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『超店舗』 [持続可能な開発]

超店舗―幸福の経営を求めて (樹福新書)

超店舗―幸福の経営を求めて (樹福新書)

  • 作者: 矢崎 勝彦
  • 出版社/メーカー: 樹福書院
  • 発売日: 2012/12
  • メディア: 単行本


お金もなかったのでとても京都まで行けなかったのだけれど、先週末の三連休、京都では京都フォーラムの30周年記念大会が開かれていた。今では一般財団法人化した京都フォーラム事務局のHPを読むと、1989年11月3日は、「文化の日、京都フォーラム創設。京都大学名誉教授清水榮氏(第五福竜丸に残った微量の灰を分析し、水素爆弾であることを突き止め、科学者の国際会議で学術報告し(通称・清水レポート)、良心の科学者として世界に知られている)を初代座長に、初回テーマは、「地球の危機に対して宗教と科学はいかにあるべきか」。」とあった。ブルントラント委員会報告書よりは2年後だが、発起人だったフェリシモの矢崎勝彦会長が、この当時から既に「持続可能な開発」(但し、矢崎会長は「永続的発展」と言い換えて使っておられる。Sustainable Developmentを「持続可能な開発」と訳すのには、ちょっとした抵抗感を感じておられる様子)を意識して、フェリシモの経営に携わってこられていたというのには感銘を受ける。

フェリシモに入社すると、社員はこの「矢崎語録」を読むらしい。店舗を持たないダイレクトマーケティングを「超店舗」という言葉で表現されているが、これがじゃあSustainable Developmentとどう関連するのかはわかりづらい。でも、サブタイトルの「幸福の経営を求めて」とSustainable Developmentは相当しっくり来る。実際にこの「矢崎語録」で描かれていることのほとんどは、「幸福の経営」に向けて、ひとりひとりが何をしていくべきなのかの指針である。経営の話だから被用者の自分や求職中の自分には関係ないと思っている人いませんか?矢崎会長は、本書の中で、ひとりひとりが経営者になれとも仰ってますよ。

今から2年前の2017年11月、僕はブータンで開かれた第7回GNH国際会議に、フェリシモの矢崎和彦社長をお招きするお膳立てをした。1日目の午後イチのセッションで経営者から見たGNH経営というので社長にご登壇いただき、フェリシモの「ともにしあわせになるしあわせ」「しあわせ社会学の確立と実践」という経営理念についてお話いただいた。矢崎社長とご一緒して、そこで僕は社長に言われた。「Sanchai君、自分の会社を作りなさい」と。社長に同行されていた執行役員のKさんにも言われた。「会社に属しながら自分の会社を作れ」と。

今、『超店舗』を読んで、あの時お二人から言われたことや、最近別の機会にKさんから言われたことなど、すべてが腑に落ちた気がした。1回読んだだけではすべて理解できたとはとても思えないが、同社の関係者の方々の言葉や行動の背景にあるものを知り、自分なりに目線を合わせていくには、この本を読み込むことは必須であると思う。

それだけではない。これが書籍化されただけでも、外部者がフェリシモの関係者の方々を理解する上での大きな進展ではあったわけだが、この「矢崎語録」の世界観はもっと壮大であり、SDGsの時代だからこそ、今この本はもっと光が当たってもいいような気がする。2年前のGNH国際会議の主題は「ビジネスのGNH(GNH of Business)」だった。もしその時点でこの「矢崎語録」が英訳されていたとしたら、あの会場で著者クレア・ブラウン教授が1日目午前のセッションで宣伝していた『Buddhist Economics(仏教徒の経済学)』よりも、経営者が書いたGNHの本として注目されていたに違いない。

僕にもうちょっとその辺の嗅覚があって、「矢崎語録」をもっと早くに読んでいたら、拙いながらも英訳の作業を進めておけたのになぁと反省する。また、矢崎社長のご登壇も、ご発言内容を事前にもう少し英語化するのに自分の力を注げたら、もっとインパクトを出せたのではないかと自分自身も反省する。そして、クレア・ブラウンみたいに、矢崎会長の著書『超店舗』の英語版の宣伝をあの場でできたかもしれないとも思うのである。その直後に控えていた僕自身の登壇発表の方に力を注いでいて、そこまでのレバレッジを考えている余裕がその時はなかった。

翻訳の動きはないのだろうか。あるなら罪滅ぼしの意味も込めて自分もお手伝いしたい気持ちだ。GNH国際会議は毎年開催されている。捲土重来を期して、どこかのタイミングで『超店舗』を紹介できたら面白い。(英訳が難しい表現も相当多いけれど…)

また、来年の京都フォーラムには、今ブータンから立命館や京大に留学してきている3人のブータン人学生にも出席して欲しいと思う。


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