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『ブータンの小さな診療所』 [ブータン]

ブータンの小さな診療所

ブータンの小さな診療所

  • 作者: 坂本 龍太
  • 出版社/メーカー: ナカニシヤ出版
  • 発売日: 2014/12/11
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
ブータンに憧れた一人の医師が、多くの人びとの協力のもとスタートした、地域に根ざすプロジェクトの記録。そこには人びとのぬくもりがあった―。

積読状態の蔵書圧縮イニシアチブ。今回はブータンの地方診療所に半年あまりの間とどまり、村人の健康診断を進め、その結果を以ってブータン医療を治療中心から予防へと方針転換するよう働きかけた日本人医師の活動記録である。しかも、半年少々とはいえ滞在していたのがタシガン県カリン・ゲオッグ(県)という、今でも首都ティンプーから車で2日半はかかるという遠隔地である。書籍化にあたっての文字数の関係もあるのかもしれないが、ティンプー~カリンの間の行程についてはあまり描かれていないが、サラッと描いて済むような距離ではない。それくらい遠いところで活動された日本人医師の現地活動記なのである。

ブータン政府が外国人が持ち込む新概念をどう捉えるのか、どうしたら政策に採用してもらえるのか―――それがブータンに役に立つのかどうかを慎重に見極め、容易に受け容れて行動につなげてくれない国であるのは当然のことだ。僕も「デジタルファブリケーション」という、ブータン人が聞いたこともない概念をそこに持ち込んで「2023年までに全国に15ヵ所」という閣議決定にまでつなげた経験があるが、僕の場合は既にそれをやりたいと言って動いてくれていたブータン人がいたのでまだいい。でも、本書の著者の場合は、これを、現地にそれを理解できる人がいない中で始め、現場での活動からエビデンスを集め、それをもとにして政策立案者に対してプレゼンまでやって、それで政策につなげている。

その道のりは僕なんぞと比べてもずっとハードである。ましてや、僕の駐在時代の印象では農業や公共事業と違って日本に対するシンパシーがほとんどなく、一種独特の動き方をされる保健省が著者のプロジェクトの相手だったわけで、何度か著者がイラついたり怒りをあらわにするシーンがあるけれど、それもわかる気がする。著者がいらしたのは2010年9月から2011年3月まで。それでそれ以後僕が現地にいた頃と比較してみると、予防医療がものすごく進んだようには見えない。高齢者対策も、地域でお年寄りをケアすべきと本書でも指摘されているが、実際にはお年寄りを集めた養護施設を作られている。

ダニに噛まれるのを「慣れる」と自分に言い聞かせて耐えて眠りにつくシーンには震え上がった。これをヒルに置き換えたら、明日の我が身かもしれないし。著者の現場での活動記録だけに、住民と接した記録がふんだんに盛り込まれていて、それが本書を魅力的なものにしている。ましてや東部のシャショッパの人々との交流を描いた本は珍しいので、すごく価値のある1冊である。聞けば著者は現地にいらっしゃる間、ずっと毎日日記を付けられていたようだが、そういう記録は後になって活動記録をまとめる時に必ず役に立つ。それを具体的に見せてもらったような本である。

さらに身につまされたのは、実は終盤に出てくる高血圧に関する記述である。あれだけ塩分の多い食事をとっていれば高血圧にもなるよと僕も思っていたが、それは、僕ら日本人が現地に行って、海抜の高さも手伝って血圧が10から20は一気に上がってしまうところから始まる。それに塩分の多い食事も加わるので、日本人が高血圧になるのは想像できる。でも、ブータン人自身も高血圧なんだというのが本書の学びで、そして高血圧だとどんなリスクがあり、どんな症状が出るかというのも本書では描き込まれている。そして―――。

―――ヤバい、今の僕の血圧じゃん。

元々高血圧ではあったが、4年前の僕の血圧は、上が140行くか行かないかであった。でも、3年間ブータンにいて、戻ってきて今の血圧は、上が140を下回らなくなった。医者に言われて今月初めから朝夕の血圧を記録しているが、特に朝の起きがけの血圧は170台というのも時々ある。先生と相談して血圧降下薬はまだいいでしょうということで、今は有酸素運動で対応しているけれど、それで数値が改善しなければ、次はお薬のお世話になることになるでしょう。

高血圧症のために次の展望が開けないという事態に陥っていては洒落にならないから、僕も気を付けます。最優先取組事項である。

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