『ブータンの染と織』 [ブータン]
この一時帰国の期間中、機会あってブータンの繊維業に関して日本語で書かれた書籍に目を通した。これにはいろいろ事情がある。ブータンで手に入れた、民族衣装の生地を使った手工芸品をお土産として持ち帰り、昔から付き合いのある10代、20代の女性向けアパレル製品カタログ通販会社の方に見てもらうという機会があったので、ひょっとしたら生地についての説明が必要かもと思ったというのが最大の理由である。もう1つ、僕の古くからの読者の方はご存知かもしれないが、僕は一時期インドのシルク産業について相当調べたことがあり、また以前読んだ西岡京治・西岡里子著『ブータン神秘の王国』の中にブータンの養蚕に関する記述を発見してから、機会があれば今ブータン東部の養蚕ってどうなってるのか見てみたいと思ってきたからだった。
ただ、ブータンに来てから、今では東部の野蚕飼養は壊滅状態だと聞かされて、ちょっとがっかりしていた。本書でもその点については書かれている。野蚕飼養は家蚕に比べてさらに手間がかかる。さらに繭ができても、糸がごわごわで繰糸にはかなりの力が必要とされる。若者がその地域に少なくなり始めたら、最初に立ち行かなくなるのが野蚕シルクなのである。それにすぐ隣りにはエリ・シルクで有名なインド・アッサム州が控えている。競争にさらされたらブータン産シルクは太刀打ちできないだろう。なんとなく予想はしていたことだとはいえ、ちょっと残念だ。
一方で、僕がブータンにいる間に是非産地を見てみたいと思っているのは、ペマガツェルやサムドゥップジョンカルの綿花栽培である。日本だって、昔は高級衣料は絹、庶民衣料は麻だったのが、戦国時代以降木綿が導入されるようになって、綿花栽培が全国各地で普及した。お隣りのインドの州では綿花栽培はあまり行われていないと思うので、綿花栽培だったらちょっとは見込みあるかなと思うのである。ましてや、ペマガツェルではオーガニックコットン栽培が行われているというのだから…。
いずれにしても、本日ご紹介した本で書かれた情報をベースラインにしつつ、自分なりに少しばかり調べてみたいと思うのである。ついでに言えば、民族衣装の生地を使った手工芸品が、日本のカタログ通販のルートで売られたらいいなぁと思ったりもするのだが、素人目に見ても日本の消費者の求めるクオリティにはまったく到達していないので、時間かかるだろうな。
さて、綿花といえば、11月19日付のクエンセルに、新型繰糸機の記事が出ていた。
新型繰糸機の開発
A new spinning equipment
Kuensel、2016年11月19日、Thinley Zangmo記者
http://www.kuenselonline.com/a-new-spinning-equipment/
【ポイント】
糸車を手で回して糸をつむぐ作業に代わり、電気とモーターにより糸をつむぐ繰糸機が間もなく利用可能になる。18日、トブゲイ首相が内発工芸品振興機構(APIC)において繰糸器のお披露目を行った。
APICの組織目的は地方の職人の支援であり、こうした機械式繰糸機を提供することで、その使命を果たすことにつながるという。この試作繰糸機の製作費は17,700ニュルタム。需要が高まればコストダウンが見込まれる。第1号機に加え、さらに1、2台の繰糸機を今年末までにサムドゥップジョンカル県シンカラウリ村のイラクサ繰糸業者や綿花栽培農家に配置する予定。
APICはこの繰糸機のアイデアを今年10月にインド・アーメダバードにある国立デザイン研究所(NID)を訪ねた際に閃いたという。
実を言うと、僕はこの自動繰糸機の現物を見ている。今月初旬にAPICを訪れる機会があり、ラム・ケサン・チョペルCEOからご紹介いただいたのである。繰糸スピードの操作は「弱-中-強」の三段階。この機械のすぐそばには、電気扇風機が置いてあった。つまり、このスピード操作の機能は扇風機から移設されたものなのである。これでイラクサから木綿までをつむぐというわけだが、試作品としてはこのレベルでいいかもしれないが、スピード調節の加減をもう少しきめ細かくしていくことがいずれ求められてくることと思う。インド南部の製糸工場を見てきた経験者の目からすると、レベルの違いは一目瞭然だが、今のブータンではこのレベルでも適正と考えられているのだろう。また、わずか1カ月前にインドでインスパイアされてすぐに試作機が出来上がってしまうというスピード感にも戸惑う。今まで誰も気が付かなかったというのが不思議でならなかったりもする。
実際に繰糸作業がどのように手作業で行われているのか、現時点では見ていないのでこれ以上のコメントはしづらいが、今や地方電化率も98%に達しようというこの国で、電力を使えば地方でこんなこともできるようになるという典型的なお話であるようにも思える。ファブラボが近くにあったら、こんな機械も現地製作ができちゃう可能性もあるのだが。
