っていた。タイのボランティアは任期1年なのに、なぜかティンプーでよく見かけたが、まあそれはともかく、あれだけの遠隔地にあるのに、元々電子電機系の職業訓練校だし、ブータン政府がもし今後タシガンにファブラボを作るというのなら、シェラブツェ大学よりもランジュン校の方が適地かもしれないとすら思う。もしそこで木材加工も指導できるというのならなおさらだ。

機会があれば、チュメやランジュンの研修は見てみたい気もするが、多分ムリだろう。誰かそちら方面に行く人がいて、この記事を気にかけて下さるようなら、是非お声かけ下さい。

これら募集されている研修の対象者は、クラス10(高校1年生相当)ないしはクラス12(高校3年生相当)の修了生ということになっている。そういうコホートに働きかけして就業可能性(employability)を引き上げようとする労働人材省の方針はすごく理解できる。こういうのを同省単独ではなく、川下の高等教育と連携させたり、あるいはもっと川上の初等中等教育とのプログラム連携を働きかけたり、あるいはその成果を産業界や開発協力業界にも広く知らしめる機会をソーシャルメディア以外のチャンネルでも設けたり、そういう連携がもっと広く行われるといいと思う。

それと、コース丸投げで量産するのではなく、少し作り込んだ方がいい。以前、障害者向け製菓研修の件で僕は「なんで障害者だけ集めてやろうとするのか、ごちゃまぜにしてやった方がインクルーシブなのでは?」と指摘したことがあるが、この研修も労働人材省が企画したものだ。

最後に、僕がこれまでにもたびたび言及してきたチュメ校の3Dプリンティング研修だが、定員20人でどうやら始まったらしい。開会式と修了式のグループ写真だけでなく、途中経過の研修シーンの写真も公開してくれたらもっと内容が想像できるのだが、取りあえず開会式の記事だけ、労働人材省Facebookから拝借した。


インストラクターのチェ先生は韓国の元シニアボランティアだった方だが、英語がまったくお出来にならないので通訳が必ずつくと聞いた。また、元々のご専門はチュメ校の本来の職業訓練ラインに近い建築系らしく、3Dプリンティングは趣味でやっておられる。また、20人も集めて研修をやるぐらいだから、学習効果を考えれば最低4~5台の3Dプリンターが必要だと思われるが、噂ではチェ先生が個人的に持ち込んで労働大臣に寄贈した1台でやられるとのこと。よって、この研修は、印刷そのものよりも、むしろ3Dデザインの方にウェートが置かれるのだろうと想像される。チェ先生、会ってみたいなぁ。

で、このポストのコメントに、「プンツォリンでも同じようなコースをやってくれたらいいのに」との書き込みがされていた。やらせていただきますとも!次回上京の折には、労働人材省の担当者にも会い、プンツォリンでもやりまっせと売り込みを図りたいと思う。

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