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『八月の路上に捨てる』 [読書日記]

八月の路上に捨てる

八月の路上に捨てる

  • 作者: 伊藤 たかみ
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/08/26
  • メディア: 単行本

出版社 / 著者からの内容紹介
暑い夏の一日。僕は30歳の誕生日を目前に離婚しようとしていた。愛していながらなぜずれてしまったのか。現代の若者の生活を覆う社会のひずみに目を向けながら、その生態を明るく軽やかに描く芥川賞受賞作!他一篇収録。
僕が純文学の芥川賞作品を読むなんて、非常に珍しいことである。この週末も事情あって沢山本を借りたが、1冊ぐらい小説を入れておこうと思い、伊藤たかみの作品を借りてみることにした。先週、彼の著書の1つ『ぎぶそん』を借りて後からティーンズ小説であることに気づき、読む前に返却してしまった経緯があり、せめてもの罪滅ぼしで、同じ著者の作品で、もう少し上の年齢の読者層を狙っている作品を読んでみようと考えたのだ。それに100頁少々の作品なら1時間程度で読める。論文解読作業の息抜きぐらいでちょうどいい。

それにしてもである。今気付いたのだが僕は2000年以降の芥川賞作品というのを全く読んでいない。モブ・ノリオ著『介護入門』で挫折している。それ以前に遡ると、石川達三『蒼氓』、高橋三千綱『九月の空』、南木佳士『ダイヤモンド・ダスト』、吉目木晴彦『寂寥荒野』ぐらいである。受賞した作家の作品もあまり読んでいない。直木賞受賞作家の作品群とはえらい違いだ。芥川賞と聞くだけでちょっと引く。

本日ご紹介の1冊は、そうした僕の先入観を打ち破るには読みやすい作品だった。ただ、何故この作品が芥川賞受賞した純文学の作品なのかは正直言うとよくわからなかった。なんだか盛り上がりに欠ける状態で終わってしまったような気がする。まあ僕らの日常はそんなに盛り上がりが沢山あるわけでもなく、そうした日常性をうまく描いた作品であるからやむを得ないといえばそうなのだが。

確かに、30代を迎えた夫婦が離婚に至る心境の移り変わりというのは、主人公の男性の側からはよくわかるのだが、その一方で、妻がそこまで精神的に衰弱している状態の中で、「離婚」というのが最善の選択肢だったのか、そこでフリーター生活を脱却し、きっぱり脚本家の夢を諦め、ちゃんとした収入が得られる職を得て働くという考えは主人公にはなかったのだろうかと疑問に思った。

なお、本書には「貝から見る風景」という短編も収録されているが、こちらの方を読んだ感想としては、ライターになるにはどうしたらいいのだろうかという素朴な疑問が湧いたことを付け加えておく。なんか、月々の収入の変動のリスクはあるものの、物書きで過ごせたらいいなぁと思ったりもするもので…。
タグ:伊藤たかみ
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