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『テレビの大罪』 [読書日記]

テレビの大罪 (新潮新書)

テレビの大罪 (新潮新書)

  • 作者: 和田 秀樹
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/08
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
あなたはテレビに殺される。運よく命まで奪われなくとも、見れば見るほど心身の健康と知性が損なわれること間違いなし。「『命を大切に』報道が医療を潰す」「元ヤンキーに教育を語らせる愚」「自殺報道が自殺をつくる」―。精神科医として、教育関係者として、父親としての視点から、テレビが与える甚大な損害について縦横に考察。蔓延する「テレビ的思考」を精神分析してみれば、すべての元凶が見えてきた。
この人、著作が多過ぎ。読書メーターで見ただけでも540冊ある。50歳の精神科医がなんでこんなに本を書けるのか。1年に2、3冊は書いている計算だ。しかも、その多くは勉強法とか教育とか、精神科とは関係なさそうな本ばかり。何がきっかけで文筆活動に入れたのか、知りたいものである。

どこかで見た著者名だと思ったら、昔同じ著者の本を読んでいた。『「質問力」で勝つ!』というタイトルで、当時のブログ記事では結構酷評している。粗製乱造はよくないという趣旨のことを書いている。

でも本書に関する限り、それほど劣悪な本だとは思えない。読みやすいので、テレビのバラエティ番組やアニメばかり見ている中高生には是非お薦めしたいと思う。親が漠然と「子供達にテレビを見させておきたくない」と思っている理由を、端的かつ説得的に語ってくれている。今どきの日本の子供が他国と比べて勉強時間が少ないという指摘はうちの子供達にも聞かせたいものだ。フィンランドのテレビにはバラエティ番組はない、子供に人気のある番組は1位が討論番組で2位がニュース、3位がドキュメンタリーだというのを聞かせ、今の日本のテレビのあり方について子供達にも考えてもらいたいものだ。

『関口宏のサンデー・モーニング』で張本に反対コメントしたばっかりに江川紹子さんが番組を降ろされたのと同じで、本書の著者もコメンテーターとしてテレビ番組に呼ばれて行って本音や反対意見、難しい意見を堂々と発言したためにお呼びがかからなくなったと本人は述べている。テレビでは小難しい意見やわかりにくい意見、テレビ局が「こうだ」と決めた落とし所に同調しない意見は言ってはいけないらしい。そういう規制がかかっているという実態については聞くと腹も立つが、これだけ多作の有名人だからテレビに呼ばれたのだから彼自身も「セレブ」だったわけだし、干された後もその干された経験をネタにして次の本を書いてしまうのだからこの人も結構商魂逞しい。

テレビの番組がすべからくダメだとは思わない。たとえカテゴリー的には『鉄腕DASH』なんてバラエティ番組なのかもしれないが、この番組は子供達に見せてもいいと思える。逆に、その後の『世界の果てまでイッテQ!』は正直あまり子供達に見せたくはない。お笑い芸人が世界中飛び回っておバカな姿を見せてくるだけの企画で、笑えるけれども後に何も残らない。大河ドラマを見させてもらえないという単純な理由でもない。大河ドラマもドラマ性を高めるために相当に史実を歪めているから。あれを見て子供達が変な歴史を学んでしまったらそれも辛い。

けれども、討論番組の少なさ、良質のドキュメンタリー番組の少なさは気になっていたところではあった。ある特定のテーマに関してもいろいろな意見がある、ものの見方は一通りだけではないというのを知ることができるのが討論番組の良さだと思うが、そういう考え方の多様性をテレビは無視し、シンプルな方向へシンプルな方向へと向っているような気は確かにする。

この本は読みようによっては著者がテレビに干された恨みつらみを書いているだけともとれる。テレビのシンプルさを疑えと主張している割に、本書で書かれている内容も意外とシンプルで、疑ってかかる余地もあるように思える。読みやすいからといって著者の論点に100%賛同していたら、結局シンプルさを求めていることになってしまう。これではテレビを見ているのと同じだ。子供達に読ませるにも注意が必要である。

コミセン図書室でこんな本を借りて読む気になったのは、最近知人の1人がミクシィでのつぶやきで下記URLのブログの記事について言及していたからである。これが本当ならフジテレビも結構えげつないなと思う。安藤美姫選手を貶めすぎ、キム・ヨナ選手を持ち上げすぎではないかと思える。
http://ameblo.jp/saita-saki/entry-10878670973.html
タグ:和田秀樹
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コメント 1

yukikaze

「和田秀樹」と聞くと、私も「粗製濫造」というイメージがあります。3冊ほど読んで、立て続けに乱雑な理論展開だったので、書店でも手に取ることもありませんが、中には秀作もあるのですね。手に取ってみたほうがいいという気がしてきました。
by yukikaze (2011-05-16 16:39) 

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