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『Common Wealth』(その2) [持続可能な開発]

ブログ開設から10年半になりますが、この記事の掲載で、通算記事掲載数が3000件に達しました。よくやってると思います。その辺の感慨に浸る記事は取りあえず後回しにして、今回は淡々と読書日記をつけます。

地球全体を幸福にする経済学―過密化する世界とグローバル・ゴール

地球全体を幸福にする経済学―過密化する世界とグローバル・ゴール

  • 作者: ジェフリー・サックス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2009/07/24
  • メディア: 単行本
内容説明
 グローバル経済が着実に成長を続ける一方、自然環境の悪化や人口爆発によって、世界はますます過密になっている。このペースを放置すれば、開発途上諸国での水害や病気の蔓延、貧困の激化と政情不安を引き起こし、連鎖的に先進国の社会や経済も深刻なダメージを免れない。私たちにとって21世紀の課題は、それらの危険の有機的なつながりを正しく見定め、持続可能な開発をなしとげ、世界共通の富を保全することである。それは夢のような話ではない。これまでの古い対立構図を捨てて、国際協調のもと、先進国がわずかなコストを振り向けるだけで解決可能なのである。
 開発経済学の第一人者でありコロンビア大学地球研究所、国連ミレニアム・プロジェクトのリーダーを務めるサックスが、いま「なぜ世界全体のことを考えなくてはならないか」を明快な言葉と広範囲にわたる調査や分析に基づいて解説。また、達成すべきグローバル・ゴールとそこに至るステップを具体的に提示する。世界がもっとも注目する経済学者の話題作。
米国コロンビア大学地球研究所のジェフリー・サックス教授が2008年に書いた本の邦訳、長らく箪笥の肥しにしていたが、今月下旬に出かけた海外出張に携行し、なんとか読み切った。購入してから数年経過していて、まとまった休暇や出張があるたびにこれを機会に読もうと思うものの、他の本を先に読んでたら本書にたどり着けず、先送りにして今月に至っていた。それを今ようやく優先度マックスにしてとにかく読もうと考えたのは、7月末に横浜で開催された2日がかりの国際シンポジウムでサックス教授の基調講演を聴いたこともあるが、もっと大きいのは、教授が本書の中で示している「達成すべきグローバル・ゴール」が、9月下旬の国連サミットで、「持続可能な開発目標(SDGs)」として採択される見込みだからでもある。

勿論、SDGsと教授の提唱するゴールは形成過程は異なる。SDGsは政府間交渉を経て合意に至るものだが、その間にサックス教授と彼が議長を務める専門家ネットワークSDSN(Sustainable Development Solution Network)が発信してきたレポート類は数多く、SDSNはSDGsの枠組み形成に相当大きい影響を与えてきた。だから、「持続可能な開発」や「社会・経済・環境のトリプルボトムライン」等、これまでの教授の主張とSDGsは、横断的な原理原則の部分では大きくは違わない。教授がこれからの地球と人類が直面する課題をどのように捉えているのか、SDGsの検討開始以前から教授が述べていた論点に遡って見てみるのもまだまだ賞味期限切れとは思えない。だから今このテーマなのである。

SDGsは僕たちの日本国内での生活自体にも変革を求めるゴールになっている。その目標は2030年。今は未だ日本政府も安保法制で忙しいから後回しにしているが、いずれは日本自身もSDGs達成に向けてどう取り組むのか行動計画の策定が求められる筈だし、SDGsの取組状況は毎年モニタリングされ、国連の場でも報告される。今年までミレニアム開発目標(MDGs)の達成に取り組んできた開発途上国の方が、実は実施体制がある程度出来上がっている。

MDGsが主には途上国での目標達成を目指した国際社会の共通目標だったので先進国に住んでいる僕たちはそれはODAを中心とした開発協力の範疇の話だと考え、一部の関心ある人々が取り組むことで事足りてきた。しかし、SDGsは先進国自身の国内での取組みも求められる。日本の行動計画策定は世界でも最も遅れていて、まだどのような形でこの世界共通の目標の達成に取り組んでいくのかがはっきり見えない。ODAで取り組んでればいいという話でもない。

今回の記事のタイトルの由来であるが、1つは僕が本書を2008年に一度読んでおり、その時に「『Common Wealth』(その1)」としてブログでも紹介記事を書いているからである。その当時は発刊されたばかりの原書をインド・デリーの書店で購入し、当時在籍していた大学院での論文執筆の参考文献として部分読みした。当時はこれからの世界人口の動態をどう捉えたらいいのかを知りたくて、それに関連するチャプターだけを読み、それに基づいてブログ記事を書いた。従って本書全体を紹介するにはバランスを欠いていて、いずれ全文読んで改めて紹介しようと思ってタイトルに「その1」と付けた。

もう1つの理由は、読んでいて思ったのだが、この本は1回で紹介するには内容が豊富過ぎて、今自分が想定しているだけでも3回に分けて紹介した方がいいように感じた。今回はその導入編として本書の今日的意義について触れるが、この後、「概論」「僕達に何ができるか」という内容で、2つの記事を書くつもりでいる。場合によったら、「テクノロジー」という別の記事を立てることもあり得る。

通算3000号を機に、新に「持続可能な開発」というカテゴリーを設けることにした。今回はその記念すべき記事第1号であり、今後もSDGsに関連するような本やレポートを読んだら、ブログで紹介していくつもりでいる。以前在籍した大学院の指導教官には、「そんなことやってるから他の研究者にアイデアを先取りされるのだ」とお小言を頂戴したことがある。でも、今や僕も研究者ではない立場だし、SDGs最大の課題は、地球上で暮らすすべての人が目標を共有して、その達成に向かって何らかの行動を起こすことだと思っている。実はサックス教授ご自身も、本書の中で、「ソーシャル・ネットワーキング・サイトを介して、持続可能な開発を促すこと。(中略)友人、学校、職場、ブログといった個人的なネットワークを結びつけ、別々だったコミュニティに共通の目的のもとに集うよう働きかけてみてはどうだろう」(p.454)と述べている。

それを自分なりに勝手に実践してみようかと考えている。今までこのブログでは本の紹介を主軸にして漠然とやってきたけれど、「持続可能な開発」というカテゴリーでできるだけ多くの情報発信をしていけたらと思っている。

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