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再読『MAKERS』 [仕事の小ネタ]

MAKERS 21世紀の産業革命が始まる

MAKERS 21世紀の産業革命が始まる

  • 作者: クリス・アンダーソン
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2012/10/23
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
『ワイアード』US版編集長で世界的ベストセラー『フリー』『ロングテール』の著者クリス・アンダーソンが、新産業革命の最前線へと読者を誘う。今日の起業家は、オープンソースのデザインと3Dプリンタを使って製造業をデスクトップ上で展開している。カスタム製造とDIYによる製品デザインや開発を武器に、ガレージでもの作りに励む何百万人という「メイカーズ」世代が、製造業の復活を後押しする。ウェブのイノベーション・モデルをリアルなもの作りに持ち込むことで、グローバル経済の次の大きな波を起こすのだ。世界規模で進行する「メイカームーブメント」を決定づける一冊。

外国出張の旅のお供で携行し、出張期間の前半で読み切った。

6年ぶりの再読であるが、直前に同著者の『ロングテール』を読んでいたことと、この間に僕自身のデスクトップ工作技術に対する理解が進んだこともあって、非常に効率的な復習となった。また、『ロングテール』は、前半の構成がすっきりしていたわりに後半グダグダになって無駄な記述が多かった気がするが(要は前半部分だけ読んでも事足りたということ)、『MAKERS』の方は構成の無駄がなく、各章を読み始める際のポイントがはっきり予想でき、次にどんな章が来るのかも想像ができた。

『MAKERS』は著者自身や著者の父の実践といったかなり著者の身近な具体的なエピソードが沢山出てくる。本書が2012年に刊行され、日本語版もさほど間髪入れずに同年内に刊行された頃は、ちょうど3Dプリンタのコストダウンも重なり、日本でもメイカームーブメントが盛り上がったと言われている。日本のものづくり愛好家にも相当インパクトを与えた本だと思う。

日本でメイカームーブメントが盛り上がったのはこの頃だったということは、当然ながら本書の中では日本のことなど出てこないということでもある。しかも、ここでは欧州や開発途上国ではどうかという言及もない。本書で描かれているのは全て米国の話しなのである。

ということは、当然次のような疑問も湧いてくる。

これ、一般化できるのだろうか? 元々DIY文化がある米国では盛り上がったかもしれないが、日本やアジアではどうなのか? また、そうでなくても、同じ西洋文化の括りで語られることが多い欧州でも同じことが言えるのだろうか?

特に、日本では、こういうものづくり愛好家のコミュニティは今でもまだ小さくて、メイカームーブメントの話をしても、ピンと来ないという表情の人が多いように思う。3Dプリンタを見たことがあるという人も、すごいマイノリティだという印象だ。人付き合いが苦手な僕の限られた見聞からの勝手な印象かもしれないが、少なくとも文系人間の集まるところでこの話をしても、自分事として受け止めてもらえることは少ない。

その一方で、産業部門では、AIだIOTだMaaSだコネクテッドカーだ宇宙衛星技術だといった話は多い。日本の場合は、個人レベルのものづくりの話をすっ飛ばして、デスクトップ工作機械の話がいきなり産業界の話に飛躍してしまっている。

さらに悪乗りして開発途上国の話もすると、インドの草の根発明家の話は本書が出るよりずっと以前からインドでは頻繁に聞かれ、賛辞も送られていた。デジタルテクノロジーかというとそうではないけれど、自分たちの暮らしや生計活動を良くしようと、身の回りにあるものに工夫を施すような取組みは、探せば相当ある筈だ。

クリス・アンダーソンのような世界的にインパクトがある作家がそういうところにもアンテナを拡げてくれたら、相当面白い話を拾ってきてくれそうな気がするが…。本書の中でそこまで期待してもせんなきことだが、そのうちに誰か考えてみて欲しいと思う。

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