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『本』の本 [読書日記]

大型連休の間に僕が新たに図書館で借りた本は10冊あると以前このブログで書いたことがある。その内訳を僕の問題意識別で整理してみると、ざっとこんな感じだ。
 
 -イスラム教      3冊
 -養蚕         3冊
 -ブータン       1冊
 -本の編集・出版   2冊
 -オーガニックコットン 1冊

この中でも異彩を放っているのは「本の編集・出版」絡みの本を2冊借りたことだろう。これは、図書館に行って書架を物色しているうちにひらめいたもので、その伏線は、4月に仕事で新たな事業出版に関わることになったからである。僕が自著を出す時にお世話になった出版社の方や業界で働いている友人とかに話を聞いてみたものの、業界の慣習や専門用語や慣用句などがよくわからず、ピントの外れた質問を繰り返す前に、そもそもの出版業界での仕事の内容を自分なりに勉強しなければと思っていたからだ。このことを、図書館の館内を歩いているうちに思い出し、手ごろなところで上記2冊を借りてみることにした。

本づくりこれだけは 改訂3版―失敗しないための編集術と実務 (本の未来を考える=出版メディアパル No. 16)

本づくりこれだけは 改訂3版―失敗しないための編集術と実務 (本の未来を考える=出版メディアパル No. 16)

  • 作者: 下村 昭夫
  • 出版社/メーカー: 出版メディアパル
  • 発売日: 2009/05
  • メディア: 単行本

この本は編集者向けのマニュアルで、本の各パーツの名称とか、判型、製本形式、綴り方、段組み等の名称とか、入稿から配本までの行程とか、校正での赤ペンの入れ方とか、販売ルートとか、業界人なら当たり前だが、部外者にはなかなかわからない部分を知ることができる良書だと思う。今の仕事をやっている以上、座右に常に置いておきたい1冊である。取りあえずざっと読んだが、会社の経費で落として購入してもいいくらいだ。

ただ、これで業界人にとっての基礎の基礎の部分らしいので、もうちょっと踏み込んで知りたいこととかは載っていない。例えば、新聞・雑誌上で広告を掲載するにはいくらぐらいかかるのか?事業出版(自費出版)の場合にそれでも宣伝広告を載せるなら、費用は著者側負担だとしても、そもそも宣伝広告を打つ打たないの判断にどこまで出版社側の意向が反映されるのか?著書を新聞・雑誌の書評欄で取り上げてもらうにはどうしたらいいのか?大型書店の平積みスペースをどうやって確保できるのか?そのための書店へのアプローチは、取次店をすっ飛ばして版元の営業担当がやってくれるのか?企業スポンサーの本の場合は、版元の営業担当に代わって直接書店にお願いに行っても書店は応対してくれるのか?そもそも出版社に原稿を持ち込んで、どれくらいの日数で取次店配本にまでこぎ着けられるのか(勿論、原稿の出来不出来によって編集にかかる期間は変わってくるだろうが)?そんなことが知りたかった。まあ、これらは本書を読んだ上で今週業界の方に直接質問して、なんとなく答えはわかった。こちらも勉強しているという姿勢を示せて良かったかも。

本の現場―本はどう生まれ、だれに読まれているか

本の現場―本はどう生まれ、だれに読まれているか

  • 作者: 永江 朗
  • 出版社/メーカー: ポット出版
  • 発売日: 2009/07/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容(「BOOK」データベースより)
30数年で新刊が約4倍に増えた。この「新刊洪水」のからくりを知りたい―そんな動機から取材がはじまった。自費出版事情、ケータイ小説、フリーライターのいま。日本人の読書率。ベストセラーの読み手は…「本の現場」でいまなにが起こっているのか。

次にご紹介する本は、出版・販売の業界の現状と課題が解説している1冊である。これは非常に面白かった。最近、玉石混交度合いがとみに高く、書店が新刊で溢れかえっている事態がなぜ起こっているのかとか、昔は講談社、中央公論、岩波ぐらいしかなかった新書が、なぜ急増したのかとか、その背景がよくわかった。と同時に、いくつも考えさせられたこともある。

第1に、書店の棚をある本が占める期間は短く、書店店頭で物色していて読みたい本に巡り合ったら、すぐに買った方がいいという話。2週間程度でどんどん入れ替えが進むので、売れなければ取次店に返品されてしまうそうだ。(勿論、インターネット通販なら購入できるわけだが。)

第2に、僕の近著を扱ってもらった選書のシリーズに比べて、新書の方が読者にとってはコストパフォーマンスが良いので、今後同様の国際プロジェクトの歴史を描いた本の発刊を考えるなら、新書の方が狙い目かもしれないという点。

第3に、若者の読書離れが嘆かれているが、実際に本を読まないのは50代以上の中高年で、男性よりも女性の方が読まないという指摘。僕自身、我が子にいかに本と向き合わせるかで腐心していたので、むしろ我々よりも上の世代が本を読むという姿勢を示すことが求められているのかなという気がした。

幸い、うちの3人の子供達はそれなりに本を読んでくれている。学校の指導の賜物なのか、それとも僕がやたらと図書館に彼らを連れて行って自分自身で本を借りて読む姿を彼らに示してきたのが大きいのか、その辺はよくわからないが、この習慣はできる限り維持して欲しいと願っている。


タグ:出版
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