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インドでの日本人のボランティア機会 [インド]

3日にお目にかかったシンガポールのリー・クアン・ユー公共政策大学院のC助教授から、日本人がインドでボランティアをする機会がどれくらいあるのかと質問を受けた。「かなり難しい」と答えた。

実は同じような質問を以前日本のボランティア団体の方から受けたことがある。日本人がインドに短期訪問してボランティアをやれるような受入機関はないのか、あったら紹介して欲しいと聞かれ、ないこともないけど「かなり難しい」と答えた。

なぜかというと、ニーズとオファーの間にギャップが相当にあることが大きい。

欧米の若者だったら、ボランティア機会のマッチングサイトのようなところにアクセスして英語で情報を取れるし、インドなら都市近郊で英語を使ったボランティア機会はかなりあると思う。現在外国のボランティア派遣事業実施機関でインド政府の正式な承認の下に行なわれているのは日本の青年海外協力隊だけだが、インド政府から組織本体の活動は正式には認められていない英国のVSOは、インドのi-Volunteer(アイ・ボランティア)というマッチングサイトの運営を支援していて、このサイトの仲介で英国の若者はインドでボランティア機会を得ている。しかも彼らは半年から1年の比較的長期にわたり滞在し、それなりに腰を落ち着けて活動を行なう。マッチングサイトだってメリットがなければ運営持続できないわけだが、そこはちゃんと仲介手数料を取っている。つまり、ボランティアに志願してくる欧米の若者はちゃんと仲介に対して正当な対価を払っているのである。

日本人だったらどうだろうか。先ず英語で情報が取れないことが多いのでボランティアのマッチング・サイトを利用することが難しい。さらにはボランティア機会自体が使用言語が英語だと尻込みしてなかなか挑戦できない。夏休みや春休みを利用した短期の旅行の過程でちょっとボランティアをやってみたいという超短期のボランティア機会を探しているが、マッチング・サイトでボランティア機会を見ると、最低でも1ヵ月以上という案件が圧倒的に多い。

そうなると、よく聞かれる日本人のボランティア活動はこんなイメージになりやすい。

第1に、情報収集にコストがあまりかからず、しかも超短期で1日とか2日とか、ボランティアをする側の都合で日程選択ができる案件に殺到する。良い例がコルカタの「マザーハウス」だ。なんで皆がマザーハウスに行きたがるのかと調べてみたら、日本の旅行代理店が仲介し、日本語のウェブサイトまで存在するらしい。超短期なら往々にして掃除とか洗濯とかが仕事としては多くなると思うが、インドではこれらは職業カーストでやっている者がいるため、下手したらボランティアをやっている自分までもが同じ目で見られるというリスクもあるのではないかと思う。

第2に、活動内容的には日本語学習支援というのが多くなりそうだ。地元のNGOがノンフォーマル教育で日本語を教えていて、「ネイティブスピーカー・ウェルカム」なんて環境は、僕の知る限りインドに2ヵ所しかない。しかも、自分が知るこの2ヵ所とも、日本語を教えてその後生徒をどう育てていきたいのか、具体的なビジョンを持っているわけではない。言わばアドホックに開催されている寺子屋的運営の一部に過ぎない。逆に言えばだからこそ超短期の日本語ボランティアでもOKなのだろうが、将来展望も開けないような日本語教育をボランティア側の都合で短期間だけやるというのはちょっと無責任過ぎはしないかと心配だ。将来就職機会に恵まれるように日本語を学ばせたいというのなら、本格的に日本語教授法を学んできたプロの協力隊員の指導を受けて日本語能力検定2級あたりを目指させないといけない筈だ。

ボランティアをする側はハッピーかもしれないが、ボランティアを受け入れる側がいつでもウェルカムでハッピーかというとそうでもないような気がするのである。例えば、今インドには日本語教育を導入している公共教育機関の幾つかに青年海外協力隊の日本語教師隊員が配属されており、「教室でアシスタントでもさせてもらえないでしょうか」と聞かれることがある。実はこれは教えているプロの日本語教師から見るとあまりウェルカムな話ではないらしい。実利が絡んでくるような日本語学習の場に、方法論を持たないような人がネイティブスピーカーだからというだけで入っても、何をやっていいのかはわからない。勿論、授業の場とは別に課外プログラムで交流機会でもあったらそれはそれで有効だろうとは思うが、だからといってそれはそこに配属されている協力隊員の方々に仲介をお願いするような話ではない。開拓にはそれなりの労力も費用もかけなければいけないと思う。

日本語教育ではなくて、けれども短期でも融通が利き、さらには英語ができないことがハンデとなりにくいボランティア機会というのはどのようなものがあるのだろうか。勿論、柔道や空手は常套手段であるが、ここからは僕の勝手なアイデアです。

例えば、
理科実験や音楽・ダンスの巡回教室への参加
…なんてのはどうでしょうかね?

インド国内で学校巡回して理科実験の実演をやっているNGOがインドには1つあるが、そういうところとタイアップして学校巡回の際に同行させてもらうとか、やれたら面白そうじゃないでしょうか。理科の実験に言葉はあまり必要ないし。或いは、楽器演奏やストリートダンスのようなパフォーマンスの指導とかも、言葉よりも動作だろうから、割と入りやすい。最近は音楽療法を取り入れようとする動きが障害者児童を含めた統合教育を指向する学校やNGOの間ではよく見られるので、探せばありそうな気がする。

結局のところ、こうした団体と日本人ボランティアの受入についてパートナー関係を作るには、仲介役を果たしてくれる良いエージェントを現地に確保することも大事だということなのだ。僕もそういう情報はそこそこは集めてネットワークも築いてきているので、それを生かすようなことが今後できたらいいとも思うのである。

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