SSブログ

『読んだら忘れない読書術』 [仕事の小ネタ]

読んだら忘れない読書術

読んだら忘れない読書術

  • 作者: 樺沢紫苑
  • 出版社/メーカー: サンマーク出版
  • 発売日: 2015/04/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容(「BOOK」データベースより)
こうすれば、記憶に残すことができる! 毎月30冊の読書をこなし、毎日40万人に情報発信!異色の精神科医が教える、脳科学に裏付けられた、本当に役立つ読書とは?

年の初めは自分のワークスタイルやライフスタイルを見直す良い機会だろうと思い、こんな本も読んでみた。いつかは忘れたが昨年キンドルで購入し、そのまま積読状態にしていたもので、著者に言わせると、購入して即読まないと記憶に定着させることが難しくなるという点では、僕のやったことは落第点だなと苦笑いさせられる。

当然、僕がこんな本を買った理由は、読んだ本で書かれていることを容易に忘れてしまうというのを何とかしたいという思いがあった。もっと言えば、僕のまわりには、「かの偉大な哲学者の〇〇は、著書〇〇の中で、『~~~』だと言っている」というような引用をごく普通にするような人がいるが、僕にはそれができない。その本を読んでないわけではないが、そういう、気の利いた引用をうまく自分の論点をサポートする材料として話の中に挿入するテクニックが僕にはないのである。本を読んでないわけでもないが、誰もが知っている有名な著者の本ばかりを読んでいるわけでもない。仮に僕が「かの有名な精神科医の樺沢紫苑が、『読んだら忘れない読書術』の中でこう言っている・・・」と始めたところで、聴いている人々は、「樺沢紫苑て誰?」というところで立ち往生してしまうだろう(笑)。

そんなことを考えながら読み始めたわけだが、結論から言うと、自分が探していた答えは見つからなかった。「速読よりも深読」、「深く記憶に残すマーカー読書術」、「気付きを人と共有するソーシャル読書術」といった流れは、まさに僕が今も実践していることである。僕はそんなに多読じゃないし、1冊読んでいる間に心に響いたフレーズは10カ所程度は線を引くし、それを先ずはSNS読書メーターで最大255文字の感想として書き、それをベースにして次はブログで長めの読書ノートを書いている。確かに、「1週間に3回アウトプット」等、厳密に言うと著者の提言を忠実に守っているわけじゃないが、著者の定義する「アウトプット」の中にはマーカーで線を引きながら読むというのも含まれているらしいので、それを1回とカウントすれば、僕のやっていることは著者の推奨されていることと割と近い。

それでも、気の利いた引用ができないんだよな~。


ケチをつけるわけじゃなく、この本は読書の重要性を再認識するには非常に有用な本であることには間違いない。キーワードは「アウトプット」と「スキマ時間」であり、アウトプットを意識すればインプットの必要性も強く認識されると思うし、「スキマ時間」という言葉で示すところは、電車の待ち時間や通勤時間にスマホいじりするのはやめて、本を読むのに集中すべきだと述べている。この論点、2日前にご紹介した『仕事が速い人は「見えないところ」で何をしているのか?』でも、まさに「スキマ時間」という言葉とともに出てきた。ただ、本日ご紹介の本の中では、スキマ時間の有効活用は忙しい管理職の時間管理の観点からではなく、5分、15分という人間の集中力が維持できる時間の中で読書することで、漫然と読書しているよりも書かれている内容を記憶に留めやすい、という観点から書かれている。

一方で、この読書法には限界もあることには注意が必要である。

第1に、本書では小説を読むことへの言及が極めて少ない。著者自身の仕事に役立つ関連書籍を多読するのには向いているものの、小説に関してはスキマ時間もクソもなくて、面白ければ他のことはそっちのけで時間が経つのも忘れて読みふけるというのが普通だろう。本書で小説が出てくる文脈は、読むときのワクワク感が脳内物質の分泌を促進し、それが記憶を効率的なものにできるという点ぐらいで、それだったら小説は何でも記憶には残ることになってしまう。もっとも、小説を読むのは記憶に留めたいからではなく、その時々にちょっとした感動を味わいたいからなので、そもそも読書の目的が違うから本書で捨象されるのは致し方ないところかもしれないが。

第2に、本書は基本的に本を購入することを前提で書かれている。本を購入するのが予算的にバカにならないという点から、電子書籍も推奨しているが、いずれにしても自分に役に立つと思ったものはカネを払って買えというスタンスで書かれているのである。だから、紙面をマーカーやメモで覆い尽くして汚くしても可ということになるのだが、そうすると自ずと図書館の利活用という点への配慮が一切なくなる。本書には「図書館」という言葉が全く出てこない。本当に読みたい本がアマゾンや書店で入手できるものならいいが、参考文献リストを元にさかのぼっていくと、読みたい次の本が絶版になっていて、図書館の蔵書でぐらいしか読めないという事態にも直面しやすい。著者が読んでいるジャンルの本であれば著者の推奨する読書法でいいと思うが、図書館で借りた本を読む場合にまで適用可能だとは思わない。

第3に、電子書籍の推奨は結構なことだと思うし、そのメリットを列挙されているが、僕が常々感じている電子書籍の問題点―――専門書を電子書籍で読んだ時、そこから自分の書いている論文やブログ等で引用しようとする場合、引用箇所をどう表示したらいいか(「〇〇ページ」と記述できない)―――というところに、本書は答えてくれていない。少なくとも本書で電子書籍を推奨している章は、「記憶術」とは異なる文脈で書かれているので、ごく当たり前の電子書籍の長所と短所が挙げられるにとどまっている。僕も気付いていないような発見があると嬉しかったのだが、そこまでの期待には本書は応えられていない。

結局のところ、本に書かれた内容を効果的に記憶に留めるのに、僕の取り入れている実践があながち間違いではなかったのが確認できたという点で、本書は読む価値はあったかなとは思う。勿論、本書で書かれている小技の中には、なるほどと首肯させられるものも幾つかあった。例えば、僕は就寝前にキンドルで読書したりしていることもよくあったが、電子書籍をベッドで読むのはやめた方が良いというのが著者の論点で、その理由も納得いくものだったので、さっそくやめてみることにした。


nice!(4)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0