いずれにしても、今月に入ってから身の回りで起きた様々な出来事を振り返るにつれて、早くペマガツェルやサムドゥップジョンカルの綿花栽培地を訪問してみたいと思わずにはいられない。
ただ、ブータンに来てから、今では東部の野蚕飼養は壊滅状態だと聞かされて、ちょっとがっかりしていた。本書でもその点については書かれている。野蚕飼養は家蚕に比べてさらに手間がかかる。さらに繭ができても、糸がごわごわで繰糸にはかなりの力が必要とされる。若者がその地域に少なくなり始めたら、最初に立ち行かなくなるのが野蚕シルクなのである。それにすぐ隣りにはエリ・シルクで有名なインド・アッサム州が控えている。競争にさらされたらブータン産シルクは太刀打ちできないだろう。なんとなく予想はしていたことだとはいえ、ちょっと残念だ。
一方で、僕がブータンにいる間に是非産地を見てみたいと思っているのは、ペマガツェルやサムドゥップジョンカルの綿花栽培である。日本だって、昔は高級衣料は絹、庶民衣料は麻だったのが、戦国時代以降木綿が導入されるようになって、綿花栽培が全国各地で普及した。お隣りのインドの州では綿花栽培はあまり行われていないと思うので、綿花栽培だったらちょっとは見込みあるかなと思うのである。ましてや、ペマガツェルではオーガニックコットン栽培が行われているというのだから…。
いずれにしても、本日ご紹介した本で書かれた情報をベースラインにしつつ、自分なりに少しばかり調べてみたいと思うのである。ついでに言えば、民族衣装の生地を使った手工芸品が、日本のカタログ通販のルートで売られたらいいなぁと思ったりもするのだが、素人目に見ても日本の消費者の求めるクオリティにはまったく到達していないので、時間かかるだろうな。
さて、綿花といえば、11月19日付のクエンセルに、新型繰糸機の記事が出ていた。
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新型繰糸機の開発
A new spinning equipment
Kuensel、2016年11月19日、Thinley Zangmo記者
http://www.kuenselonline.com/a-new-spinning-equipment/
【ポイント】
糸車を手で回して糸をつむぐ作業に代わり、電気とモーターにより糸をつむぐ繰糸機が間もなく利用可能になる。18日、トブゲイ首相が内発工芸品振興機構(APIC)において繰糸器のお披露目を行った。
APICの組織目的は地方の職人の支援であり、こうした機械式繰糸機を提供することで、その使命を果たすことにつながるという。この試作繰糸機の製作費は17,700ニュルタム。需要が高まればコストダウンが見込まれる。第1号機に加え、さらに1、2台の繰糸機を今年末までにサムドゥップジョンカル県シンカラウリ村のイラクサ繰糸業者や綿花栽培農家に配置する予定。
APICはこの繰糸機のアイデアを今年10月にインド・アーメダバードにある国立デザイン研究所(NID)を訪ねた際に閃いたという。
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実を言うと、僕はこの自動繰糸機の現物を見ている。今月初旬にAPICを訪れる機会があり、ラム・ケサン・チョペルCEOからご紹介いただいたのである。繰糸スピードの操作は「弱-中-強」の三段階。この機械のすぐそばには、電気扇風機が置いてあった。つまり、このスピード操作の機能は扇風機から移設されたものなのである。これでイラクサから木綿までをつむぐというわけだが、試作品としてはこのレベルでいいかもしれないが、スピード調節の加減をもう少しきめ細かくしていくことがいずれ求められてくることと思う。インド南部の製糸工場を見てきた経験者の目からすると、レベルの違いは一目瞭然だが、今のブータンではこのレベルでも適正と考えられているのだろう。また、わずか1カ月前にインドでインスパイアされてすぐに試作機が出来上がってしまうというスピード感にも戸惑う。今まで誰も気が付かなかったというのが不思議でならなかったりもする。
実際に繰糸作業がどのように手作業で行われているのか、現時点では見ていないのでこれ以上のコメントはしづらいが、今や地方電化率も98%に達しようというこの国で、電力を使えば地方でこんなこともできるようになるという典型的なお話であるようにも思える。ファブラボが近くにあったら、こんな機械も現地製作ができちゃう可能性もあるのだが。
いずれにしても、今月に入ってから身の回りで起きた様々な出来事を振り返るにつれて、早くペマガツェルやサムドゥップジョンカルの綿花栽培地を訪問してみたいと思わずにはいられない。
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