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『死ぬこと以外かすり傷』 [読書日記]

死ぬこと以外かすり傷

死ぬこと以外かすり傷

  • 作者: 箕輪 厚介
  • 出版社/メーカー: マガジンハウス
  • 発売日: 2018/08/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
予約開始即、Amazonベストセラー総合1位!超速の12万部突破!「スッキリ」(日本テレビ系列)、「サンデージャポン」(TBS系)等TVで紹介されて話題沸騰!!「2019 若い人に贈る読書のすすめ」(全24冊/公益財団法人 読書推進協議会 選)選定図書!
NewsPicks Book編集長 箕輪厚介の初の著書。ベストセラー連発! わずか1年で100万部突破!天才編集者の革命的仕事術がここに明かされる!堀江貴文『多動力』、落合陽一『日本再興戦略』、佐藤航陽『お金2.0』、前田裕二『人生の勝算』など、最前線で戦う起業家の著書を次々にベストセラーにしてきたその「剛腕」の秘密。
幻冬舎に身を置きながらも月給の20倍もの収益を副業で稼ぎだす方法。オンラインサロン「箕輪編集室」を主宰し、1300名を集め、さまざまなイベントやプロモーションで「熱狂」を生み出していく手法。本書では新時代の哲学を体現する箕輪氏の「働き方」を、32の項目として立てて紹介する。

去年の今頃出た本で、なんだかすごく売れたという印象だけが当時はあった。そのタイトルだけを見て、世界中バックパッカーとして旅して、紛争地でも死にかけるような体験をして、時にはスラムで雑魚寝して、時にはこっぴどい下痢にやられて動けなくなり、そして時にはデングかマラリアにやられて生死の淵をさまよったり…そんな経験でもされた人の本なんだろうなと勝手に想像していた。

そんな本が近所のコミセンの図書室にあったので、これも何かの縁かなと思って借りてみることにした。あらら、著者はあの見城徹率いる幻冬舎の編集者なんだ。それじゃあハチャメチャ冒険野郎の本じゃないな。読み始めたら、海外で冒険はしてないけど、国内でやられていることはハチャメチャであった。タイトルだけ見て僕は誤解していたわけだけど、本書を読んでも、著者の言う「死ぬこと」の定義が何なのかは出てこない。それを言うなら著者の経験の何をもって「死ぬこと」と「かすり傷」の境界をさまよったといえるのかも書かれていない。タイトルの付け方で本の売れ方は変わるといわれるので、このタイトルに釣られて手に取ってしまった僕は、著者のまいた餌にまんまと引っかかったというわけだ。

まあ内容はというと、56歳で管理職も卒業しちゃったオジサンには、何歳になっても見習うべきことと、オジサンなんだから見習うべきでないこととを峻別して考えていく必要があると強く感じた。

先ず、見習うべきことについて述べる。彼は幻冬舎の敏腕編集者としてよりも副業の方で数倍のカネを稼いでいるが、幻冬舎は辞めないと明言している。幻冬舎の編集者でいることによるメリットも感じているからこその考え方だ。実は僕が勤めている会社を辞めると言い出した時、仕事を通じて知り合って10年ぐらい一緒に仕事している知人から、今の会社に居残るメリットについて説かれた。彼自身も所属する会社を飛び出して自分の持ち時間を全て自分のやりたいことに費やしたら、もっと大きな仕事ができるに違いない奴なのに、会社には属している。慰留されたことは最初は腑に落ちなかったのだけれど、本書を読んでいたら、彼が何を言いたかったのかがようやく理解できた気がした。

副業で本業の5倍もの収入を得ることは誰でもできるわけではないが、稼げるなら稼いでいいんだというのが1つの悟りであった。僕が辞めると言い出したので、今週は会社の人事部から呼び出しがかかった。対面で人事の担当者と話してみてわかったのは、人事は僕らの進路希望調書なんてろくに読んでいないということと、希望の部署に行けている奴と僕のように希望もしてなかった部署に二度も三度もやられる奴の違いは、人事に対して直接的な猟官運動をやっているかどうかの違いだったのだということであった。暗に、「Sanchaiは人事へのアピールが足りない」と言われたような気がした。そしてもう1つ言われたのは、勤務時間外での副業について、会社の不利益にならないことならどんどんやって下さいということだった。

―――そうなんだ。じゃあ少なくとも勤務時間外の自分の時間の使い方はもうちょっと見直さないとね。

一方で、著者の主張にどうしてもついていけないところもあった。若気の至りとして許されることも、50を過ぎたオッサンには許されなかったりする。オジサンは静かに若い人たちがやろうとすることを見守るから、どうぞガンガンやってってよと、自分側と彼ら側を分けて見ているところもあった。なんだかんだ言ったって残り時間を考えたら、20代や30代の人たちと同じことは僕らにはできない。未来を創っていくのは彼らなんだから、僕らは彼らと同じことを志向するのではなく、彼らがやろうとすることを温かく見守りたいという気持ちの方が強い。

僕は彼らがSDGsとかにもっと関わってくれたら、SDGsの認知度がたったの16%という、世界的にも低水準な今の日本の状況を変えていく大きな推進力になっていくだろうと思うが、SDGsがオジサンやオバサンの世代が作った価値観だと思われてしまったら、彼のような人には全く響かないだろうなぁ。彼のような価値観の人が若い世代に増殖したら、宴会やったら飲んだくれてゲロ吐いて会費払わずに寝こけてしまう人ばかりになってしまうし、良質の作品を上映する映画館は小便で臭くなってしまうだろう(笑)。

こういう威勢のいい若い人が書いた本を、通勤帰りのカフェで読み切った後、自宅に戻って夜のテレビのニュースを見たら、安倍総理の国会での所信表明演説と、野党党首へのインタビュー、それに関西電力の幹部の記者会見が報じられていた。どの顔も50代から70代のオジサンやオジイサンで占められ、そのギャップがすごかった。世の中の若者が皆、箕輪厚介のような奴になってしまったらそれはそれで怖いが(笑)、そういう、活字メディアやソーシャルメディア上で起こっていることと、テレビメディアで報じられる世の中を動かしている人々の顔ぶれとの違いを見てしまうと、分別のいい大人は、破天荒な若者たちがやろうとすることを封じ込めたりせず、その活力をいい形で引き出してあげられるようなポジショニングを取りたいものだと思う。

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