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『「ホンネ」を引き出す質問力』 [読書日記]

「ホンネ」を引き出す質問力 (PHP新書)

「ホンネ」を引き出す質問力 (PHP新書)

  • 作者: 堀 公俊
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2009/09/16
  • メディア: 新書
内容紹介
 本当のホンネを見つけるのは難しい。同じ質問をされても、質問する相手や問われる状況、時と場合によって感じ方が違い、答えが変わる。自分でも何がホンネかわからないほど。だから、他人にホンネを訊いても、なかなか本当のところがわからない。けれども、互いのホンネがわからないことには、組織や集団はうまく機能しない。相互理解が進まず、課題の共有もできない。「訊けない上司」と「いえない部下」がチームづくりを阻害するのは、どの会社でもあることだ。「言いたいことがあるなら言いなさい」と言われても、部下はホンネを言えないもの。言ったら上司に怒られる、ということさえある。酒の席でも、言いたいことを言うのは上司ばかり。それでは上司と部下の相互理解にはほど遠い。
 本書では、ファシリテーションの第一人者が、互いの理解を深め、人と人との絆を強くするための、ホンネを引き出すテクニックを、具体的かつ実践的に解説する。

10月初旬に日本に帰った時、店頭に平積みされているのを見つけてすかさず買った1冊である。先日中野民夫さんの『ファシリテーション革命』を読んで少しばかり物足りなさを感じたところだったので、ワークショップよりも1対1での対話の中でいかに本音を語らせるかという問題意識にモロに響いてくる堀公俊さんの著作の方が僕にとっては面白い。(勿論、堀さんもワークショップの有効性については本書の中でも語っておられるが。)

実際に、前半の2章までがものすごく面白い。第1章「なぜホンネが出せないのか?」の第3節「上司と部下がわかりあえる手法」とか、第2章「自己開示を促進する10の方法」というのは、実際的で参考になる。実際に使ってみたいとも思ってしまうし、「なぜあの人はこういうポジショニングをするのだろうか」という相手の意図がわかってしまうような気もする。ロの字型のテーブル配置で会議をやるのは本音を出すのに最も不向きだというのは、その種の会議をやたらと設定していた前任地で嫌というほど経験したのでとてもよくわかる。円卓の方がまだましだ。

また、うちの職場にはどうにもこうにもやる気を見せてくれないインド人スタッフがいる。正面から向き合って対峙すると向こうも身構えて本音の部分をさらしてくれず、むしろ頑なに口をつぐんでひたすら嵐の過ぎ行くのを耐え忍んでいる。僕はファシリテーションでこのスタッフがやる気を見せてくれるようならファシリテーションの有効性を認めようと前々から公言しているが、単に気の利いた質問を繰り出すだけではなく、相手の本音の部分を探ってやる気を見せさせる方向に仕向けるには、むしろ横並びや90度のポジショニングを取った方がよいというのはなんとなくそうだろうなと思える。それに、ランクの力が抑圧的に働くというのはあるだろうから、僕のような管理職がそもそもこのスタッフと対峙しても相手はガードを固めるだけということになる。であれば、ランクを意識させないでより心を開きやすい相手と話をさせて、僕は席を外すことで「安心できる場」を作るのがいいというのもよくわかる。

こうした具体的な方法論は、どれもが心当たるふしがあり、1つ1つが目新しいものであるわけでもない。知らず知らずのうちに既に実践しているものもある。だが、こうして10の方法に体系化されて説明されると、「なるほど!」と思わず膝を打ちたくなる。とにかく実戦的で面白い。

上では職場の中での人間関係の改善・深化に役立ち、組織としての能力とパフォーマンスを上げるものであるという点を強調したが、想定されるシチュエーションはそれだけではない。親子の対話の中から子供のやる気を引き出していくことや、家庭での妻とのぶつかり合いの中からより強固な信頼関係を築き上げていくことなど、ここでのファシリテーションは応用の幅が広い。ここは「ワークショップ」とは重なりにくいところかもしれないが、なるほど、「勉強しなさい!」と口で言ってもエンジンがかかりにくい子供にやる気を起こさせるにはどうしていったらいいのか、本書の中にはそのヒントも含まれていたように思う。

普段の僕自身の職場での生活も、意外と本音を抑制しているところがかなり多い。ランクの力が抑制的に働いているところも正直あるだろうと思う。本音を言わないことでうまく回っているのが日本の職場なのかもしれないが、自己開示を抑制していることでややストレス気味であるというところも感じてはいる。思わず本音があふれ出てしまうような質問を瞬時に繰り出せる人は立派だ。自分の本音を引き出してくれるようなファシリテーターと少なくとも2年前に出会っていれば、今の状況や僕自身の意識はかなり違っていただろう。

この本、かなり面白くてお薦めだ。
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ナツパパ

ご訪問下さいましてありがとうございました。
この本は知りませんでしたが、さっそく買って読みたいと思います。
by ナツパパ (2009-11-08 09:49) 

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