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『美術手帖』2018年6月号 [読書日記]

美術手帖2018年6月号

美術手帖2018年6月号

  • 出版社/メーカー: 美術出版社
  • 発売日: 2018/05/07
  • メディア: 雑誌
内容紹介
特集 アートと人類学
人間存在にまつわるあらゆる事象について探究するため、観察し、参与し、記述するという手法をとる、人類学。体験に重きをおくその実践は、ときにアーティストたちに影響を与え、そして人類学もまた、美術の手法に学び、表現の営みについて考察してきた。本特集で取り上げるのは、フィールドワークによる作品から研究機関でのプロジェクトまで、美術と人類学のクロスポイントにある実践の数々。その多様な交点をめぐり、領域を横断し、人間と世界、表現についての大きな問いに挑む試みをたどりたい。

年明け以降、僕がバックナンバーを図書館で借りて読み始めている雑誌の1つに『美術手帖』がある。全くの門外漢の僕にはなかなか手出しがしづらい雑誌であるが、「美術(あるいはアート)[×]〇〇」の掛け合わせの部分に何かしら自分の関心があるテーマがはめ込まれていれば、特集記事は読む価値があるかもと思うようにはしている。僕自身が美術に関心があるわけではないが、そういう形であれば、美術との接点領域は見出し得るかなと思える。

2018年6月号を借りた理由も、人類学への関心からだ。自分は人類学専攻じゃないので、ちゃんとした勉強はしていない。それでもフィールドワークというのがどういうもので、外部者としてフィールドでどうふるまうべきかの最低限のお作法は理解しているつもりだ。ただ、その人類学が、美術や芸術とどう絡んでくるのか、その部分が理解しづらいなという気持ちは、読む前からあった。ただ漠然とではあるが、以前かじった瀬戸内国際芸術祭大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレのような、「アーティストと地域住民とが協働し地域に根ざした作品を制作」(Wikipedia)というコンセプトには、アーティストが行うフィールドワークというニュアンスが少なからず感じられて、僕はそういうものに興味が少しだけあって、それで本号をちょっと読んでみたいと思ったのだと思う。

それで結果はというと、瀬戸内も越後妻有も出てこなかった。まあいずれの国際芸術祭も既に有名すぎてわざわざ美術の専門誌で重点的に取り上げるまでもなかったのかもしれない。とそれはともかくとして、この特集号で取り上げられた記事が素直に理解できたかというと、まったくもって難解。人類学の基礎知識はそれなりに復習にはなったけれど、アーティストが行っている人類学的実践の部分は、なぜそうなるのかがさっぱり理解できなかった。

『美術手帖』は、もう少しバックナンバーを地道に読んでいかないと、理解できる閾値には到達できないな。今しばらく我慢が必要―――そんな苦い思いを抱いた。

ただ、「映像人類学」という人類学の一領域―――民族誌映像という概念にはちょっと惹かれるものを感じた。ひょっとしたら、このあたりが僕にとってのエントリーになっていくのかもしれない。例えば、言葉がわからない異国の地に2、3年滞在するとして、地道に参与観察をやっていくことで見えてくるものは当然あるとは思うが、そこで撮りためた写真や映像の中から見えてくるものもきっとある筈だ。

それとの関連で思い出した最近の出来事が2つある。

1つは、これまた最近時々図書館で借りている『ソトコト』の2019年8月号でいちばん印象に残った、写真家・吉田亮人の「撮るだけではなく、被写体に写真を還元する」というReturn Projectの巻頭記事。バングラデシュの首都ダッカの路線バスの15歳の車掌・リアジ君の日常を撮り続けた写真展で、撮った写真をリアジ君とその周りの人々に見せて、気付きを促す取組みだった。開発途上国の直面する課題に、アーティストはどう答えるのか。このプロジェクトはその答えの1つを示唆しているような気がした。

もう1つは、1月に試写会で見たドキュメンタリー映画『タゴールソングス』。4月下旬から東中野のポレポレ東中野で公開予定で、インドの詩聖ラビンドラナート・タゴールの歌が、インドやバングラデシュでどのように歌い継がれているのか、何人かの老若男女に密着取材して編集されている。僕のような初心者から見て、こういうのが民族誌的な映像なんじゃないかなと思える。
https://cinefil.tokyo/_ct/17338451

TagoreSongs.jpg
そういうアプローチの仕方で言うと、もし改めて異文化とどっぷり触れ合う機会があれば、映像を撮りためておくことも必要なのかなと思う。最近、仕事でお付き合いができて映像制作の専門家の方から、「アドビ・プレミアを一緒に勉強しましょう」と誘われている。映像編集用ソフトで、僕がもしまた外国に行く機会があれば、そこで撮りためた映像も活用して番組でも作ろうよというお誘いなのである。

そのお誘いには4月以降乗るとして、その他今後に役立ちそうな読みたい本のリストとして、以下挙げておく。最初の1冊は、本特集号でも紹介されている。

映像人類学(シネ・アンスロポロジー)―人類学の新たな実践へ

映像人類学(シネ・アンスロポロジー)―人類学の新たな実践へ

  • 出版社/メーカー: せりか書房
  • 発売日: 2020/02/11
  • メディア: 単行本

フィールド映像術 (FENICS 100万人のフィールドワーカーシリーズ)

フィールド映像術 (FENICS 100万人のフィールドワーカーシリーズ)

  • 出版社/メーカー: 古今書院
  • 発売日: 2015/01/01
  • メディア: 単行本

フィールドワークと映像実践:研究のためのビデオ撮影入門 (知のアート・シリーズ)

フィールドワークと映像実践:研究のためのビデオ撮影入門 (知のアート・シリーズ)

  • 出版社/メーカー: ハーベスト社
  • 発売日: 2013/12/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


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