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『団塊の秋』 [読書日記]

団塊の秋

団塊の秋

  • 作者: 堺屋 太一
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2013/11/02
  • メディア: 単行本
内容紹介
西暦2015-2028年、彼ら「団塊の世代」は想定外の人生に直面する! 1976年に刊行され、予測小説の先駆けとともに流行語となった「団塊の世代」。その著者が「団塊」の総決算として放つ近未来シミュレーション。 現在、60代中盤の男女7名が主要登場人物。彼らが80代に突入する西暦2028年までを、政治・経済・外交・生活・文化など多方面の情勢変化を背景に描く。日本の第一次ベビーブームに生まれ、高度成長とバブル崩壊を経験した彼らは、人生の晩節をいかに生きるのか。 近未来予測であるとともに、超高齢化社会に向けた人生指南の書。 東京五輪(2020年)、戦後80年(2025年)などを扱った「未来の新聞記事」を各章に掲載。
堺屋太一著の未来予想小説といったら、2009年に『平成三十年』を読んで以来である。未来予想小説は、堺屋さんの十八番であるが、2002年頃に2018年頃のことを予想していた『平成三十年』に対して、2013年に2028年頃のことまで見越して『団塊の秋』を書いておられるというわけで、10年に1回ぐらいのペースで、向う15年を見越した未来予測を堺屋さんはされているのかなという気がする。但し、『平成三十年』は政治の話だったのに対し、今回の『団塊の秋』はどちらかというと団塊世代のその後というのにフォーカスが当たっており、中には政治家もいるけれども、厚生官僚もいるし、都銀就職したのもいるし、教員になった人、新聞記者になった人、メーカーに就職した人もいる。各章で複数の主人公を設けているが、いずれも団塊世代である。

大学卒業前にきままな海外旅行に出かけられた団塊世代の人が皆、東大や慶応、早稲田を卒業して弁護士、官僚、政治家、企業のトップに上りつめるという話の設定には無理は感じるものの(1ドル=360円の固定相場制だった当時に、あえて卒業旅行の行き先に海外を選ぶという話の発端の設定には必然性はあまり感じないが)、その後の展開の仕方についてはさもありなんという気がした。

僕もあと10年もしないうちに今勤めている会社を退職して、次の仕事を探さなければいけなくなるのだろうと思うが、その時の飯の種が何なのか、そして、今から10年の間に大学も卒業して就職を考えなければならない我が家の3人の子供たちが、どのような進路選択をしたらいいのかについても、幾つか貴重な示唆が得られたような気はする。本書が書かれた時期を考えれば、アベノミクスのその後について、堺屋さんがどう見ておられるのかも本書を読めばよくわかる。インフレは進むが雇用も賃金もそれほど伸びず、結局インフレが庶民の生活を直撃する結果に終わるというのが著者の見通しらしい。

東大を出て厚生官僚になった奴の最後は寂しいものだが、それでもエリート意識が鼻をついた。僕も自宅に工夫して「書斎」らしきものを作った直後だったので、福島さんのその後についてはドキッとした。折角整理した自宅の書斎も、放っておいたら結構雑然としたものになりかねない。

また、福島さんが主人公となった章の冒頭で、「野良猫」ならぬ「地域猫」という話が出てくるが、2022年の話として書かれているそのエピソードも、既に僕の身の回りでは起こっていることだということができる。現にうちの妻は「地域猫」である通称「ナータン」(下写真)に1日何回か餌をあげているし、ナータンの方も、餌を貰えるのが当たり前だと思っているふしがある。しかも、ナータンは1日に何軒かの家を巡回しているようで、複数の家で餌を貰っているから、結構ウェートが増えてきているような気もしないでもない(笑)。

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未来予想小説と銘打っているが、既にその未来を示唆するような現象が、身の回りでは起きているのだ。

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コメント 2

うしこ

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

これはまた興味深い本ですね・・・文庫になったら買おうかしら。
by うしこ (2014-01-05 10:32) 

Sanchai

うしこさん、コメントありがとうございます。今年もよろしくお願いします。私も、この本は文庫化されたら手元に1冊置いておきたいと思っています。
by Sanchai (2014-01-05 14:35) 

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