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『日本のフェアトレード』(2) [読書日記]


日本のフェアトレード

日本のフェアトレード

  • 作者: 長坂 寿久
  • 出版社/メーカー: 明石書店
  • 発売日: 2008/05/08
  • メディア: 単行本

気が付いたら前編を書いてから2週間近くも経過しており、本書の内容紹介を後回しにしてしまったことをお詫び申し上げなければならないようだ。

ただ、内容紹介といっても、フェアトレードとは何ぞやなどというような基本的な説明はここでは省略する。一方で、フェアトレードが普通の商取引と理念的にどう異なるのかについては述べておいてもいいかもしれない。

僕達は、現在の世界の貿易構造の中にいる限り、途上国の人々を、お前たちは貧しいままでいいのだと足蹴にし、格差づくりに「貢献」している消費者だ。しかし少なくとも、その被害を小さくする努力はできるはずである。フェアトレード商品を買うということは、第1に、自分が破壊者となりかねない消費者から「選択者」になることを意味する。選択者になって、僕達は、目覚めた消費者として、環境にも目覚めた消費者になり得る。それが結局世界を変えていく確実な力となっていく(p.124)。

フェアトレード商品を買うことで、途上国の小規模生産者と消費者を結びつける開発協力活動に直接的に関われる。そして、買い物を通して、僕達はオールタナティブな世界貿易システムを構築する動きを生み出すことができるかもしれない。環境や労働、人権に配慮した商品を購入するという選択者になることにより、そういうものに配慮していない商品は買わないという新しい消費行動をとれる。

フェアトレードは、「開発途上国の農民や零細生産者の自立を支援する運動」である(p.117)。フェアトレード商品を扱っているNGOなら、現地で、農民や零細企業家の自立に繋がるフェアな買い付け価格の設定や品質を高めるための技術支援を行なう。一方で、買い付けた商品は売れなければいけない。したがって、生産者と消費者の間に立ち、両者の距離を縮め、かつ両方に片足ずつを置いて、両足が離れないようにしなければならない。販売を通じて消費者と接点を持ち、消費者が求めているもの、期待しているものについて情報をキャッチすることが求められる。そして、その情報を買付先に生産者にも流し、生産者とともに対応を考えていくことも求められる。

優秀なショップに共通して見られる傾向として、店主に地域での存在感があることが指摘されている(p.118)。フェアトレードは一種の運動であって、店主や店員は地域活動にどの程度関わっているのかが問われるようだ。店にいるだけでは不十分で、地域活動と結びついて販売努力ができるかどうかにかかっている。そうすることで、フェアトレードを始めるにあたっての想いが地域に情報発信もされる。

だが、残念なデータもある。日本人はフェアトレードに必ずしも積極的ではないというものだ。欧州のフェアトレード認証ラベル(FLO)商品の国民1人当たりの売上高は約243円(2004年)で、人口で換算すると300億円以上に市場規模が拡大してきているという。しかし、日本の総売上高は2004年で3億9000万円、2005年は5億1000万円で、その市場規模はなんと欧州市場の1/120(2004年)、1/60(2005年)に過ぎない(p.79)。

このデータについては若干の言い訳もある。フェアトレード商品の主力であるコーヒー、チョコレート、紅茶等は、欧州の消費者に比べて日本の消費者にはあまり受けないラインナップだと思う。手工芸品はそもそもリピーターの呼び込みが難しいので、あまり主力商品にはなりにくいと思われる。そうすると、元々日本人受けしそうなフェアトレード商品がないというところにも原因の一端はあるような気がする。

フェアトレードについて僕が思うところは、前回の記事の中で相当に述べたつもりである。
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