SSブログ

『プリンセス・トヨトミ』 [読書日記]

プリンセス・トヨトミ

プリンセス・トヨトミ

  • 作者: 万城目 学
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/02/26
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
このことは誰も知らない。5月末日の木曜日、午後4時のことである。大阪が全停止した。長く閉ざされた扉を開ける“鍵”となったのは、東京から来た会計検査院の3人の調査官と、大阪の商店街に生まれ育った2人の少年少女だった―。前代未聞、驚天動地のエンターテインメント、始動。

以前、フジテレビで放映されていた『鹿男あをによし』の録画CDを家族でずっと観て楽しんでいた時期がある。インド生活では娯楽もそれほどないため、こうしたTV番組の録画はかなり貴重だった。歴史教師・藤原役の綾瀬はるかさんのファンですので、こうして続けて観れるコンテンツはとても嬉しかった(但し、原作では藤原先生は男性ですけど…)。

ShikaOtoko.jpg

そんなこともあって、ドラマを先に観てしまったので、原作を読んでみたいと思い、去年9月に出張で東京に数日戻って来ていた時、書店で『鹿男~』を探そうと試みた。ドラマ放映終了から日も浅かったからなのかどうかわからないが、1冊も見つけることができなかった。あれから1年近くが経過し、万城目学作品も文庫化がそろそろ始まったため、こうなったら『鹿男~』も文庫化を待とうと思う。

話が『鹿男~』中心になってしまったが、そんなわけで『鹿男~』を後回しにして、コミセン図書室で速攻で借りたのが万城目氏の最新作品。発刊が今年2月で、3月あたりの週刊誌の書評欄ではよく紹介されていた1冊である。僕も多少ミーハーでして、話題作ぐらいはチェックしとこうと思い、元々よく読んでいた重松清、奥田英朗、海堂尊作品に加えて、今回初めて万城目学作品に挑戦した。

大坂の街を興した豊臣家の末裔のお姫様を代々守り続ける大阪の男達。明治天皇との「条約」(決して「密約」とは言ってない)で独立国として承認されていたという大阪国。その独立国の総理大臣がお好み焼き屋の店主で、順番で決まる総理大臣職。大阪城の地下に密かに築かれたもう1つの「城」。そして、「プリンセス」の身に何か危険が迫る時、大阪の男全てに情報伝達されて各々が予め有事の際の何らかの役割を与えられているという連絡網―――あり得ない話がリアリティを持って描かれているところが面白い。「京の町に鬼が出る」「鹿がしゃべる」といった、これまで万城目作品で扱われたモチーフを、舞台を大阪に移して「大坂城は落城しても豊臣家は滅亡していなかった」というストーリーに仕立てた著者の手法には感心する。

日本史の知識はあまり必要としないが、登場人物の姓名には歴史上の人物のそれが使われており、その役回りが歴史上での役回りとよく似ているので、ストーリー展開を想像するのには役に立つと思う。最も、歴史の勉強に役に立つからという理屈で子供達に薦めるのはちょっと難しいかなという気がする。それよか、『太閤記』を読めと言いたいし…。

そのうちTVドラマ化されそうな作品でしょう。僕はあまり経験がないが、大阪の下町の風情がよく描かれている。人情味あふれる下町の登場人物には惹かれるものがあり、そういうところが映像として描かれるのはとてもいいことだと思う。そうしたコミュニティがどんどん崩壊していっている今の日本のことを考えると、下町の人情自体が「あり得ない話」になりつつあるような気がするから。

500頁超の大作。ちょっと冗長なところはあるが、作品としての魅力は十分。
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0