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プネ農村のお年寄り [インド]

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《住民が現地NGOの支援を受けて建設した灌漑用ポンプ小屋》

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《現地NGOの支援を受けて選ばれたモデル農家のバイオガスコンロ》

先週末から今週前半にかけてマハラシュトラ州プネに旅行に出かけた際、地元のNGOの方に頼んで、そのNGOの事業地を訪問させていただいた。しかも図々しくもその訪問に注文までつけ、その村のお年寄りにインタビューをさせていただいた。もう少し時間に余裕があり、あと1日2日村に滞在させてもらえたなら、もっと多くのお年寄りとそのご家族の方にインタビューできたと思うが、何しろ本社からの出張者の日程が予想していたより2日早いデリー入りと知らされたために、村での滞在日程を短縮せざるを得なかったのだ。
いん
インタビュー日時は6月15日(火)、場所はプネ県ムルシ地区のカタルカダック村。相手はクリシュナ・ヴィトゥ・マルポテ(Krishna Vitu Malpote)さん。因みにこの村には「マルポテ」という苗字の方が非常に多い。

以下はそのやりとり―――。

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《マルポテさんと一緒にポーズ》

Sanchai(以下、S): インドが独立した時(1947年)、あなたはどこで何してましたか?

マルポテ(以下、M): 村を出てムンバイで働いていました。

(このことから、マルポテさんの年齢は85~90歳であると推測される。)

S: ムンバイの仕事はどうやって見つけられたのですか?村から出たのはそれが初めてでしたか?

M: 村の出身の人を頼って行きました。村を出たのはそれが初めてです。

S: ご兄弟は?

M: 弟が1人いたけれど既に死にました。

S: いつ村に戻って来られたのですか?

M: 50年ぐらい前です。ムンバイで働けなくなったので。

S: お子様は何人いらしたのですか?

M: 亡くなった妻との間に息子が1人、娘が3人います。息子は村に住みながら、プネのITパークに働きに行っています。娘は全員村外に嫁いでいます。

S: 息子さんのITパークでのお仕事はどのようなことですか?

M: 建設作業員です。教育をちゃんと受けさせてないので。

S: お嬢さんは時々は村に戻って来られるのですか?

M: はい。

S: 携帯電話はお持ちですか?

M: 自分は携帯電話は持っていませんが、息子が持っていますし、家には固定電話があります。

S: お嬢さんから電話はかかってきますか?

M: 1週間に1回ぐらいはかかってきますので、娘たちが何をしているのかはよくわかります。

S: 今同居されているご家族の構成は?

M: 息子と息子の嫁、それに孫です。

S: 息子さんが日中外に働きに出かけているのであれば、農作業とかどうされているのですか?

M: 普段は自分でやっています。本当に忙しい農繁期になると、息子はITパークでの仕事を1カ月ぐらい休んで村にとどまって農作業に付き合ってくれます。どうしても忙しくて人手が足りない時は、労賃を払って近所から手伝いに来てもらいます。

ITパークの建設作業員が6月頃に1カ月の長期休暇を取るという話は別の農家でも聞いた。)

S: 朝起きてから夜寝るまでの過ごし方を教えて下さい。

M: 朝は7時に起きます。朝食を食べ、暑くなる前に農作業を済ませます。午後の過ごし方はまちまちです。

朝の起床時刻が意外と遅いというのがわかった。)

S: ご近所のお年寄りの家をお互いに訪ね合ったりするんですか?

M: します。取りあえず行ってみて、忙しそうだったら引き返してくるといった感じで。

S: 昔と比べて農業で変わったところはどんなところですか?

M: 昔は稲作しかしていなかったけれど、今ではいろいろな作物を作れるようになりました。

S: 年金もらってますか?

M: 年金は政府職員しかもらえないでしょ?私はもらっていません。農作業で今でも収入があるし…。

S: 病気になったらどうするのですか?

M: 2つ隣の村に私立のクリニックがあるのでそこに行きます。たいていは1人で行きます。でも、本当に体調が悪い時は家族に一緒に行ってもらいます。

S: 健康上気を付けていることはありますか?

M: 特にはありません。

最後に、長生きして下さいねと申し上げたところ、こんな反応が返ってきた。

M: この歳まで生きると、もう長生きという希望はあまりありません。生きていくのも大変なので、なるようになればよいと思っています。

最後の言葉を聞いたら、長生きが当たり前と思っていた僕の先入観が崩れていく気がした。そして、農作業は生涯現役というのもよくわかった。マルポテさんはムンバイのような都会で働いた経験もあるのでちょっと違うかもしれないが、同じ村で80年以上も住み、しかも村からあまり外に出たことがないという生活ってどんな感じなのだろうかとふと思った。

でも、インタビューを終えた後、マルポテさんがとてもいい笑顔を見せて、「よかったら家に来ないか」と誘って下さったのが嬉しかった。本当はお年寄りご本人だけではなく、ご本人を取り巻く様々な世代と立場の方々にもインタビューしたかったので、本当に本当にお誘いを受けたかったのだが、時間が押せ押せになってしまい、途中で打ち切らざるを得なかった。とても残念。

と同時に、一夜漬けで準備したお年寄りへのヒアリング項目、もう少しちゃんと準備した方が良かったと後悔した。後でメモを起こしてみたら、曖昧なところが幾つかあり、あの時こう言われたらこちらもこう更問いできたらもっと詳細に知ることができたかもしれない。

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《カタルカダック村での住民との対話》

余談ながらこのインタビューの後で訪問したカンボリ村では、個別インタビューはできなかったものの村の酪農組合のメンバーの方々と立ち話をする機会があった。酪農組合のメンバーの殆どが高齢者で、若者が村を出てプネに働きに出かけているという実態を痛感させられるような光景だった。息子さんたちはどこで働いているのかと聞くと、やっぱり建設作業員という声が多い。農繁期になると長期間村に戻って来ることが多いらしいが。

家族連れで戻ってきた際、孫たちとどのような話をするのかと尋ねたところ、孫は孫で都会の趣味をそのまま持ち込んで話しているので付いていけないと笑っておられた。「お孫さんたちに村の話をしてあげたらどうですか?」と水を向けると、「そういう話もしてるんだけどね…」という苦笑の反応であった。村の歴史を話してあげることは、村を好きになってもらうための第一歩ですよ。

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《カンボリ村酪農組合のメンバーの皆さん》

最後に、全行程ご案内下さり、通訳をして下さったICA Indiaのシャンカル・ジャダヴさん、ありがとうございました。
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