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執行が進まない社会セクター予算 [インド]

社会セクター、緩慢な予算執行に泣く
Social sector hit by idle funds, delayed release
2月23日(火) Abhjit Patnaik、Swaha Sahoo記者
【ニューデリー発】 労働者の息子であるラフル・サクセナにとって、学校は温かい食事と同義語である。ラフル(9歳)は毎日東ビノッド・ナガルの市立学校に通っている。この学校では政府の学校給食プログラム(Mid-Day Meal (MDM) Programme)の下で昼食が支給されているからだ。2008-09年度に、1億1200万人もの子供がインドの学校では給食を食べた。
 中央と州は昨年、MDMや教育普及プログラム(Sarva Siksha Abhiyan(SSA))全国農村保健政策(National Rural Health Mission(NRHM))全国農村雇用保証制度(National Rural Employment Guarantee Scheme(NREGS))といった社会セクターのプログラムに3,500億ルピー以上を投入した。しかし、2010-11年度の支出計画よりも少ない増額しか来年度の社会セクターへの予算配分は行なわれない見込みである。これは過去6年間で初めてのケースとなる。
 ムカジー蔵相は政府支出を削減して財政赤字を圧縮する必要に駆られている。財政赤字はことし、GDPの6.8%という危険水準に達する見込みだ。予算削減の大ナタは社会セクターの支出にも容赦なく下ろされることになる。
 保健医療への支出は約10%の増額となる見通しだが、物価上昇のインパクトを相殺するには不十分である。インドの妊産婦死亡率は分娩数10万件に対して253件と高く、NRHMの下で安全な出産分娩を進める「Janani Suraksha Yojana」のような制度にはもっと多くの支援が必要となる。この制度の受益者は2005-06年度の74万人から2008-09年度には400万人に増え、同制度の普及を物語っている。
 社会セクターに対するインドの公的支出は比較的少なく、2008-09年度にはGDPの6.72%だった。これはドイツの25%やフランスの23%、英国の13%、米国の12%等と比較すると少ない。
 こうした福祉予算の絶対額だけではなく、 インドは開発プログラムの投入される資金が適切に予算執行されていることを保証せねばならないという課題にも直面している。社会セクター支出は過去5年間に大きく増加したが、かなり巨額の資金が未執行のまま残っている。政策研究センター(Centre for Policy Research)の調査でわかったものだ。
 資金の支出の遅れがプログラムの目的達成の足枷となるケースもある。マディアプラデシュ州セホール県のある学校では、幾つかの教室がモンスーンの時期に使用できなくなった。これは屋根の雨漏り修復のための予算が必要な時期に間に合わないことで起きたと、Accountability Initiativeのアヴァニ・カプール氏は指摘している。
 インフラ整備のように、目に見える成果を挙げられる資金は執行も早い。しかし、教員研修やイノベーション・ファンドといった資金は使われていないことが多い。各県に配布された1,000万ルピーのグラントの予算消化率は、カプール氏によると、85%から2007-08年度には72%に低下したという。
ちょっと古いが、2月23日付Hindustan Times紙のビジネス欄に掲載されていた記事をご紹介する。来年度政府予算については既に2月26日に発表されており、前年度比22%増の1兆3,767億4,000万ルピーが配分された。他セクターに比べて重点配分されているとの色合いはあるものの、農村重視という点は良く表れてはいる。

上の記事で述べたプログラムの予算配分はこんな感じになっている。
-NRHM: 1,393億ルピー(2009‐10)⇒1,544億ルピー(2010‐11)
-NREGA: 3,910億ルピー(2009‐10)⇒4,010億ルピー(2010‐11)
-SSA: 1,310億ルピー(2009‐10)⇒1,500億ルピー(2010‐11)

ところで、本日この記事を敢えて取り上げたのは、社会セクター支出の予算執行率の問題を指摘した記事だったからである。記事の中でも出てきたAccountability Initiativeという団体のサイトはかなり面白く、各セクター別のインド政府の予算配分とその執行状況について纏められている。Hindustan Timesも各プログラムの執行率の表を掲載しているが、この表は説明が不十分だし、Accountability Initiativeのサイトから都合のいいところだけをつまみ食いした形跡があるので、元々のデータの方から引用して、執行率を紹介してみたいと思う。(*2008‐09年度の実績に基づく)

-SSA: 78%
-NRHM: 93%
-NREGS: 96%
-MDM: 84%

猛烈に悪い執行率ではないように思うが、決して良いとは言えないし、記事の事例にも見られるように行政の末端の部分まで予算が到達するのにどこかで糞詰まっている可能性は高いと思う。予算編成は中央でしっかりやられていても、肝心の執行能力が弱くては資金の未活用がどうしても起きる。インフラのようにとにかくモノを作ればいいというものではなく、社会セクターの場合は人や制度・社会を扱うので計画策定からしてかなり難しい。

以前アフリカの貧困国でも貧困削減に寄与するために外国援助を1つの財布に纏めて予算策定から執行管理まで援助機関が参加して途上国政府と一緒に考えていこうという試みがあると聞いたことがある。10年近く前のことだから今はもっと活発にやられていることだろう。ただ、こうした財政支援万能の議論を傍から聞いていて、末端の予算計画策定と執行能力はちゃんとしているのだろうかというのが気になった。インドでは外国援助機関が財政支援をやるという議論はあまり聞いたことがないが、予算の出所がどこかはともかく、似た論点だなと思った。

予算はあるのだから、末端では使い方をもっと考えていくことが必要だろう。
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