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増える車をどうする? [ブータン]

是正措置導入にも関わらず、車両は増加
Vehicle number grows despite fiscal and monetary measures
Kuensel、2018年7月21日、Tshering Dorji記者
http://www.kuenselonline.com/vehicle-number-grows-despite-fiscal-and-monetary-measures/
2018-7-21 Kuensel01.jpg
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ブータンを走る車の台数については、これまでも時々話題として取り上げてきたが、長期的なトレンドを知るには良いグラフが記事に挿入されていたので、このグラフを見るだけでも一目瞭然、多言を要しないだろうと思う。僕が初めてブータンを訪れたのは2007年だから、当時は3万5,704台。今は9万6,307台だから、なんと10年間で6万台増えている。均すと年間6,000台となるが、実はそうではない。2013年の経済危機の前後は、そんなに輸入が増えていないが、2014年から2015年にかけて増勢に加速がかかり、5,588台(2014⇒05)、9,107台(2015⇒06)、7,711台(2016⇒07)と増えている。2018年は最初の半年で4,300台増えたから、年間を通じてだと8,000台ぐらいにはいくだろう。

今の政権は、2013年の経済危機をボトムにして、その後の経済成長率の底上げができたというのを売りにしている。でも、その間に車の台数も急増させた。記事によると、財政措置として、課税ポイントを車両の輸入時から国内での車両の販売時に切り替えて納税者に税負担を意識させる政策を取ったり、金融政策として、自動車ローン申請の際にディーラーから車の販売価格の費用構成の情報を提出させたりしているという。これが無秩序な車の増加に歯止めをかけられるのかどうかはよくわからない。特に金融政策の方は、意図している政策目標が車両の台数の抑制ではないように思える。一方で、記事によると、バスなど大量輸送に資する車両の台数はさほど増えていないそうだ。

マイカーから公共交通へのモーダルシフトはうまく行っていないようだ。ティンプーに暮らしていても、そういう政策誘導を政府が行っているとはとても感じられない。本当に車の急増をコントロールしたいのであれば、ガソリンを値上げして、車を所有することが割に合わないようにしてしまえばいい。でも、政府はそれもやっていない。ややもすると、ガソリン価格を据置きないし値下げすることを以って、現政権の成果だと訴える。国道の拡幅工事やバイパス道路の建設等で、道路網の整備は進んだ。これも政権の成果として取り上げられるが、移動がしやすくなれば、車を持ちたいという気持ちになるのは当たり前だ。道路網の整備が良くないというつもりはないが、車の所有をある程度コントロールするための政策も別途必要だったのではないかということである。

もう1つ気になるのは、今は車両登録台数の増加ばかりに目が行っているが、10年先にはどうなっているのかという点の考察が記事にはないことである。どんな新車も、10年も乗り続ければかなりボロが来る。小国だから、10年乗ったからといって10万キロにも行かないだろうが、それでも買い替えが進んでいくと、古い車の処分はどうするのだろうか。そこがあまり考えられていないような気がしてならない。鉄(スクラップ)リサイクルは、今のブータンには存在しない業種だが、いずれこの廃車車両を鉄資源として再利用するような仕組みをこの国は作らなければならないのではないかと思う。

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