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ビジネス環境は良くなってないのか? [ブータン]

ビジネス環境評価で81位にランクダウン
Bhutan drops to 81st position in ease of doing business
Kuensel、2018年11月3日、Tshering Dorji記者
http://www.kuenselonline.com/bhutan-drops-to-81st-position-in-ease-of-doing-business/

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【ポイント】
世界銀行が毎年この時期に公表するビジネス環境評価『Doing Business』の2019年度版で、ブータンは前年の73位からランクを落とし、81位と位置付けられた。前政権はこのランクを上位50位以内に引き上げることを目標に掲げていたが、これが実現できなかった格好になる。2018年度版ランクでは、ブータンは南アジアで最上位の評価を受けていたが、2019年度版ではこれをインドに譲り(77位)、2位に甘んじる結果に。

Doing Businessには10の評価指標があるが、「納税」「越境貿易」「契約履行」の3指標については、ブータンのランクは比較的高い。一方で、「財産登記」(54位)には3つの手順を踏んで77日要する。「電気敷設」(73位)は、4つの手順で61日を要する上に、電力供給の安定度と料金体系の透明性について8段階評価で4にとどまる。「与信」(85位)は、信用情報センターのカバー率が35.9%にとどまることによるもの。「建設許可取得」(88位)については、21の手続を踏むのに150日を要することが反映されている。「新規事業設立」(91位)は、起業に至るまでに8つの手続を経て12日かかることが評価された結果。

「小株主保護」(125位)、「事業清算」(168位)は、前例がないことで評価困難として低評価につながっている。

Doing Businessは、多くの国が自国の規制枠組みの有効性について客観的な評価を確認するのに用いられているが、世銀が述べるように、ビジネス環境に影響を与える要素、政策・制度をすべて盛り込んだ評価とはなっていない点には注意が必要。マクロ経済の安定性や金融制度の発展度、市場規模、不正腐敗の頻度、労働力の質等はカバーしていない。

◇◇◇◇

ランクコンシャスなブータン。国際比較の結果が出ると、やれブータンは何位だ、前年より上がったのか下がったのか、南アジアの域内では何位なのか等等、長々とした記事が報じられる。10月、11月といったら、世界銀行は年次総会の季節だから、ここを狙っていろいろな報告書が公表される。Doing Business調査報告書が公表されるのも、このタイミングである。

2019年度版というのは2018年時点での評価ということになるわけだが、多分評価方法に変更があったのではないかと思われる2013年から2014年にかけて一気に70位にまで上がったブータンのビジネス環境評価は、その後徐々にランクを下げ、とうとう81位にまで落ちた。前政権はこのランクを50位以内にするというのが公約となっていたが、選挙結果が出た後にこの結果が公表されたのはとんだ皮肉だ。

記事は長々と各指標のランクがどうだったのかを分析しているが、正直なところ、前回から今回にかけて、全体のランクが6位も下がる原因になったのが何だったのか、どの部分の努力が他国に比べて不足していると評価されたのかという、肝心の核心部分に関する記述が見当たらないのが残念だ。そもそもめちゃめちゃランクが低い2つの指標については、前回も同様に低かった筈で、むしろ他の指標での取組み度合いで他国に劣ったところがあったに違いない。それが何なのかがこの記事からはわからない。

ランクコンシャスなのはいいことだとしても、あまりこのランクの変動に一喜一憂してもしょうがないのではないかとも思う。ブータンのビジネス環境が悪化したわけではなく、改善の度合いが他国よりもちょっと良くなかったというだけのことだろう。実感としては、政府は投資環境整備に関して、やれることはやってきていると思う。悪化したわけではなく、前政権与党が公約未達成だったと非難する材料にしてもしょうがない。

一方で、この記事の良いところは、Doing Business調査というので高評価を得たからといって、その国でのビジネスがやりやすいかどうかはわからないと述べ、その包括性に関する課題にも言及している点である。この評価は政策や制度は見ているけれど、そこで一緒に仕事をする相手の人についての評価指標を持っていない。例えば、質の高い労働力の確保の難易度でいえば、ブータンはあまり良い評価は得られないだろう。僕はこの記事を読みながら、これだけじゃ測れないだろうなと感じていたが、最後の最後に、この指標セットの制約について記事で言及された点には安心した。

この数カ月の間に、僕は某若手企業家にハシゴを外されるという苦い経験をした。日本のこのメーカーの技術がブータンには必要だから、是非紹介して欲しいと頼まれ、つてをたどって何とかそのメーカーの方との接点を持った。そこで、先方から、自社の技術はブータンで言われているような目的で開発したものではないのでということで、ブータンの状況に関して2、3の質問をされた。ラブコールは受けたものの、ブータンの投資環境を知らない企業側からすれば当然の反応だ。しかし、その質問をブータン側の若手企業家に伝えたところ、「それなら今回は縁がなかったということで。また次回ヨロシク」とあっさり白旗を上げられてしまった。仲介した俺はどうなるんだ!こんなんで「次回」なんてあるわけね~だろ。彼は、政府やUNDPがやたらと褒めそやし、メディアでも度々取り上げられて世間の注目を集める新進の起業家である。その人物をもってしてこれでは、頼まれても安易に日本企業につなげないではないかとなる。結局そのメーカーの担当者とのやり取りは、今も僕が背負ってやっている。

この一件では、僕は、頼まれて安易に引き受けてしまった自分に大きな責任があると猛省した。以後、これに近いようなケースでは、依頼者の本気度を試すためにもいくつか質問をするようにしている。依頼者が何をやりたいのか自分自身が十分に理解するまでは、何度でも質問をするつもりである。そうすると回答して来なくなる人も実際にいる。「Sanchaiは全然わかってない。あいつに頼んでも無駄だから自分たちでやってやる」となってくれたらそれはそれでいい。

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