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『ファシリテーション革命』 [読書日記]

ファシリテーション革命 (岩波アクティブ新書)

ファシリテーション革命 (岩波アクティブ新書)

  • 作者: 中野 民夫
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2003/04/05
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
引き出し、支援し、促進する、新しいリーダーシップが求められている。双方向のワークショップや会議を上手に進行させるためには?参加を促す場のつくり方、アイスブレイク、時間管理などの技術。学校教育、社会教育、NPO/NGO、市民活動、ビジネスへの応用。ファシリテーターの心得8か条。持続可能な社会づくりのための静かでやさしい革命。

以前同じ著者の本『ワークショップ』(岩波新書)を読み、そのあまりのスピリチュアル系の記述に辟易してしまい、同時に買ってあった『ファシリテーション革命』をすぐに読む気が失せてしまった。それから1年以上が経過し、死蔵させておくのもどうかと考え、先週の西ベンガル州カリンポンでの農村調査の際に携行することにした。

スピリチュアルな記述は抑えめで、実践的な記述が大半を占めているので、本当にワークショップやセミナーを実りのあるものにしたいと考える主催者には読みやすい内容になっていると思う。ただ、実際に僕らが使えるかというのを考えた場合、今の僕らの置かれた状況の下ではすぐに応用することも難しいというのが本音だ。

第1に、今の僕の仕事の内容的に、ワークショップやセミナーを高頻度で企画しなければならないわけではないからである。より実践的な面での僕自身のニーズはオフィスで行なわれる会議の運営方法にあるが、参加者を広く捉えて何かを決めていくような会議は今の職場ではあまり行なわれておらず、もっと小さい数人で行なう打合せのようなものの方が圧倒的に多い。そうしたニーズにフルに合致するわけではないが、こうしたオフィスで行なわれる会議の運営方法を考えた場合には、本書よりも吉田伸一郎著『会議の技法』(中公新書)の方がより実践的だと思う。先に『会議の技法』の方を読んでしまっていたので、今さら『ファシリテーション革命』を読んでも目新しいと思えるものが正直なかった。

第2に、これも累々ブログで述べ続けていることであるが、今の僕の仕事の内容との比較において、ワークショップやセミナーでのファシリテーション以上に必要なのは1対1でのインタビューにおけるファシリテーションである。本音を引き出す、やる気を引き出す、その人が持っている潜在的な能力を引き出すために、どういう問いかけを相手に対してしていったらいいのかをもっと知りたい。ワークショップやセミナーでのファシリテーションもその応用だと言われるが、本書を読んでも対面である特定個人を対象とした双方向のコミュニケーションのスキルというものへの示唆はあまり見出すことができなかった。カリンポンに持って行った理由も、本書の中に現地での調査で役立つ示唆があるかなと思っていたからであるが、正直あまりなかった。

「答えは参加者ひとりひとりの中にある」という趣旨には賛同するし、そういう答えを引き出すための場の演出が求められるのもその通りだと思う。本書はワークショップやセミナーを企画する際にはかなり役立つだろうと思う。今後そんなタイプのワークショップを企画する機会があれば、応用してみたいノウハウはかなり本書に描かれている。また、今はそういう状況ではないかもしれないが、今後日本に帰って自分の住む町で参加型のまちづくりというのに関わる機会があれば(いや関わっていきたいと思っているのであるが)、主催者の意図を汲み取りワークショップへの参加者としてのあるべき作法というのを予め学んでおくには良い1冊ではないかと思う。
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