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『リレー講義 アジア共同体の可能性』 [仕事の小ネタ]

リレー講義 アジア共同体の可能性

リレー講義 アジア共同体の可能性

  • 編者: 豊 嘉哲
  • 出版社/メーカー: 芦書房
  • 発売日: 2019/04/12
  • メディア: 単行本
内容紹介
アジアの地域協力の深化が求められているが、それはトップダウン式のイニシアチブによって生じることはないであろう。本書はSSARC(南アジア地域協力連合)の在り方などに目を向けて、インドやバングラデシュなど各国の経験を踏まえたうえで官民の多様なアクターがアジアで連携を強化する方法を探ぐる。さらに、アジア諸国および日本の研究者とともにアジアにおける地域共同体構築の可能性について展望する。

2012年頃、僕はアジアの地域統合に関する専門書を何冊か集中的に読んでいた時期がある。仕事でそれが必要だったからだが、当時のブログに「結局、自分が今やりたい、自分の今後を考えた場合にやっておいた方がよい作業を後回しにして、仕事だからやらなければいけない作業に没頭してこの1週間を過ごしてしまった自分に、多少の虚しさも覚える」との愚痴めいたことを書いていた。

そう、当時、僕は多少アジアの地域統合についてかじっていたが、それはあくまで仕事上で必要だったからで、自分がやりたかったこととはいえない。ましてや当時の「アジアの地域統合」といったら、2015年を目標としていたASEAN統合のことを指しており、僕のキャリア上縁もゆかりもない東南アジアについては、仕事上の義務感以外の何物でもない動機で文献を読み込んでいた。お陰で、異動でその部署を離れてからは、めっきりそういう文献を読まなくなった。

それが何故今頃またアジアの地域統合に関する書物を紐解いたかといえば、必要に駆られたからである。但し、今回は東南アジアではない。南アジアである。また、仕事上の必要性ではなく、論文執筆とかセミナーでの発表とかに使いまわす、あくまでも個人的な動機によるものである。11月末締切で、本の1章を書かねばならない。12月半ばにはセミナーでパネリストをやらなければならない。そんな状況の中で、何をどう書くか、どうしゃべるか、少しばかり考えているうちに、南アジアの地域統合の話に行き着いた。いずれ他の文献にあたるつもりだけれど、とりあえず手元にあった文献として、本書を読むことにした。

この本は、執筆者の1人からの献本でいただいた。他の本を読むのに忙しくてついつい後回しにして今日に至っている。皮肉なことに、2012年頃にASEAN統合の関係でいろいろな文献を読んで勉強せざるを得なくなった原因を作った張本人が、本書の1章を書いておられる。ASEANからSAARCに移ってこられたのか、というか、後任の僕に引き継いだ後、立場も変わって今は某国立大学で教えておられるのだけれど。

そういう意味で執筆陣については苦笑するところもあったのだけれど、SAARCの経緯とか日本政府がどうSAARCに関わってきたのかとか、そういう部分はこれを読んで基本的な理解が進んだので良かった。ブータンが批准するのかどうなのかで大論争になっていたBBIN四ヵ国車両相互乗入協定についてはあまり言及がなかったこととか、ドナー主導の域内協力枠組みとしては唯一ともいえるアジア開発銀行(ADB)のSASEC(南アジアサブリージョナル経済協力)への言及もなかったこととか、若干の物足りなさはあったが、出発点としてはちょうどいい勉強ができた。どうせ原稿執筆という段階になったら改めて読み直すんだろうから、今はこの程度での文献紹介にとどめておこう。

ブータンに関する記述はほとんどないから注意が必要。せいぜい、ティンプーのノルジンラム通り沿いの銀行ビルにでかでかとそれとわかる電光掲示板を掲げているSAARC開発基金(SAARC Development Fund)の発足経緯ぐらいが、ブータン絡みでは参考になる記述だと言えるだろう。

ASEAN統合に関しては多くの識者が日本にもいらっしゃるが、南アジア地域統合についてはどうだろうか。なんとなくの印象は、ASEANをやっていた人たちがそこからSAARCに流れてこられているような気がするのだが。純粋なSAARCウォッチャーっているのだろうか。

先週末、日本南アジア学会の全国大会に顔を出したが、「南アジア地域統合」をテーマにした発表は1つもなかった。ついでに言っちゃえば、元ブータン駐在経験者としては、隣のインド・アッサム州など北東州が経済発展してくれれば、そのおこぼれがブータン東部にも行くんじゃないかというトリックルダウンを期待しちゃうんだけれど、インド北東州の経済発展をテーマにした発表もなかった。

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