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トブゲイ首相、ドイツ・サステナビリティ賞を受賞 [ブータン]

首相、ドイツ・サステナビリティ賞を受賞
PM honorary laureate for German Sustainability Award
Kuensel、2016年11月26日、Rinzin Wangchuk記者(デュッセルドルフ)
http://www.kuenselonline.com/pm-honorary-laureate-for-german-sustainability-award/

【ポイント】
ツェリン・トブゲイ首相は、ブータンにおけるサステナビリティの普及への多大なる貢献が評価され、2016年のドイツ・サステナビリティ賞(GSA)を授与された。25日夜、デュッセルドルフのドイツ・サステナビリティ賞財団主催の表彰式に出席した首相は、受賞スピーチの中で、この受賞は個人のものではなく、第四代国王の類まれなるリーダーシップによるものだと強調。第四代国王はわずか17歳で即位してすぐにブータンの環境保護・保全を国のプライオリティとするビジョンを打ち出した。これはサステナビリティや環境問題がグローバルな課題として強調されるようになるよりずっと前の話である。

また首相は、長年にわたるブータンの伝統的な風習や自然との平和的な共存に対する精神的な信仰、ブータンと世界の環境の保護に対する長期にわたるコミットメントが、ブータン全国でのエコシステム維持努力の成功をもたらしているとも強調。気候変動とそれが経済にもたらす深刻なリスクにも言及し、それでもブータンが二酸化炭素を排出しないという勇気あるコミットメントを無条件に自らに課しており、世界中のリーダーをより真剣に気候変動への取組みに向けることを望むと述べた。

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人と野生動物の利害対立という課題への取組みも含めたブータンの環境政策のインパクトを問うたクエンセル記者の質問に対して、首相はサステナビリティとはバランスに関するものだとし、そのバランスを崩して人々の農村生活を耐えられないものにすることはできないと主張、政府としてこの問題を真剣に捉えており、目下のところ、電気柵が最も強力かつ有効な手段であると述べた。

2016年のGSA受賞者は、他に潘基文・元国連事務総長、シャルル・アズナヴール(仏シンガーソングライター兼女優)、ニコラス・ケイジ。過去の受賞者には、スウェーデンのシルヴィア王女、英チャールズ皇太子、ノルウェーのグロ・ハーレ・ム・ブルントラント元首相、ホルスト・ケーラー元ドイツ大統領、アントニオ・グテーレス元ポルトガル首相兼現国連事務総長等が名を連ねている。

GSAは2008年に制定され、持続可能な生態系や社会の実現に向けた取組みを官民の意思決定者の間で提唱するために、政治的リーダーやセレブ、都市や自治体、主要グローバル企業等が受賞対象となっている。GSA表彰式は同種のイベントとしてはヨーロッパ最大規模で、毎年2000人以上が参加する。

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ドイツって持続可能な開発への取組みに関してはSDGs制定以前からかなりの取組みが既に始まっていて、多分このGSAというのも、ドイツ政府が持続可能な開発に向けた国家戦略を制定したのを受けて創設されたものだと思う。クエンセルの記事はこれだけの内容だが、首相のFacebookページを読むと、他にも重要なことを言っている。

例えば、持続可能な開発に対するブータンのアプローチを説明するのに、首相は、「ブータンのアプローチはユニークで、環境面の持続可能性が経済の持続可能性をリードするというもので、そこから得られた収益が社会の持続可能性の実現も可能にする」と述べている。そして、こうした好循環は当たり前のようにあるものではなく、政治の持続可能性がないと実現困難であるとも指摘、そこで第四代国王が憲法制定によって政治の持続可能性を確実なものにしようと試みた先見性を高らかに歌い上げている。

また、首相は、外国の人々がブータンが「地球上にある最後の桃源郷」だという誤った認識を持ち続ける一方でブータン農村が直面する課題にも言及し、ブータンの持続可能な開発へのアプローチが成功してきたがゆえに起きてきている問題として、人と野生動物の利害対立を挙げているのである。

最後に首相は次の2点を述べて受賞スピーチを締めくくっている。
1.もし16歳のティーンエイジャーが、サステナビリティに対して忠実であることによって、小さな貧しい国とその開発を今日ある状況に導くことができるのなら、もっと大きくて開発が進んだ国が世界の未来のために何ができるのか、想像することも可能ではないか?

2.もし16歳の国王が再生可能エネルギーをより持続可能な形で取り入れることができるのなら、多国籍企業がはるかに進んだテクノロジーをもって、私たちのため、世界のため、そして私たちの将来の世代のために、何ができるのかを想像することも可能なのではないか。
さすがは首相、「自分たちは小国なのにちゃんとやっている、あなたたちはどうなのだ」と訴えている。

なお、授賞式後、首相は一路シンガポールに飛び、27日には、スカイ・アーバン・ソリューション社の都市型野菜生産農場(高層ビル内にある)、グーグルのアジア太平洋ビジネスオペレーションセンター等を視察した後、シンガポール在住のブータン人留学生との交流も行っている。28日はシンガポール観光局を訪ね、さらにWWF主催の環境保護イベントなどに参加している。

国会会期中の週末を使って、首相はこれだけのことをこなされている。ここ1カ月ほどの超過密日程で疲弊してしまい、先週末をぐうたらで過ごしたどこかのオッサンとはエライ違い。首相動静をチェックするだけでも、自分のだらしなさ、ふがいなさを痛感させられる。

ついでに言うと、トブゲイ首相のドイツ・サステナビリティ賞受賞の報は、28日付クエンセルの1面でも大きく取り上げられている。この記事は上で書いてきたこととかなりの部分でダブっているので、ここでは詳述しない。

「サステナビリティの究極の姿がGNH」―首相語る
The ultimate expression of sustainability is GNH: PM
Kuensel、2016年11月28日、Rinzin Wangchuk記者(デュッセルドルフ)
http://www.kuenselonline.com/the-ultimate-expression-of-sustainability-is-gnh-pm/
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