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インド高額紙幣廃止の影響 [ブータン]

2016-11-18 Rupee.jpg

11月9日、米国大統領選の結果以上に僕らを慌てさせたのは、前夜インドのモディ首相が突然打ち出した現行1000ルピー、500ルピー紙幣廃止の報だった。青天の霹靂、まさに不意打ちである。9日早朝、このニュースに気付いた僕は、慌てて自分の持っているルピー紙幣の残高を確認した。1000ルピー、500ルピー紙幣を合計すると、ちょうど6000ルピーあった。

どうしようかと途方に暮れた。これだけのためにわざわざインドまで行くわけにもいかない。どうせ無価値なんだから、封筒に入れてインドの知り合いのNGOに送っちゃおうか・・・。などといろいろ対策を思い巡らせていたが、よくよく考えたらブータンのニュルタムはインド・ルピーにペッグしている。9年前にインドからブータンに出張で来た時、旅費を100ルピー紙幣で持ち込んでスーツケースが非常に重くなった。当時のブータンでは500ルピー以上の紙幣の流通は認められていなかったが、今はティンプー市内でも時折高額のルピー紙幣を見かけるようになった。

王立通貨庁(RMA、中央銀行に相当)は、9日午後、インドの高額紙幣は国内の銀行に持ち込めばその人が持つニュルタム口座に入金するという声明を出した。僕自身はこちらの銀行にニュルタム建ての口座を持っていないので、僕自身が直接それをやることはできないが、取りあえず職場の誰かに頼んで、その同僚の預金口座に入れてもらうということで話を付けた。個人的にはこれで一件落着。

それで、ブータン国内でどれくらいのルピーが預金口座に入ったのだろうか―――。これに関する記事が、18日付クエンセルに掲載されていたので紹介しておく。

15日までに8億2700万ルピーが集まる
INR 827M deposited as of Nov 15
Kuensel、2016年11月18日、Tshering Dorji記者
http://www.kuenselonline.com/inr-827m-deposited-as-of-nov-15/
RMAの発表によれば、15日までに市中銀行に持ち込まれたインド高額紙幣は、総額で8億2700万ルピーに達した。これらは預金客のニュルタム口座に入金されるとともに、集まったルピー紙幣はRMAがインド準備銀行(RBI)に送付し、新しい2000ルピー紙幣を受け取ることになっている。RMA総裁によれば、この状況は警戒を要するものではない。RMAのインドルピー建て外貨準備高は280億ルピーにのぼり、うちわずか1%に相当する16億2200万ルピーが現金での保有となっている。

一方で、ブータンに入国してきたインド人が新2000ルピー紙幣を持ち込み始めており、銀行でも新紙幣を受け取ってもよいかどうかの照会がRMAになされているという。RMAはRBIに対して受入れ開始の可否を現在照会中だが、総裁によれば大きな問題はないと見ている。

インド国内での新紙幣の流通量が不足している現状、ブータンと国境を接するインド側の都市では、ニュルタムが取引通貨として一時的に利用されるという状況が報告されている。また、インドの一部メディアはインドの巨額のブラックマネーがブータンに持ち込まれる可能性を指摘しているが、国内銀行への持ち込みに際しては預金者の身元確認を必ず行っており、ブラックマネーの捕捉に難しい点はないとの由。

旧紙幣の銀行持ち込みは、11月30日まで続けられる予定。

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一方で、翌日にはこんな記事が出ていた。僕はこの影響もあって、職場の同僚に託したルピー紙幣と同額分のニュルタムを受け取ることができない状況にある。

RMA、ニュルタム現金の引き出しを凍結
RMA freezes Ngultrum withdrawals for demonetised INR notes
Kuensel、2016年11月19日
http://www.kuenselonline.com/rma-freezes-ngultrum-withdrawals-for-demonetised-inr-notes/
RMAは18日、全ての市中銀行に対し、廃止されたインド高額紙幣の入金と引き換えにニュルタム現金を引き出すことは、追って通達があるまで当面の間凍結するよう通達を出した。ルピー現金の受取り自体は引き続き行ってもよいことになっている。

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さて、本当にRMA総裁が言うように影響は大したことないといえるのかというと、どうもそうでもないようだ。

高額紙幣廃止の影響、輸出で深刻
Exports hit by demonitisation
Kuensel、2016年11月18日、Rajesh Rai記者(プンツォリン)
http://www.kuenselonline.com/exports-hit-by-demonitisation/
国境の町プンツォリンでは、カルダモンやジャガイモの売上げが激減し、農家や輸出業者に深刻な影響を与えている。インド側の輸入取引業者が支払い用の新紙幣を入手するのが難しいからである。銀行ATMでは1日2500ルピーまでしか引き出しが認められておらず、ほとんどの取引が現金で行われる農産品貿易には不十分である。

カルダモンの価格は18日時点でキロ700ニュルタムという最安値を付けている。また、プンツォリンにあるブータン食料公社(FCBL)のセリ市場では、袋詰めされたジャガイモがトラック100台分も荷卸しされない状態で待機を強いられている。中には1週間以上荷卸しできずに待機中の農家もいる。

新紙幣が入手困難であることから、一部には今も、違法と知りながらも旧紙幣がインド人輸入商から持ち込まれ、ブータン側取引業者が取引に応じているというケースもあるようである。


タグ:インド
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