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『Fashion Business 創造する未来』 [シルク・コットン]

グローバリゼーションとデジタル革命から読み解く―Fashion Business 創造する未来

グローバリゼーションとデジタル革命から読み解く―Fashion Business 創造する未来

  • 作者: 尾原 蓉子
  • 出版社/メーカー: 繊研新聞社
  • 発売日: 2016/09/26
  • メディア: 単行本
内容紹介
ファッション・ビジネスが変容を迫られている。ネット販売とデジタル技術、グローバル化の進展、そして生活者の価値観の変化が、これまでのビジネスの仕組みをディスラプト(秩序などの破壊)しているからだ。ファッションが売れない。その最大の理由は、流行を追うよりもライフスタイル創りを重視するようになった生活者が欲するものを、見つけやすく、買いやすい形で提供できていないことにある。FBの近未来はどのようなものか? 未来は、予測するものではなく、創るものである。日本のFBは、こう発展させよ。日本にファッション・ビジネスを導入、共に生きてきた尾原蓉子の渾身の提言書。

ブータン絡みの論文執筆や発表はひと段落して、次の焦点は再びアパレル・テキスタイルで書こうとしているビジネス・ケースに移ろうとしている。目標は年末だが、その前にできるだけ関連する参考文献を読み込んでおく必要がある。これまでも散発的にやってきたことではあるけれど、少し加速させた方がいいかもと思っている。

三連休の3日目も雨だったので、基本的には引きこもっていた。そうしてようやく読み切ったのが、448頁もあるこの本。アマゾンの書評とかを読んでいても相当評判がいい本だったので、いつかは読みたいと1年ぐらい前からずっと思っていたのだけれど、近所の図書館には所蔵されておらず、この9月に別の本を探しに訪れた近所のブックオフで見つけ、矢も楯もたまらず購入した。(お目当ての本は見当たらなかった。)

僕は本書の想定はイマイチだと思っているけれども、これだけの中身で2000円というのはかなりコスパが良い本である。3年前に刊行しているが、それ以降に出てきたファッション・アパレル関連の「業界ヤバい」系の書籍のほとんどが本書を参考にして情報収集を行ったのではないかと思われるぐらいに同じブランドや企業のケースが出てくる。但し、デジタルテクノロジーの普及という周辺技術環境をこれだけ取り上げているわりに、本書ではZOZOはまったく出てきていない。変な言い方だが、本書を下敷きにしつつも、ZOZOを別途情報収集して追加すれば、別の本には仕立てられるということだ(笑)。

でも、著者が主張している、各社ともCIO(最高情報責任者)やCDO(最高デジタル責任者)のポストを作って経営トップの右腕として配置すべきだという主張は、他書でも見られるものの、本書ほどその根拠となるデジタルテクノロジーの普及について詳述した業界文献はないと思う。

驚いたことに、IoT、3Dプリンティングどころか、ファブラボについてまで言及されている。168頁に、著者が毎年1月に訪れる米国小売業大会(NRF)で、2015年1月の大会の基調講演で、未来学者ファン・エンリケスが述べた「今後30年に起こる主要な変化」というのが出てくる。これはファッション・アパレル業界に限らず、誰もが参考になると思うのでここで書いておくと、

①ネットワークで働く人が、企業で働く人より多くなる。 ②3D印刷とロボット(AI技術)が生産とデザインを中央管理から分散型(現場型)にする。 ③モノづくりとデザインが劇的にスピードアップする。 ④3D印刷では、あらゆる素材が1キロ2ドルになる。 ⑤米国/EU(先進国)で低コストの製造が可能になる。

この基調講演を聴いて、著者自身もそれがファッション・アパレル産業にどのような変革をもたらすのか、それなりの考察をしている。その中で、3Dプリンティングやファブラボにまで言及しているのだ。

 米国では、メイシー百貨店が地下1階をミレニアム世代向けに改装した際、3D印刷のコーナーを設置。500ドル程の3D印刷機の販売や3D印刷のデモや指導を行い、3D印刷によるアクセサリーやスマホ・ケースなどの販売もしている。FIT(ファッション工科大学)では、カリキュラムに3D印刷が入っており、コースによっては必須科目になった。
勿論、ここだけが僕の琴線に触れたわけじゃないけれども、これらの言及はちょっとした驚きだったので、あえてここで述べておく。 本書は、これからビジネス・ケースを本格的に書き始めるにあたって最もベースにするであろう参考文献だと思う。本書が参考文献として挙げているものや、過去に著者が繊研新聞に寄稿したコラムで、特に「サステナブル」や「エシカル」を扱っているものは実際に原典に当たっておいた方がいいと思われるものが多い。これをベースにして、掘り下げていくところは掘り下げていくことになると思うし、特にその関連の本書の記述についても、何度か確認のために座右に置いておく必要があると思う。 取りあえずは読了して、ブログでもご紹介したけれど、これから1カ月、たぶん部分的な再読はしていくだろう。

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私はこれまで20年近く新聞記者としてアパレルビジネスの取材をさせて頂きました。だからこの記事はひじょうに関心がありました。q以前、創造する未来を読ませて頂いたことがありますが、胸が熱くなりました。
by お名前(必須) (2020-11-24 11:36) 

水口栄一

私はこれまで20年近く新聞記者としてアパレルビジネスの取材させて頂きました。それだけにこの記事はひじょうに関心がありました。創造する未来は以前、読ませて頂きましたが、胸が熱くなりました。ありがとうございました。
by 水口栄一 (2020-11-24 11:43) 

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