岸田袈裟さんを紹介した児童雑誌 [読書日記]
岸田袈裟さん死去 「少年ケニヤの友」副理事長
岸田 袈裟さん(きしだ・けさ=NPO法人「少年ケニヤの友」副理事長)2月23日午後8時31分、転移性がんのため盛岡市の病院で死去、66歳。岩手県出身。自宅は東京都日野市日野3020の2。葬儀・告別式は近親者らで済ませた。
ケニアに30年以上住んで栄養学の調査研究やボランティア活動に取り組んだ。岩手県遠野市に伝わる技術を生かしたかまどで衛生的な水を確保、乳幼児死亡率の低下に貢献した。94年から03年まで国際協力機構(JICA)専門家。07年に遠野市民栄誉賞受賞。
【出所】時事通信3月1日。http://www.47news.jp/CN/201003/CN2010030101000834.html
月刊『たくさんのふしぎ』、2004年2月号、福音館書店
「エンザロ村のかまど」
同じような業界で仕事をさせてもらっていながら、僕は岸田袈裟さんとは接点がない。ただ、一度だけ岸田さんの業績を調べさせてもらったことがある。2004年4月に長男が小学1年生に上がった時、小学校には毎週2回、朝礼の時間に父兄が絵本の朗読をやるボランティアの機会があった。父親でそれを志願した人はあまりいなかったが、会社一辺倒になりたくないというささやかな抵抗の気持ちもあり、僕は妻と一緒にボランティアに手を挙げた。夫婦ともに志願したのもうち以外なかったかもしれない。
自分の順番が回ってくると、三鷹市立図書館に出かけては何を読み聞かせるか、題材を物色した。
第1回目はバングラデシュの民話、
第2回目は福音館の月刊誌『たくさんのふしぎ』から「カレーライスがやってきた」、
第3回目は福音館の月刊誌『かがくのとも』から「まんまるダイズみそづくり」、
第4回目は『今昔物語』から「亀のおしゃべり」、
第5回目は『岐阜県の民話』から「夜叉ヶ池」、
それじゃあ岸田さんを紹介した「エンザロ村のかまど」が含まれていないじゃないかと言われるかもしれないが、実はここで挙げた題材選択の裏でこんなエピソードがあった。
「エンザロ村のかまど」は2回目の朗読の際にギリギリまで使うかどうするかを迷い、結局「カレーライスがやってきた」にした経緯がある。当時僕は複数の候補作品をいったん借りてきて、長男と娘を相手に実際に朗読して反応を試してみることにしていた。ご存知の方も多いと思うが、『たくさんのふしぎ』は小学3、4年生を読者として想定している。そのため、ある程度は文章表現で理解を促すように設計されており、それを小学校低学年の読み聞かせで使うのはちと大変なのである。「カレーライスがやってきた」にした理由は単純で、カレーライスなら小学校低学年でも十分イメージできるが、「エンザロ村のかまど」は、草履やかまどを実際に見たことがない子供達に読み聞かせてもイメージできないという1点に尽きる。結果は正解で、「カレーライスがやってきた」は子供達に相当に受けた。
ただ、「エンザロ村のかまど」は、我が子供達には読み聞かせじゃなくても是非とも読んで欲しい1冊だと強く感じた。イラストもカラフルだし、ストーリーもわかりやすく、現場での問題解決の基本中の基本をうまく描いている作品だ。開発教育の題材をいろいろ探してみたが、殆どが中学生以上を狙っているというのがわかった。そんな中で、「エンザロ村のかまど」は小学校中学年あたりまでをターゲットにした類稀なる開発教育の素材である。テレビ番組とかでアフリカの農村生活の映像を少しでも見せておくような配慮を当時していればよかったかもしれないが、題材選択の際にそんなことを後悔しても後の祭りだ。
残念なことに、長男は今年小学校を卒業する。今さら『たくさんのふしぎ』でもないだろうし、ちょっとタイミングを逸した感は否めない。それに、主人公・岸田さんは女性であるし。おそらく長男には別の題材で考えてもらう機会を作るべきかなと思う。ただ、今年5年生に上がる娘には一度本書を読んでみて欲しいと思う。挿入されているイラストは娘の感性にはちょうど合うと思う。アフリカの農村がイメージしづらいというハードルは、イラストで十分克服可能だろう。
オヤジよりもずっと優れたロールモデルである。偉人など目指さなくてもいいから、自分にもできるささやかな地域・社会への貢献を考えてみて欲しいものだ。
最後に、岸田さんのご冥福をつつしんでお祈り申し上げます。
長男の通っていた小学校にも父親ボランティアの方がいました。
読み聞かせは平日の朝8:15からの15分間だけなので母親の参加ばかりでしたが、行事のお手伝いや役員さんはお父さん大活躍♪
読み聞かせは、時間も限られていて面白い話の本が中心になりがちでしたが、こんな絵本があるんですね…
by みちかα (2010-03-04 16:03)
岸田さんとは、1990年代にナイロビに駐在していた頃、日本人会などで、おわしており、先般、新聞での訃報欄を拝読し、途上国に貢献をされていた方がまた一人減り、残念に思います。
by カツ (2010-03-04 19:27)