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『インドの時代』 [読書日記]

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インドの時代―インドが分かれば世界が分かる

  • 作者: 榎 泰邦
  • 出版社/メーカー: 出帆新社
  • 発売日: 2009/12
  • メディア: 単行本
疾風怒濤のアジア三国志時代に突入。共生か覇権か、漂流する日本は何処へ!?前任インド大使が送る渾身のレポート 12億のインド民主主義…。抜群の官僚制度、独立闘争の担い手コングレス党と700の諸政党、インドビジネスへの手引き、地下水脈で繋がる日印交流史、インド洋を制する者は世界を制する、など多岐にわたる情報を発信。(ビジネスネット書店クリエイジより)
今からちょうど1年前に出た本。市立図書館の書架で偶然見つけ、前の駐インド日本大使の著書だから読んでみようかと思った。本書の中でも仏教関連の記述が多いが、榎前大使は今は創価大学で教鞭を取っておられる。

出版社の方針だろうか、四六判の割に1頁当たりの文字数が多く、ページが文字で埋め尽くされているという印象。借りたからといってもにわかに読書のペースは上がらず、貸出期限延長も含めて約1ヵ月借りっ放しの状態となった。来週末からインドに私事目的で出かけることにしているが、その前に返却しておかないといけないと思い、もう一度最初から読み直し、3日かけて読み切った。面白くなかったわけではない。職場の自主勉強会での発表等もあって、本書を読み切るのに集中できなかったというのが大きな理由だ。

榎大使は1980年代初頭に参事官としてもニューデリー日本大使館勤務のご経験があり、今回の大使在任期間も4年近く、時間軸での比較に加えて、交友関係での横の拡がりも非常に大きい。一般論として、こういう立場の方は離任されたらそのご経験を本に纏められるべきだと思う。それをちゃんとなさった功績は大きい。2000年代に公的な立場でインドに駐在なさった方で、そういう本を書かれた方は榎大使以外には小川忠・元国際交流基金ニューデリー事務所長ぐらいしかいらっしゃらない。榎大使は政治家や高級官僚、巨大企業グループの総帥とか、僕らではなかなか会うこともできない人々との交流があり、小川元所長はシンクタンクの研究者とかジャーナリストとの交友関係があるという点で、一般の企業の現地駐在員経験者が書かれたインド駐在経験とは全く異なる視点からインドを論じられている。お二人にははるかに及ばないが、僕はそういう意識を多少持って現地NGOの方々と交流してきた。僕には出版社にコネがないからこのブログで勝手にやらせてもらっているけれど。

そんなわけで、本書はとても面白く読ませていただいた。最後の2章はちょっと趣が異なるような気がしたけれど、前半の政治経済の分析、特に官僚制度とか政党間の合従連衡とか、エアテルのスニル・ミッタル会長のことを1980年代前半から知っていて、結婚式にも呼ばれていたとかいった大物の素顔みたいな話は、とても面白かった。インドで地方の政治家や官僚を相手に仕事しなければいけない立場にいらっしゃる人には、こういう回顧録は大変に参考になると思う。

僕らは目の前にある事象をスナップショットでしか理解しない傾向があるが、昔はそれがどうだったのか、今僕らが相手をしている人は、これまでどのような経歴を持った人なのか、どこでどんな仕事をしてきて、どんな人と繋がりがあるのかとか、そういうのを知っておくと何かの役に立つかもしれない。

全然話は変わるが、最近、僕はあるチャンネルを通じ、「ウッタラカンド州南東部の町コトドワールでエイズ患者支援をやっているNGOを知らないか」という問合せを受けた。そういう団体を僕が直接知っているわけがないが(そもそもウッタラカンド州に行ったことがないし)、3年間のインドでのNGO関係者やメディア関係者との交流、交わした会話の中から、思い付くだけでも10の異なるチャンネルで調べることができることがわかり、自分でも驚いた。(結局その1つに問い合わせてみてドンピシャで特定できる目処が立った。)こういうネットワークはいったんその場を離れればあとは劣化していく。時々インドで滞在して刺激を加えないと。もう一度インドで仕事できる機会でもあるといいのだけれど、無理かな。
タグ:インド
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