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『経済は「予想外のつながり」で動く』 [読書日記]

経済は「予想外のつながり」で動く――「ネットワーク理論」で読みとく予測不可能な世界のしくみ

経済は「予想外のつながり」で動く――「ネットワーク理論」で読みとく予測不可能な世界のしくみ

  • 作者: ポール・オームロッド
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2015/09/04
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容(「BOOK」データベースより)
時にあっけにとられるほど弱々しく崩れさり、時に信じられないくらい逞しく危機を乗り越える。予測不可能に陥った経済をもう一度理解するため、異端のエコノミストが新しいモデル「ポジティブ・リンキング」を提唱する。

今からちょうど1年前、小学生の子ども達の間で、お笑い芸人8.6秒バズーカーの「ラッスンゴレライ」が突然大ヒットした。「ラッスンゴレライ」という、わけのわからぬ言葉が子ども達の笑いの琴線に触れたのかもしれないが、その面白さに最初に気付いたクラスの誰かが、学校の教室で「これ面白いぞ」と話題を提供し、それを子ども達が自宅のPCでYouTubeでキーワード検索してみて、その面白さを確認した。そしてそれをさらに各々の両親にも話題提供し、それがさらに広まっていったらしい。同じようなパターンで、去年はエグスプロージョンの「本能寺の変」も突然大ブレークした。

ここでのポイントは、1つは学校の教室というある種クローズドなネットワークの中で最初は広まったこと、もう1つはそれを各自がインターネットで確認して、なるほど面白いと思って今度はその家族に広めたことだろう。要するに、学校の教室というネットワークと、家族というネットワークがそれぞれ別々に存在していたのを、子どもがつなぐ役割を果たしたといういうことだろう。これによって、8.6秒バズーカーにしても、エグスプロージョンにしても、かなり突発的にブームになった印象が強い。

本書を読み始めて真っ先に思い浮かんだのは、このお笑い芸人の一発屋たちのことであった。

さて、本書の紹介に話を戻すと、この本は、僕たちがミクロ経済学を習った時に教わった筈の、「合理的経済人」という前提を突き崩す、ユニークな議論を展開している1冊である。「合理的経済人」の考え方は、人は一人ひとりが他人に左右されることなく常に独立して最も合理的な選択をするというものだ。ところが著者によると、人と人がネットワークとしてつながっていると、人はもう独自に行動しなくなり、社会的集団の構成要素として行動するようになる。模倣、つまり周りの人の行動を見て判断し、真似するようになる。

人間はネットワークでつながった仲間を「合理的に模倣している」と考える方が現実をうまく説明できる、という主張だ。人がブームに流されるケース、暴動や衆愚が生まれるケースというのは、僕達の日常生活を見ていればいくつも挙げられる。なぜそうなるのかを説明しているという点で、本書は面白いと思う。このメカニズムをうまく利用できれば、自分が売りたいものや思想を、効率的に短期間で広めることができる、かもしれない。

惜しむらくはこの本、図書館で借りたもので読了の前に返却期限が来てしまい、後ろに順番待ちの人がいたために、未了の状態で返却を余儀なくされたことだ。幸いKindle版もあるようだから、次の海外駐在生活が落ち着き、もし気が向いたら、もう一度読み直してみたいと思う。

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