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『ディープテック』 [持続可能な開発]

ディープテック 世界の未来を切り拓く「眠れる技術」

ディープテック 世界の未来を切り拓く「眠れる技術」

  • 作者: 丸幸弘・尾原和啓
  • 出版社/メーカー: 日経BP
  • 発売日: 2019/09/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容(「BOOK」データベースより)
国内外のディープテック事例を多数収録。新興国に眠る課題と湧き起こる情熱。日本企業に生まれる新たな活躍の舞台。

勤めている会社の方で、アジアの製造業でのインダストリー4.0導入状況の調査をやったから中間報告会をやるという案内をもらったので、出てみることにした。東南アジア何カ国かで、現地進出日系企業や現地企業、政府関係者、産業人材育成をミッションとする現地の高等教育機関、職業訓練施設等に聞き取り調査をして、その現在地を確認するという点では情報量が多くて興味を惹かれる調査内容だったが、いちばん進んでいるのではないかと思われるシンガポールでの調査が行われていなくて、東南アジアというのでの一般化にはまだ早いような気がした。それに我が社がどう絡むのかという点についても、提言内容はあまり歯切れがいいとは言えなかった。

なんとなく、「日本企業 vs. 欧米企業」という対比の軸に違和感があった。分析の枠組みとしてそれが正しいのかが疑問だった。この夏も国際ロボコンは行われ、モンゴルで開催された大会の様子はテレビでも見てたけど、ベスト4に進出していたのは、確か中国、タイ、地元モンゴル2チーム、の計4チームだった。日本代表だった京都大学は、準々決勝で敗退していた。そういうのを見ていると、進出している外国企業のインダストリー4.0導入状況よりも、こういう、IOTやAI導入を進める上での主力となりそうな各国の人材が、大学卒業後どのようなキャリアパスを歩んでいるのかという方が関心がある。そういう若者を、企業がどのようにタップしているのかにも関心がある。

我が社で行われた調査に違和感を感じた僕が、なんとなく今読んでおくべきなんじゃないかと思って購入しちゃった話題の新刊書籍が、本日ご紹介する『ディープテック』である。ディープテックの定義については、本書序文にこんな記述があるので引用しておく。

東南アジアをはじめとする新興国は、成長の過程で生まれる多くの課題を抱えています。そして、その課題から目を背けることなく、対峙する起業家たちが次々と生まれています。先端技術だけでなく、枯れた技術も応用しながら、直面する課題に対し、中長期的な視点に立って解決を目指していく。Deep Issue(ディープイシュー)をテクノロジーで解決していこうという取り組みを「ディープテック」と呼びます。

そう、これなんだよなと思う。新興国が対象なのかよとのツッコミはあるものの、一般的には開発途上国の方が様々な課題がそこらじゅうに転がっていて、その解決に対して従来のテクノロジーをうまく応用して解決につなげられるチャンスが大きい。そしてそういう取組みを主導せねばならないし、自身も主導したいと思っているのが、同じ途上国の若者たちなのだ。いきなりインダストリー4.0とかIOTとかAIとかいった今流行りの言葉に飛びつくのもいいけれど、地道に頑張ろうとしている地元の若者たちと、日本の製造業のものづくりの伝統がうまく組み合わされば、相当面白いことができそうな気がする。

共著者の1人が創業したリバネスが東南アジアで展開しているディープテック・ベンチャー支援のケースの紹介にかなり偏っている内容だし、国内の事例も、多くは共著者の出身である東大ベンチャーの有名どころを並べておられる印象をどうしても受けてしまう。もうちょっとそれ以外でやられている取組みにまで網を拡げてケースを拾ってないと、単にリバネスが支援しているベンチャーへの投資誘致に終わってしまう気もしないではない。新興国だけじゃなくて、南アジアにも、アフリカにも、ディープテック・ベンチャーの卵はいっぱいいると思う。

などとちょっとだけ辛口のコメントも書いたけれど、この本はおススメする。50代のオジサンがこういうブルーオーシャンに漕ぎ出すのは、人生の残り時間を考えると相当難しいと思うが、我が子の世代の若い人たちこそこういう本を読んで、「未来は結構面白そう」と外向きになっていってくれたらすごい嬉しい。表紙にSDGsって言葉が躍っているけれども、テクノロジーを活用したSDGsへの貢献を、気候変動や海洋プラスチック汚染のような大所高所の話ではなく、身の回りの課題解決というより地に足の付いた形のケースで具体的に示してくれているという点で、本書はこれから就職活動を考えている大学生には読んで欲しいと思う。

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